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華琳さんの祭り箱  作者: 黒崎黒子
3/5

北郷一刀のセキュリティは無敵

お待たせ致しました。

本職の方が、ゴタゴタして、なかなか追筆できないのが、口惜しい限りの黒子です。


ただ今、エブリスタでも、小説を書いてます。


そちらも、暇つぶしにご覧下さい。


そこそこ、いいダシが、出てると思います。


感想、お待ちしてます。


黒崎黒子



追筆中紹介


・「華琳さんの重箱」

我らがおなじみ華琳さん!

次話、捻出中。


・「HEVEN!」

華琳さん家から、波状した世界。

実はちょっと、話に出てきた

“サタンちゃん”のラブコメディ。


・「私は明日を壊します。」

これは、高校のラブコメディを

書きたかったヤツ。

なのに、なんで、こうなった!?

な、ヤツ。




北郷一刀の隣には、いつも曹操がいる。

もし、彼の為に彼女が武器を手にすることがあるならば、鉄壁にして、無欠にして、無敗の守護神が誕生することだろう。


まさに、セキュリティ会社も顔負けの、鉄壁の護りである。


しかし、王が家臣の為に、武器を抜くことはない。

それは、今までも、そして、これからもないだろう。


家臣の為に、王自ら動くなど、愚の骨頂。

家臣のために、王が討たれるなど、あってはならないのだから。


北郷一刀がまさに、王の目の前で、身の危険に晒されれば、己の身を守り、退避することが、一番の良策と言えるだろう。


家臣と王の関係ならば、当然の話。


そう、家臣と王の関係ならば、だ。


しかしながら、一刀と華琳の関係は違う。


曹操にとって、一刀は激戦を共に乗り越えた家臣であり、三国の絆を確固たるものしてくれた平和の象徴であり、何より、世界で一番の心の拠り所である最愛の夫である。


それゆえ、彼女が、家臣の為に武器を振るうことはなくとも、夫の為に武器を取ることは、有り得る話なのだ。


それ故に、三国同盟が制定されて幾星霜、未だに、その象徴である北郷一刀の首は、誰の手にも渡ってはいない。


皆、側にいる曹操の威圧感に恐れ戦き、手を出せずにいるのだ。


そんな彼女が、一刀の隣から離れようものなら、一瞬で彼の周りには刺客が集まってくるはずである。


では、曹操の目が届かない時、いったい、誰が彼を護っているのか。


今回はそんな、北郷一刀を取り巻くセキュリティの話をしていこう。


三国の平和の象徴、北郷一刀様。

優しく聡明で、皆の憧れで、ちょっと、おっちょこちょいなあの方の命を狙う者は、多い。


私も、あの方に憧れる一人ですから!

だからこそ、『私』がお護りするのですっ!!!


―――。


「ん?誰かの声がしたような?」


ドサ!


「グハッ!?」


「ん?うぉ!?え?ええぇ!?人?誰、この人!?」


華琳が急用で、軍師たちに呼ばれたので、俺は暇を持て余し、中庭に出た。


瞬間、突如、目の前に人が降ってくる。

慌てて、落ちてきた人に駆け寄ると、体を揺さぶり反応をみた。


「お、おーい、大丈夫ですかー?」


「⋯⋯。」


返事がない。ただの屍のようだ⋯。


「いやいや、おかしいだろ!?なんで、華琳が政務でいなくなったとたん、良くも分からない奴が振ってくるんだ!?しかも、事切れてるんだけど!!」


俺は堪らず、叫びを上げると、衛生兵を呼ぼうと周りを見渡す。


が、無人ですか。そうですか。


「えっと、これ、どうしよう。このままじゃ、俺が疑われないか!?」


不殺をモットーの北郷さん。これは、ヤバイ!


「ふおぉー⋯!?ど、どうすれば!って⋯ん?」


オロオロとしていると、何やら、上の方で気配が。

気配を探り、中庭から見えづらい屋根の死角を凝視する。

飛び道具でも来るのかと、身構えつつ、腰に帯刀していた姉妹剣を握りしめた。


カタ⋯ガタガタ⋯ドサ!


「⋯っと!」


何やら大きな物が、屋根を転がる音が聞こえ、再び、何かが振ってくる。


俺はそれを避けると、落ちてきた物に目を向けた。


「⋯え?またなの!?誰なの、あんたら!?」


見ると、先ほど降ってき来た不審者遺体の上に折り重なるように、再び、遺体が降ってきていた。


あれ?天気予報、外れたの?

晴れ時々⋯ご遺体だったっけ?


