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変身ヒーローin異世界  作者: 鯨尚人
29/121

第28話 石化

前回分を5/27の改編前に読まれたかたへ。

リヴィオのショートソードはエステルから借り受けたものです。

「ゴロー!」


 エステルがこちらの様子に気付いたような声が聞こえた。

 俺の身体が、あちこちから染みが広がるように石化していく。魔法耐性が高いようで、進行はゆっくりだ。俺自身の耐性なのか、変身したおかげなのかはわからないが。


 どうする。どうすれば……!?


 このまま石化して、後は皆に託すことになるのか。それっきり、俺は元に戻れないかも知れない。焦燥感に駆られながら、俺はあることを思い付いた。スライムクリスタルを使って身体をゲル状にしたらどうだ? 石化が上書きされて助かるかも知れない。


 俺は固まりつつある手で、まずドラゴンクリスタルをベルトから外した。身体の石になっていない部分も硬く動かしにくくなってきている。目が固まってしまっているためにベルトを見ることはできなかったが、カッコ良く見せたくて、見ないで入れ替える練習をしていたのが役に立ったみたいだ。手探りせずに入れ替えられた。


「あッ」


 だが、ドラゴンクリスタルを落としてしまった。落下して床に転がったであろうクリスタルの音が耳に届く。だが、それは後で拾えばいい。俺はスライムクリスタルを手に出現させた。


「うう……ッ!」


 だが、手の中に現れたそれを上手く掴むことができず、クリスタルは掌を滑り落ちて再び床を転がる音が響いた。


(ま、マズイ……!)


 石化が進み、声も上手く出せなくなった。

 しかも、俺が脚に蹴りを入れたストーンゴーレムが迫ってきた。俺を砕き割るつもりだろうか。


「ゴローっ!」


 そこへ、驚いたことにエステルが飛び出してきた。ディアスの魔法壁の範囲から出て、ストーンゴーレムに有効な攻撃手段も持たないのに、その身を危険に晒して、ストーンゴーレムの攻撃の対象を自分へと入れ替えてくれたのだ。


(うあああ……ああ……!)


 俺は渾身の力を込めてしゃがみ込もうと身体を動かしたが、先程よりずっと動かせなくなってきている。クリスタルを拾うのは無理だ。いや、初めからそこまでは動かせなかっただろうが、それでも足掻くしか他になかった。

 首を動かしたため、視界にベルトが映り込む。ベルトの割れた魔法陣を見ながら、メデューサの石化能力も魔法なのだろうかと考えた。

 ああ……身体の石化が広がっていく……。この魔方陣のように、石化をぶっ壊せたら…………。





――――エステル視点――――


 ゴローは絶対、割らせない!

 ストーンゴーレムは攻撃の際の腕の振りは速くとも、移動が速いわけではない。魔石の付いたストーンゴーレムといえど、後ろ向きで逃げるわたしよりも遅かった。

 だが、ゴローから自分へ注意を逸らすには、その攻撃範囲へと飛び込まなければいけなかった。するとストーンゴーレムはすぐにその大きな腕を振るってくる。わたしは素速く飛び退って、それを回避した。

 一般的に、エルフは人間よりも身軽だ。跳躍力も高い。細身で打たれ弱いけど。

 ストーンゴーレムはそのままわたしに標的を切り替えるかと思っていたけど、ゴローの元へ向かうのをやめなかった。


「止まれっ!」


 再びストーンゴーレムの攻撃の範囲へと身を晒し、失敗した。ストーンゴーレムはわたしが攻撃できる範囲に入ってくるタイミングに合わせて、拳を振るってきたのだ。

 わたしはリヴィオほど素早く判断し行動することはできない。というか、リヴィオほどの者はそうはいないと思う。

 気付くのが僅かに遅かったわたしは、飛び退りながらガードした腕に硬い石の拳を浴びた。腕に激痛が走る。身体が飛ばされて体勢を崩され、お尻からバチャリと水溜りに落ちた。


「い……痛っ……ぁあ……!」


 腕もお尻も痛い。腕はなんとか折れてはいなさそうだ。

 ストーンゴーレムの足音に顔を上げると、ゴローからわたしへと標的が変わっていて、わたしに近付いてきていた。


「うう……っ!」


 それはいいんだけどっ。狙い通りなんだけどっ。

 慌てて起き上がろうとするが、身体を支えていた腕が水で滑って倒れてしまった。もう一度、立ちあがろうと上半身を起こしたところへ、ストーンゴーレムが攻撃範囲にわたしを捉え、巨大な拳を振り被った。





――――主人公視点――――


「エステルーっ!」


 俺は変身するためにベルトの魔法陣を叩くと、覆い被さるようにエステルを抱きしめて、ストーンゴーレムに背を向けた形で盾となった。俺の全身が金色の輝きに包まれる。

 俺の願望が反映されているのならば、変身中はこれくらいの攻撃なら効かないハズだ……!

