プロローグ
初投稿です。
よろしくお願いします。
目が覚めると、視界は真っ黒だった。
地面の無い、真っ黒な空間にいた。
目覚める前、俺は車に轢かれた。確かに、車に轢かれた。
ということは、ここは死後の世界なのか?
それを信じてはいないが、これが夢、というわけでもなさそうだ。
いや、待てよ。事故で脳が損傷して、知覚がおかしくなったとか……。
自分の身体が壊れてしまったかも知れないと考え、これからどうなってしまうのかと不安が湧き上がってきそうになったとき、急に目の前にカルボナーラのパスタが現れた。
は? 何これ、なんでカルボナーラが?
真っ暗闇なのに、なぜかはっきりと見えるカルボナーラ。
「いやー、ごめんごめん。カルボナーラ食べてたら、轢いちゃった」
……カルボナーラがしゃべった。
コイツが青信号で渡っていた俺を轢いた犯人らしい。脳が壊れて幻覚を見てるんじゃなければ。
でも本来、カルボナーラは車の運転はできない。それにしゃべれない。
コイツが本体ってわけじゃないだろう。
「一体、これはどういうことだ。俺はどうなったんだ?」
「ふむー。そっか、そうだよね。訳わかんないよね。ここは私が作り出した空間だよ。一時的だけどね。轢いちゃったキミの脳が壊れる前に、ちょっとここに移したんだ」
「移した? 俺は助かるのか?」
「残念ながら、肉体の損傷が激しすぎて助からないねぇ。あ、キミの今のその身体はこの空間でのみ存在しているようにキミが認識してるだけだよ。例えるなら夢の中みたいな。まぁそんなわけでね、お詫び、しようと思って」
男だか女だかもわからない中性的な声が、カルボナーラから発せられている。
スピーカーも付いてないのに。いや、所々にかかってるコショウに見えるやつが、実はスピーカーの穴なんじゃ……。
じっと覗き込んでみる。……っと、ダメだ。助からないと知って、現実逃避してしまった。
話を戻そう。
「お詫びって?」
「ウン。キミのいた世界では無理だけど、私の創った異世界に、キミを復活させてあげるよ。それで、なんでも願いをひとつだけ叶えてあげる」
…………思ったより、悪くないかも。
一浪して入った大学は詰まらないし、好きな子には彼氏ができたし。って、もう戻れないんだけど。
新しい世界に復活できるなら、それもいいかも知れない。
こんな状況だというのに、口元が少し綻びてしまう。
俺にはガキの頃からの夢があるのだ。しかし、俺のいた世界では決して叶わないであろう願いが。
「本当に、なんでも叶えてくれるのか。オマ……あなたは、神か?」
神に車で轢かれたのだろうか。
「神じゃないよ。キミのいた世界では大したことはできないしね。でも、私の世界でなら大体の願望は反映できると思うよ。どうする? このまま死ぬか、私の作った世界に復活するか」
「復活する!」
俺は、カルボナーラに声を張り上げた。