「えー!?ていうか、増えたし!二人もヤッたと思われたら、確実に牢屋いきだろ!?うわぁー!?どうする?どうするべきなの ?」


「⋯えっと、とりあえず、落ち着いてください、一刀様。」


再び、理由の分からない事態に、オロオロとしていると、スタリと遺体の側に、屋根から少女が軽やかに舞い降りた。


「え?あ⋯、み、明命!?」


「はい!」


ニコリと微笑み、明命はパチリと手を合わせると、俺の前に音も無く立つ。


知ってのとおり、明命は我国でいう、隠密さん。

忍びという感じのスタンスで、その見た目も然ることながら、実力も呉の王女を護る思春に引けを取らないものである。


姓を周泰。字は幼平。


呉の武将の一人で、潜入など工作活動の達人。

武器は日本刀のような長刀「魂切こんせつ」を使う。


「おぉー!よく、ご存知ですね!一刀様!」


「可愛い子は、全てチェックを入れてるからね。将来、お嫁さんにしたい子の全ては、知っていて当然だろ?」


ニコリと微笑むと、明命の頭を撫でる。


「あぅあぅ!私のような者でも、その中に加えて頂いてるんですか!?」


明命は照れたように頬に手を当てると、ほにゃっと、笑う。


うん。確定だ。今ので、確定した。

君は絶対、俺が戴くからな。


俺は心の中で、ぐっと拳を握ると、未来への自分に誓いを立てるのだった。


「あぅあぅ⋯!?ついでに、そ、ソレも勃ってますっ⋯!」


「あ⋯あはは!ごめんなさーい!」


息子も勃った。気が早すぎるよ!


「そ、そんなことより、明命?これは、何事?」


後ろでお亡くなりになっているお二人を見て、俺は冷や汗を流す。


「あぁ、それは刺客です。三国に敵対する国から、送られた者達だと思います⋯。」


冷めた目で亡骸を見ると、明命は兵を呼んで、刺客を何処かへ連れていってしまった。


「やっぱり、あれ、死んでんだよな⋯」


「ご安心を。峰打ちなのですっ。」


「え?そ、そうなの?よかった⋯。」


「一刀様は、不殺を信条にされているんですか?」


「はは⋯。甘いと、よく言われるし、実際、自分でもそう思うよ。でも、人の死ぬ瞬間は、戦でどれだけ見ても、慣れないもんだし、やっぱり気持ちいいものじゃないからね。」


「⋯正直、甘いとは、私も思います。不殺は難しいのですっ。力加減もさることながら、急所も狙えない。どんなに追い詰めても、相手が諦めなければ、いくらでも、こちらが窮地に立たされる状況になる恐れもありますから。」


そう。武人なら、当然の考えだ。

命のやり取りを互いにしているのだ、相手も守るものの為に必死になっている。


こちらが、優しさや情を見せれば、それだけで、相手の隙になる。

不殺の意思は、相手にとって、最大の隙に他ならないのだから。


「それなら、より一層、相手を追い込むように、頑張るだけだな。より強く、よりしなやかに、より精錬して、己の武と心を鍛え、相手を圧倒する。春蘭じゃないけど、日々の努力で、己の信条を突き通すだけだ。」


俺は明命の目を真っ直ぐに見つめると、強くそう言い切り、腰の姉妹剣を抜いて、一振りする。


「⋯一刀様は十分に、お強いのですっ。甘いとは、申しましたが、私はきっと、その信条は突き通せると、信じています。」


明命は、にこりと微笑むと、俺の手にある姉妹剣を撫でて、強く頷いた。


「そういえば、よく、刺客の場所が分かったね?いつもは城門上で、偵察任務してたでしょ?」


明命は偵察が主な任務だ。その類希なる視力から、遠方を見ることに長けている。城門から、遥か遠方を見て、城への不審者の侵入を防いでくれているのだ。


「あ、そうでした!まだ、一刀様に伝えていませんでしたね!」


「え?なんの話?」


俺の言葉に、明命は驚くと急に膝を折り、臣下の礼を取る。


「一刀様。御身は最早、三国の平和には欠かせない存在なのですっ!三国の平穏のため、一刀様、どうか、御身の護衛を私にお任せください!」


「ご、護衛なんて、大袈裟な。俺を狙う物好きなんて⋯」


そこまで言うと、明命は無言で屋根の上を指差した。


「いましたよ?二人ほど。先程、倒した二人は、一刀様が一人になるのを、物陰から覗いていたのです。」


えー⋯っ。はい。居ましたね、確かに。


「だ、大丈夫だよ!俺、強いでしょ?」


再び、明命は屋根の上を指差すと、ニコリと笑う。


「毒がたっぷり塗られた弓を、二人共、限界まで引き絞っていましたよ?放たれる寸前で、片しておきました。」


おー⋯。そうですね。はい。気付いてませんでした。


「お分かり頂けましたか?」


「⋯⋯は、はい。よろしくお願いしています。」


「はい!お任せくださいっ!」


俺の返事に、明命はにっこりと頷くと、それでは!と、どこかに身を隠してしまった。


恐らく、護衛の人間が近くで、ウロウロしていると、気が散るとか、そんな感じで、気を使ってくれてるのでしょう⋯。


だが、しかし⋯!!