 ストーンゴーレムの拳だろう、背面付近で当たる音が聴こえたが、痛みはなかった。変身が終わり、ストーンゴーレムを見ると拳を弾かれたようで、蹌踉めいている。その隙を突いて、しゃがんだままヒビの入った片足目掛け、思い切り蹴りを突き出した。片足が砕けたストーンゴーレムは、そのままこちらへと倒れこんでくる。


「うおわっ!」

「きゃっ!?」


 俺はエステルを抱えたまま横にゴロゴロと転がって、間一髪、それを回避した。


「ゴ、ゴロー、どうして!? 石になったんじゃ……」

「ああ、それが、変身解除したら石化も解除できたんだ。ホント、ギリギリだったけどな」


 それから、俺は皆へ大声で注意を促す。


「メデューサは水鏡を使って石化させてくるぞ! 気を付けろ!」

「応ッ!」

「わかったさー!」

「了解だ!」

「ロゴー! 無事だったか!」


 ゴドゥ、トアン、ディアス、リヴィオ。皆、無事のようだ。

 倒れたストーンゴーレムは、やはりまともに動けないようだった。コイツは後回しだ。

 トアンとゴドゥはもう一体のストーンゴーレムと戦っている。リヴィオはその後ろでメデューサと交戦中だ。


「あっ、ゴロー。さっき庇ってくれたとき、出血してたように見えたけど、それは大丈夫なの!?」

「大丈夫だ」


 身体の石化していたところを無理に動かしたため割れてしまい、石化が解けたらあちこちが、特に腕から出血していたのだ。だが、石化はまだ表面だけで済んでいたため、深い傷にはならなかった。正直言うと、かなり痛むのだが。


「これでー……!」

「どうじゃっ!」


 トアンとゴドゥ、ドワーフふたりが息を合わせ、もう一体のストーンゴーレムに左右から同時に飛び掛かった。

 音だけは耳に入っていたので、何度も打ち込んでいたのだろう。ストーンゴーレムの両腕には大きな亀裂が入っていた。そして、今、浴びせられたそのハンマーによって、両方の腕が砕かれた。


「やった……っ!」

「ふんっ……! まだじゃ、気を抜くなよ、トアン」

「わかってるさー!」


 こっちはほぼ決着だ。

 リヴィオのほうはというと、戦況がどちらかに傾いたりはしていなかったが、リヴィオのふとももには3本の長い血の筋ができてしまっていた。メデューサの鋭く長い爪で切り裂かれたのだろう。苦戦しているようだ。

 だけど、もしもリヴィオがメデューサを抑えてくれていなかったら、俺もエステルも、メデューサの操った岩でやられてしまっていたかも知れない。

 俺はリヴィオの元へと急いだ。その途中、ディアスの声が飛ぶ。


「リヴィオ、離れろ!」


 そして、エステルの3本の矢とディアスの何本もの魔法の矢がメデューサの側面へと飛んだ。だが、片腕をそちらに掲げたメデューサによって、そのすべてが逸らされてしまった。


「なっ……! これでもダメだとは……。ならば、メデューサの動きを狂わせるぞ! ゴローは近付くな!」


 ディアスがメデューサの持っていた、身体の動きがおかしくなる魔法の杖を掲げ、その力を発動させた。

 うっ、やはり自分の動かしたい方向と別のほうに身体が動いてしまう。おとなしくしているしかなさそうだ。


 メデューサの動きが少し鈍くなった。効果は出ているようだ。リヴィオは訓練したと言っていたけど、よくあんなに動けるものだ。

 そのリヴィオが、メデューサを射程に捉え、ショートソードを疾走はしらせた。だが、寸前のところで剣が停止してしまう。メデューサの魔石による力だろう。


 メデューサがその長い両腕をリヴィオへと伸ばした。だが、リヴィオは機敏な動きで、捕まる前にその腕の届かない距離まで離脱した。しかし、メデューサの両腕の魔石が輝くと、リヴィオの身体が吹っ飛ばされて、岩石の積み上げられた山に激突した。


「うあぁああっ!」


 悲痛な叫び声が洞窟に木霊こだまして、俺は上手く動かせない身体を藻掻くように前へと進ませ、リヴィオの元へ向かった。


「リヴィオ!」

「ぐ……ぅう……」

「リヴィオ! 大丈夫か!」


 遠くから見えるリヴィオは、額から出血している。血が額から片目へ、そして頬へと流れ落ちるのが見えた。血の量が多い。


「へ、平気だ……! 私より今はメデューサを……!」

「だけど、上手く動かせないこの身体じゃあ……」

「ディアス、何をしてる! 早く、解除を……!」

「そ、そうしたいのだが、杖が言うことを効かん!」

「何……?」

「メデューサさー! アイツが操ってるんだ!」


 トアンの言葉にメデューサを見ると、両腕をディアスのほうに掲げている。そんなこともできるのか。


「ええい……!」


 この状態でもある程度は動くことのできるゴドゥがディアスの元へ向かい、ハンマーで杖を叩き壊した。身体の自由が戻る。


「ディアス、リヴィオに治癒魔法を!」

「あ、ああ」

「私なら平気だ。それよりメデューサを」

「でも、頭の出血が酷いぞ!」

「傷は浅い。出血が多いが、額はこういうものなんだ。本当に平気だ」


 そ、そうなのか。焦ってしまった。

 俺は安堵して大きく息をつくと、メデューサに向き直った。

 胸には静かに怒りが燃えていた。仲間を殺されてたまるか。

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