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オトギ生活 〜オッサンだけど異世界《トンデモナイトコロ》に来てしまった。どうしよう〜  作者: 風炉の丘
雄斗次郎の長い一日 第1章 オンボロ屋敷と薄幸母娘
7/126

1-6 ライフライン

これはヒドイ。全く話が進んでない。

一体いつになったら管理人さんの朝食にありつけるんだっ(^^;

でも「オトギワルドにおける日常生活」すなわち「オトギ生活」を描写するために、いずれも必要な事ばかりですので、我慢して読んでいただけますと幸いであります。

m(__)m

 席に着いた私は、朝食の準備をする管理人さんの背中を追いながら、何気なく台所を見回す。

 そこは規模で判断するなら、厨房と呼ぶべきかもしれない。

 今こそ下宿人は私一人だが、ボルゴ屋敷には間借りできる部屋が十室ある。つまり、いざという時は一度に十人以上の胃袋を満たす必要があるため、台所の規模も大きいのだ。

 かまどやオーブンも複数あり、食器類も様々な料理に対応できるよう、棚に数多く収納されている。

 今、食卓として使っているテーブルも、普段は下ごしらえなどの作業台として使われるものだ。


 しかし、元いた世界ガングワルドの便利な生活に慣れていると、奇妙に映る物がいくつかある。

 第一に、台所でありながら、冷蔵庫が無い。

 第二に、壁際に山積みに並べられた薪と炭の袋の数々。

 第三に、かまどの側に鎮座まします大きな水瓶の存在感。

 そう。ボルゴ屋敷には、電気もガスも水道も無いのだ。


 一応、水道に関しては、ローマ水道的なものがある。近くの湖から汲み上げ、ろ過して不純物を取り除き、都市中に供給しているのだ。ただし、各家庭にまで行き渡らせるには人力に頼らざる負えない。バケツを持って屋敷と水汲み場を往復しなければ、台所の大きな水瓶が一杯に満たされる事は無いだろう。


 水道、ガス、電気と言った、いわゆるライフラインのインフラ施設の普及が遅れているのには、野薔薇ノ王国が文明的に遅れているから……と言うわけでは決してない。政府は、設置とメンテナンスに莫大な予算を裂くことに意義を見いだせなかったのだ。何しろ野薔薇ノ王国では、インフラの代わりに魔法が普及しているのだから。

 そこで一つ疑問を覚える。国民には魔法が使えない人だっているのではないか? その人達は泣き寝入りなのか?


 実際、今もなお多くの魔法は敷居が高く、限られた者にしか扱えない。しかしここ数年で、状況は大きく変化しつつある。

 複雑な術式や呪文を理解できなくても発動できるパッケージ化と、魔力が少なくても発動させられるコストパフォーマンス強化が、王宮魔道士達の研究開発によって大きく発展し、多くの商品が生み出されたからだ。

 その一つが魔法具の数々。太古の時代に造られるも、製造技術が失われたマジックアイテムの再現で、ボタン一つ押すだけで魔法が発動したり、常に効果が持続しているパッシブタイプなどがある。ただ、考古学的価値のついた古の魔法具に比べれば破格の安さだが、それでも一般人が手を出すにはあまりにも高額であり、私の稼ぎではとても手が出せない。


 私達に馴染み深いのは『唱えっきり魔法陣』だろう。使い切りの魔法紙で、マナの消費がほとんど無いため、紙に書かれた呪文さえ唱えれば誰にでも使える。字が読めなくても、呪文を暗記していれば問題無い。しかも、とても安いので懐も痛まないのが本当にありがたい。王国政府はこの『唱えっきり魔法陣』の安定供給を国策とし、さらに国民には安価で行き渡るよう補助している。

 ダンジョンに潜ったりモンスターと命のやりとりをする冒険者には物足りないだろうが、日常生活を営むだけ…例えば、ちょっとした筋力強化、擦り傷切り傷の治療程度であれば、効果は十分すぎるくらいだ。薪に火を付ける着火の魔法、夜更かしのお伴に照明の魔法など、補助系魔法紙には様々なバリエーションがあるので、私も愛用させてもらっている。

 数々の効果の中で何より重要なのが、体力と免疫力を取り戻す回復の魔法紙だった。


「ケホンッ」


 リナリアちゃんが……嫌な咳をした。

 私は可愛い女神ちゃんの可愛いおでこに手を当ててみる。特に熱は無いようだけど、大丈夫かな。


「だいじょぶだよぉ♪ オトジくんはしんぱいしょうだねぇ♪」


 リナリアちゃんは変わらぬ笑顔で応える。確かに元気そうではあるが、やはり心配だ…。

 彼女は3歳の頃、重い病気にかかった。管理人さんの懸命な看護のおかげで回復に向かったものの、それ以来、病弱美少女になってしまった。風邪一つが命取りになりかねないのだ。

 しかし、野薔薇ノ王国では医者には頼れない。お金の問題ではなく、言葉の意味が違うのだ。魔法で回復出来ないよう、人体を効率的に壊して命を奪う職業。それがこの世界の医者なのだから。

 風邪薬はあるにはあるが、リナリアちゃんの場合はあまりあてにはならない。薬が効いたところで体力が保たなければそれまでだし、そもそも本当の意味で風邪に効く薬なんて、オトギワルドはもちろん、ガングワルドにだって存在しない。


 リナリアちゃんが病に伏せった時、私達が出来る事はひとつしかない。回復効果がある魔法紙を使って、体力と免疫力を回復させつつ、事態をただ見守るのみ…。 

 だから『唱えっきり魔法陣』の安価な供給は、リナリアちゃんにとっての正に命綱。電気やガスや水道などには替えられない、大切な大切な、ライフラインなのだ。

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