「やばいな、これは⋯。」


俺は1人、頭を抱える。


ちなみに、護衛って、何時から何時までのシフトですか?

ていうか、四六時中、見られることになるんですか?


いやー。それは正直、困ります。


プライベート云々もあるけどさ、なーにーよーりー?


俺にはコレだけは譲れない理由があるんだ!!


女の子に護られて、もしものことがあったら、どうする!?


これだけの力を手にした意味が無くなるだろうがー!!


てなわけで⋯予想される仕掛け人の元へ!


いざ、参らん!


「頼もう!!!」


バーン!!と、けたたましくドアを開け放つ!


「ビクッ!?」


「こらぁ!孫策伯符は、いねぇがぁー!!」


「か、一刀!?急に入ってくると、びっくりするわよ?」


呉の政務室に飛び込むと、書簡を片手に、呉の次期王の蓮華と冥琳と穏、亞紗が政務に励んでいた。


「蓮華!冥琳!穏!亞紗!今すぐ、孫策伯符の居場所を教えなさい!」


「どうしたんですかー?一刀さん?なにか、あったんですか?」


俺の様子に、何やらとんでもないことが、起きたのだと、呉の皆は身構える。


「明命の護衛の件だけど、どういう経緯でそうなったのかを、聞きたいんだ。」


「明命の護衛?なんだ、それは?そんな、報告は来てないぞ?」


「ん?そうなの?」


冥琳は首を傾げると、皆を見るが、皆も知らないようで、首を捻る。


「明命は今⋯、あぁ、そうか。引き継ぎの為に、隠密部隊の総指揮を任されていましたね。報告書が確かここに⋯」


亞紗が書簡の一枚を取ると、サッと目を通して、皆に見せる。


「なるほど、隠密部隊の引き継ぎは完了していたのか。だったら、明命は今、手に何もない状態ってことになるんだな?」


俺も書簡に目を通すと、大体の状況を察する。


でも変だな?だとすれば、明命はなぜ、俺の護衛についているんだ?


呉の首脳たちが、誰も知らないとなると、本人に聞くしかないか?


今もどこかにいるだろうけど⋯。


気配を探ると、近くに微かな明命の気を感じる。

さすが、隠密。気まで調整できるのか。凄いな。


「一刀?姉さんなら、何か知ってるかもしれないわよ?」


「そうだった。元凶を探さなきゃいけないな。」


パチン!


俺は頷くと、久々に指を鳴らす。


ゴオオオオォォォ⋯!!


ノリのいいあの子が、久々の登場!


北郷専用武器箱『大蛇』


十字のフォルム、相変わらずの美しさだぜ☆


所々に防具を引っ掛けて、持って来てくれてるし。


その優しさ、愛おしいよ、ハニー!


“カチン!”


手早く防具を着用すると、大蛇を担いで、呉の皆に振り返る。


「ほ、北郷?今から、戦場に行くのか?」


『いや?自由気ままにやりたい放題の“虎”を退治しにいくだけだよ。』


「そ、そうか。それなら、仕方ないのか?その、漆黒の鎧は。」


冥琳は深く、ため息を吐くと、窓の外を指さした。


「おそらく、アイツは城外にある小川で釣りをしている。酒を飲みながら、サボっていることだろう。話が終わったら、ついでにここに連れて来てくれないか?」


『了解。ペットの捕獲、承りました。』


俺は頷くと、部屋を後にする。


「姉さん、一刀を怒らせるなんて⋯。死んだわね。惜しい人を亡くしたわ。」


「本当に。さぁ、蓮華様、続きをしましょう。」


窓の外を砂埃を上げながら、猛進していく黒騎士をながめながら、呉の面々は深くため息を吐いた。


程なくして、城外にある小川に到着。

ここは、優数の釣り場で有名な場所だ。

ここなら、いるだろう。


「んー、釣れない⋯。なんでよー。私の餌が食べられないっていうのー?魚どもー!」


あー、いたいた。


相変わらず、魚に逃げられまくってるな。

知らずに、殺気を出しまくってるからだよ。


俺は苦笑すると、ゆっくりと、その無防備な背中に近付き⋯


無言で、ハンマー性能高の大蛇を振り下ろした。


ガキイィーン⋯!


岩に弾かれた太刀が、澄んだ小気味よい音を響かせる。


『外したか⋯』


「ちょ!?危ないわね!?誰よ!って、一刀!?」


危険を感じて、咄嗟に飛んだのか、少し離れた岩場に着地した孫策伯符が、俺を見る。


『腕は訛っていないようだね、孫策伯符』


「え?ちょっと?なに?急にどうしたのよ。ていうか、なんで、真名じゃないわけ?怖いんだけど?」


訳が分からないのか、雪蓮はオロオロと、ただ狼狽えるばかりだった。


『時間がないからな。手短に説明する。』


「う、うん⋯。」


『お前は俺を怒らせた。よって、極刑に処す。以上!』


「ちょっ!?え?待っ、ええぇー!!?説明になってないわよ!?」


叫ぶ雪蓮を無視して、そのまま、俺は武器を振り上げる。


「ちょっと!洒落になってないわよ!あなた、自分が三国最強なの、忘れてない!?数刻前に言ってた、不殺の信条はどこいったのよ!普通に死ぬわよ、それ!」


『そんなものは知らん!』


構わず武器を振り下ろす。


「知らんことないでしょー!?昔からずっと、言ってることじゃないのよー!」


有無も言わせず、再び、武器は岩場に叩きつけられた。


『避けるな、雪蓮!』


「あ、真名で呼んでくれたー♡一刀、好きー♡愛してるわよー♡」


ヒラヒラと、俺の攻撃を躱しながら、雪蓮はふざけた事をぬかす。


『やっぱり、素直には倒されてくれないか。はぁ⋯。仕方ない、餓龍!』


黒刀の磨かれた日本刀を抜いて、雪蓮に向けて構える。


「うわー。本気だこれ。でも、これって、好機?なんか、知らないけど、本気で闘っていいのよね?これって、いつかの再戦じゃない!いやーん!願ったり叶ったりー!」


雪蓮も自身の太刀、南海覇王を抜くと、嬉々とした表情で駆け出した。


それからしばらく、我を忘れて互いに切り結んでいたが、武器の違和感を感じて、互いに点検をすることで、休戦となった。


「ふふ⋯どう?私、少しは強くなったかなぁ?」


「はは!雪蓮は十分、強いよ。ここまで、接戦したのも久しぶりだ。」


「ふふん!師匠がいいからね!なんたって、私の旦那様だもん?」


雪蓮はくたりと、背中に身を預けると、そのまま振り返り俺の背中に抱きついて来る。


「ねーねー。」


「ん?」


「一刀ぉ、ちゅーしよ?」


そのまま、首に手を回すと、後ろからのぞき込むように、頬に擦り寄る。


「どうした?いつになく、積極的じゃないか。」


「もー、一刀が激しくするからよ?火照っちゃった、私の身体。慰めてくれる?」


「はは。そりゃ、魅力的な話だけど、今は無理かなー?」


「えー?なんで?」


「明命がいるからね。」


「明命?大丈夫よ。城門からじゃ、この場所は見えないわよ?」


スリスリと擦り寄ると、フワリと雪蓮の女の子らしい香りが鼻腔をくすぐる。

久々に、雪蓮の女の子らしい仕草に、ドキリとする。

そういうば、雪蓮と話すのも、久しぶりだな。


って、あれ?


「ん?待てよ?城門?茂みじゃなくて?」


「え?そうよ?明命なら、城門の上で偵察任務してるはずでしょ?」


「あぁ⋯。ということは、雪蓮じゃなかったのか?」


「ん?なにが?」


「いや、明命がさ、カクカク云々で⋯」


俺はことの次第を掻い摘んで説明する。

すると、話を聞いた雪蓮の開口一番のセリフは⋯


「ひどーい。なんで、私になるわけ?」


となるわけだ。


「日頃の行いだな、行い。」


俺は笑うと、ムクレた雪蓮の頬をつついて、宥めるように頭を撫でた。


「ぶー。とんだ、とばっちりよ。まぁ、久々に一刀と遊べたからいいけどねー。」


「はは、ごめんな。雪蓮。⋯と、なると、他には誰がいるんだ?」


「私じゃないとなれば、考えられるのは、三国の王である華琳くらいなもんだけど。でも、それは、ないわね。呉の兵を勝手に動かすなんて、華琳の性格が許さないわ。一度、こっちにお伺いがあるはずよ?」


「たしかに。」


「同じように、母さんたちでも、ないと思うわ?やっぱり、あの人たちでも、聞いてくるでしょ。」


一瞬、浮かんだ可能性も、心を呼んでくれたのか、すぐに答えを示してくれる。


「それじゃあ、残るは⋯?」


「んー。祭も違うでしょうし、思春や、小蓮も違うとなるとー?」


ニコリと笑うと、雪蓮はギュッと抱きついて来る。

名残惜しむように、ゆっくりと離れると、雪蓮は茂みに向かって、振り返った。

どうやら、此度の騒動の犯人に、雪蓮は見当がついたようだ。


「簡単な答えよ。⋯ねぇ?“明命”?」


「え?それじゃあ⋯!?」


雪蓮は茂みをかき分けると、この中から、女の子を引っ張り出してくる。


「あ、あ、あぅあぅ⋯///」


雪蓮に首根っこを捕まれ、白昼の元に晒された犯人は、真っ赤になると、顔を隠して、俯いてしまった。


「つまり、犯人はこの子自身ということよ。」


「み、明命が、自分の意思で俺の護衛についたってことか?でも、なんで?」


「それは、本人から聞いて欲しいわねー。」


雪蓮はニコリと微笑むと、釣り道具を担ぐ。


「え?ちょっと、雪蓮さん?」


「ここに私が居たら、その子も萎縮して話せないでしょ?それに、冥琳も首を長くして待ってるだろうし。埋め合わせは、また、後日にでもね♡」


雪蓮はヒラヒラ手を振ると、森を出てしまった。


残された俺と明命はしばらく無言で過ごす。


明命を見ると、もじもじと、頬を赤らめながら、こちらの様子を伺っていた。


「あぅあぅ⋯」


「一体全体、なにがなにやら⋯」


俺は苦笑すると、鎧を脱いで、武器箱に被せていく。


その間、明命は俺の後ろに立ち、静かに待っていた。


まるで、忠犬だな。


「明命。こっち、おいで。」


「は、はい。」


先ほど、雪蓮が座っていた岩に腰を下ろすと、隣りに明命を呼ぶ。


岩はそれほど大きくないため、2人で座れば、自ずとくっつく形なるが、そこは気にしないでおこう。


「か、一刀様は、私が護衛の任につくことに、

不安がお有りですか?」


「うーん。いや、不安はないんだけどね。」


「それでは、なぜ、色んな方に、理由を聞いて回っているのですか?私が側にいることは、ご迷惑にしかなりませんか?」


明命は俺の服を、その小さな手で掴むと、俺を見上げる。

その瞳は少し、潤んでおり、拒絶されることへの恐れが見え隠れしていた。


そんな目で見ないでくれよぉー。

つい、了承してしまうじゃないか。


俺は深く息を吐くと、明命の肩を抱き寄せ、その耳元に語りかける。


「いいかい?1回しか、言わないから、よく聞いてくれよ?」


「え?え?は、はい⋯。」


急に抱き寄せられ、意表を突かれたのか、目を白黒とさせながら、明命は見上げてくる。


本当に小さい身体だな。これで、一武将と肩を並べる実力を持っているのだから、驚くよ。


当然、彼女の実力に不服や不満なんて、あるわけない。

護衛としては、頼もしい限りだ。


でも、今回、問題としているのは、そこではなかった。


もっと、根本的で個人的な問題さ。


「俺は、人が傷付く姿が大嫌いだ。不殺の信条も、そこから来てるんだけど、それは、分かるね?」


「は、はい⋯。」


「それよりもっと、俺は嫌いなことがあるんだ。何か分かる?」


「⋯お命を狙われることではないんですか?」


明命は可愛らしく小首を傾げて、俺を見上げる。

はぁ、いい子だな、やっぱり。


「はは!確かにね!それも、迷惑な話だ。でも、そんなことは、どうでもいいよ。命を狙うものがいるなら、俺は全身全霊をもって、叩き伏せる。それが、人であろうが、鬼であろうが、神であろうが、俺は相手を追い込み、不殺で、降伏させてみせるさ。」


カラカラと俺は、笑うと明命の瞳を見つめ、微笑む。


「本当に、俺が怖いのは、命が狙われることでも、人が死ぬことでもない。“護ってくれる者”が命を落とすことだ。護衛となれば、要人の近くで対処することも、あるだろう。そうなれば、なにが、起こるかわからない。目の前で、俺の手の届くところで、君に命を落とされることが怖い。そうなれば、俺はきっと、平静を保っては、いられないだろう。」


そこまでつぶやくと、明命を強く抱きしめた。


想いが伝わるように。自身の身も大切にして欲しいと、訴えるように。


「か、一刀様⋯?」


「君が凶刃に倒れた時、俺の不殺の信条もきっと、いとも簡単に壊れてしまうだろう。怒りに飲み込まれ、俺はきっと、敵を殺し、己の信念も殺すことになる。」


「⋯⋯。」


明命は頷くと、言の葉を零すこともなく、静かに抱きしめ返してくる。


互いに強く抱き合うと、俺たちは大きく息を吐き、見つめあった。


「分かってくれるかい?」


「⋯はい。」


最後にスーッと、息を吸い、明命は小さく頷くと、その身を離して少し寂しげに微笑みを浮かべる。


「護衛をするつもりが、逆に一刀様を、追い詰めていたとは、隠密の名折れですね。これでは、一刀様を護るなんて、夢のまた夢です。あはは⋯修行が足りませんでしたね⋯。」


ぽりぽりと、頬を掻くと明命は立ち上がり、音もなく岩を飛び降り、小川へ飛び込む。


小さいながらも、水しぶきが上がり、明命の服が濡れる。

それでも、構わず、明命はパシャパシャと、その細い足で、水を蹴っては、水遊びに興じ始める。


「ふふ⋯。自分の力不足を、久しぶりに、感じました⋯。」


「⋯⋯。」


傍から見ていると、何をしているか、分からないだろうが、目の前にいた俺だけは気付いていた。


「ふふ⋯。う、うぅ⋯。ひっく⋯ぐす⋯。」


彼女は泣いていた。必死に笑顔を見せながら、しかし、その目からとめどなく、涙が流れる。

それを、隠すように、自身ではね上げた水を被り続けていた。


「ひっく⋯う、うぅ⋯。一刀様ぁ⋯。お力に⋯ひっく⋯。なれずっ⋯うぅ⋯申し訳ございません⋯ひっく⋯!」


「⋯⋯。」


俺は、静かに、真っ直ぐに明命を見つめ、微笑みを浮かべる。

あぁ⋯。本当に、この子は強い子だな。

そう感じ、俺は静かに頷く。


「ぐす⋯。っ、はぁー⋯」


しばらく、水を浴びていた明命だったが、落ち着きを取り戻すと、バシャンと、身を投げ出して小川に倒れ込んだ。


「明命?」


「一刀様。包み隠さず、誤魔化さず、真っ直ぐに話して頂き、本当にありがとうございます。一刀様のお気持ち、しかと、受け取りました。本当に残念ですけど、一刀様の護衛は諦めるのですっ。」


「そっか⋯」


俺も、川に飛び込むと、倒れたままの明命に手を伸ばす。


「あはは⋯。本当に、真面目だな、明命は。」


「あぅあぅ⋯」


明命は照れたように、頬を染めると、俺の手を取り立ち上がる。


「でも、そういうところ、大好きだ。」


「あぅ⋯」


更に顔を赤らめると、明命は強く、強く手を握って俺を見上げる。


僅かに上気した肌と、その綺麗で長い黒髪に雫が滴り、ほんのりと女の色香が漂う姿に、思わずコチラまで顔が熱くなるのを感じた。


四六時中、こんな可愛い子が、側にいてくれたかもしれないのだ。

少し、勿体ないことをしたかもしれないな。


俺は苦笑すると、明命の背中と脚に手を回し、抱き抱える。


「か、一刀様!?」


「お姫様抱っこだよ、明命。」


「あぅあぅ!こ、これは、なんだか、恥ずかしいですっ!」


「危ないから、そのままね?首に手を回してくれると、安定するんだけど。」


「は、はぃ⋯。」


抵抗は無意味と悟ったのか、明命は素直に首に抱きつくと、俺を見る。


おぉ。明命の可愛い顔がすぐ側にあるじゃないか。


俺は不安にさせないように、にっこりと微笑むと、小川をゆっくりと渡りきり、陸に上がる。


「さぁ、帰って服を乾かさないとな。風邪引いちゃうかもしれない。」


「す、すみません、一刀様。」


明命は腕の中で、少ししゅんと落ち込む。


「はは!また、来よう。次は、デートにでも、さ。」


「“でぇと”⋯。前に聞いたことがあります。えっと⋯。」


「逢瀬さ。」


「お、逢瀬ですか⋯!?

?」


「うん!明命と、もっと話したいんだ。気が向いたら、いつでも、誘ってくれよ?待ってるからさ。」


「わ、私はいつでも、大丈夫です!一刀様が望まれるなら、いつだって、飛んで参ります!」


「そりゃ、嬉しいな。ありがとう。」


俺たちは、そのまま、ゆっくりと話をしながら、城近くまで並んで歩いていった。


「それじゃ、明命。またね。」


「は、はい!また!」


最後は名残惜しげに、繋いだ手を離すと、照れた笑みを浮かべ、それぞれの部屋へと戻る。


―――


「はぁ⋯。」


とぼとぼと、自分の部屋に向かって歩く私の口から出るのは、ため息ばかりだった。


未だに、一刀様の優しい声と笑顔が、頭の中をぐるぐると、回っている。大きな手、その温もりと、柔らかい香り。


その全てが、男性というものを知らない私には、なんだかとても、刺激が強すぎるように感じる。


それでも、また、触れたいと、思ってしまうのは、おかしい事なのだろうか。


「はぁ⋯。」


「そう、何度もため息をついていると、幸せが逃げるわよ?」


何度目か分からない、ため息を吐くと、突如、後ろからかけられた声に、意識を引き戻される。


見ると、そこには、三国の王にして、魏の王様が不思議そうに首を傾げて、立っていた。


「あ、曹操様!」


「どうしたというの?そんなに、ため息を吐いて。何か、悩みがあるのかしら?」


曹操様は、眉を寄せると、心配そうに顔をのぞき込んでくる。


「い、いえ!少し考え事をしていただけですから!」


「考え事ね?一刀のことかしら⋯?」


「え⋯?は、はい。」


顔に書いてあったのだろうか?

私はぺたぺたと、自分の顔に触れると、小さく頷く。


「護衛を申し出たのですが、丁重に断られてしまいました。」


「ふふ⋯。彼は護衛を嫌がっているものね。私も昔、断わられた口よ。」


曹操様は小さく笑うと、困った人よねと、呟いた。


「彼は自分が、どれだけこの国、この世界にとって重要な人物か分かってないのよね。」


「はぃ。でも、あの方が、それ以上に大事な物があるのも、分かったのです⋯。」


「彼にとって、民や兵士、将など関係なく、この世界に生きる私たち一人ひとりが彼にとっては宝、なのだそうよ。」


「一人ひとりが宝⋯。」


曹操様は小さく微笑むと、目を閉じて、今は部屋で休んでいるだろう彼を想う。


「⋯でも、周泰?それって、私たちも同じでしょ?」


「⋯⋯あっ。」


目を開けた曹操様は、私の顔をのぞき込み、首を傾げる。

そう言われ、私自身もハタと気付いた。


そうだ。私たちも、同じ思いで彼を見ていた。

同じように、私たちもまた、彼が宝なのだ。


ぽかぽかと、お日様のように温かい人。

一緒にいて、気持ちの良い人。

誰とも分け隔てなく降り注ぐあの方の優しさに、自然と人は引き寄せられるのだ。


私もきっと、その一人なのだ。


だからこそ、私は護衛に名乗りを上げたはずだった⋯のに⋯。


「彼が想うように、逆に皆も同じ気持ちだと思うわよ。きっと、この三国同盟の皆が、彼を大切に思っているわ。」


「はい。私にとっても、一刀様はとても、大切な方なのですっ。」


思い返せば、一刀様の周りには、多くの人が集まっていた。

私はいつも、傍からそれを眺めていたが、彼の周りには、いつも笑顔があったのだ。


「ふふ⋯。護衛を断れただけなら、いいじゃない。」


「え?でも⋯」


「周泰?あなた、一つ、勘違いをしてるわよ?」


「勘違い、ですか?」


「勘違いというより、無意識なのかしら。あなたは一刀に護衛を申し込んだ。でも、おかしいとは、思わない?一刀の周りには、私も含めて、多くの将が出入りしているのよ?刺客もバカじゃないわ。そんな人間は、暗殺者の対象には選ばないものよ。」


「あ⋯。」


「それに、北郷一刀は三国最強の武を今では、持っているわ。むしろ、側に居ては、こちらが邪魔をしかねないわよ、ふふ。」


曹操は小さく笑うと、首を竦める。

たしかに、一刀様はお強い。

それは、私も十二分に知っている。

私も修行を受けた一人なのだから。


「つまり、周泰?あなたが、一刀の近くに来たのは、身を護る以外に、別の理由があるんじゃないかしら?」


たしかに、そうだ。護衛⋯じゃなかったのか、私が本当にしたかったのは⋯。


「別の理由⋯。」


私は、目を閉じ、ゆっくりと考える。

一刀様のお側に来た理由。理由⋯り⋯ゆう⋯。


一刀様は優しい⋯一刀様は博識で⋯一刀様はお強くて⋯一刀様は温かくて⋯一刀様は笑顔が素敵で⋯だから⋯だから⋯。


そうしていくうちに、浮かんでは、消え、浮かんでは、消え、最後に出てきた理由に、自分自身が驚いた。


「一刀様の⋯お側に⋯居たかった⋯。」


そう口にした瞬間、顔が熱くなるのを感じる。


あぁ、私はなんと、浅ましいことをしてしまったのだろうか。

自身の気持ちをすり替え、護衛なのどと!


「⋯そうね。それが理由でしょう。」


曹操様も合点がいったのか、にこやかに笑うと、何度も頷いた。


それを見て、更に、私は恥ずかしくなり俯いてしまう。


「恥ずかしがることは、ないわよ。それは、正しいことなのよ、周泰。」


「そ、そうでしょうか?」


含み笑う曹操様の声に顔を上げると、曹操様は指を立てて、教鞭を取る先生のように胸を張る。


「あなたの気付いた、その大切な気持ちは、皆も持っているものよ。だから、彼の周りには人が集まるの。彼を信頼し、彼を慈しみ、彼に憧れる人々が、集うのよ。そうして、触れ合い、もっと想いは膨らんでいく。」


目を閉じると、曹操様は胸に手を当て、小さく息を吐く。

その顔は、少し赤く、今までに見たことも無い、女性らしい顔をしていた。


「あなたは、その起点に立ったのよ、周泰。」


「起点⋯。」


「その想いを大切に育みなさい。不自然な護衛などではなく、自然に一刀の隣に並び立ってみなさい。同じものを見て、同じもの感じ、同じ想いを紡ぎなさい。そうして、互いに唯一無二の存在であると、感じ合いなさい。」


そこまで言うと、曹操様は踵を返して、魏の政務室の方向へ向かっていく。


ヒラヒラと手を振る姿が、どこか、一刀様のそれと、よく似ていると思った。


恐らく、曹操様と一刀様はそうして、長い長い間、共に歩み寄り、しっかりと並び立つことで、色んな想いを共有してきたのだろう。


「私も⋯そう、なれるのでしょうか⋯。」


遠くを歩く曹操様を見つめ、私は小さく呟いた。


ーーー。


それから数日ー⋯。


北郷一刀の周りには、護衛がつくことはなくなった。

いや、元から護衛などというものは、いなかったのだが、輪をかけて、『護衛』という存在は、北郷一刀には不要と意識が浸透していった。


故に、北郷一刀には護衛はいない。


しかし⋯。


「一刀様ぁ!」


「ん?お!明命か!」


「一刀様、お一人ですか?」


場内を目的もなく歩く一刀を見つけ、明命は駆け寄ると、その背中に話しかける。


「あぁ。また、華琳が何処かに呼ばれたみたいでね。午後の予定が空いたところさ。明命は、おやすみかい?」


「はいっ!今から、裏通りのお猫さまにお会いしに行くところなのですっ!」


「そうかー。もふもふしに行くのか?羨ましいな。」


「はいっ!あのモフモフのために、日々のお仕事を頑張っていると言っても過言ではありません!」


ほわぁ~と、猫のお腹や肉球を思い出したのか、明命の顔が惚けていく。


「あはは。明命、顔が緩んでるよ?」


「は!そうですっ!一刀様も、この後、お時間がありましたら、ご一緒に如何ですか?」


「ん?ネコ?そうだな。裏通りの整備の話もあったし、ついでに確認してみようかな。」


「一刀様は、おやすみもお仕事のことをお考えなのですね⋯。少し、心配ですっ。」


「大丈夫さ。明命とこうして話してるだけでも、十分に癒されてるから。」


「あぅあぅ!」


しゅんとなる明命の頭を撫でると、一刀はニッコリと笑い、元気であることを、示すように、力こぶを作ってみせる。


照れた明命は、真っ赤になると、小さく頷き、手を伸ばした。


「一刀様!えっと⋯“でーと”しましょう!」


「え!?あ、あぁ!そういえば、約束してたね。」


「⋯ダメ、ですか?」


明命は一刀の腕に抱きつきながら、一刀の顔を覗きこむ。


一刀は照れながらも、抵抗することなく、それを受け入れて微笑みを浮かべた。


「いいに、決まってるだろ?さぁ、行こう!」


「はい!」


一刀の周りには、護衛はいない。


だが、一刀の周りには百戦錬磨の武将知将が、必ず、いるのだ。


いくら、隙を伺おうとも、こう、周りをガッチリと人に固められては、刺客も簡単には手を出しにくくなってしまうというもの。


『っ⋯。仕方ない。退却!』


バッ!バッ!バッ!


気付けば、もう、一刀の命を狙う者はいなくなっていた。


「ふぅ⋯。これで、一刀は大丈夫かしら?」


「もとより、大丈夫だろ?アイツほど、強い人間はそうはいないだろうが。」


「天下無双だって、人間よ?常に万全を期して、生活を送るなんて、できはしないわ。」


「そりゃ、そうだが。だからって、全将を恋慕の道に進めて、もっとも身近な警備に仕立てる、なんて大逸れた考えができるのは、お前くらいだろうな。全く、恐れ入るよ、曹孟徳殿。」


二人を影から眺めながら、曹操と左慈が小さく笑う。


「愛する夫を守るためなら、なんだってするわ。私に時間があるなら、本当は、四六時中、一緒に居てあげたいところだけど、それはできない相談だもの。」


「居てあげたい、か。居たい、の間違いでないのか?」


「そ、そんなわけないわよ!私は王よ!やらなきゃいけないことが、山ほどあるのよ。」


「ふーん?北郷に悪い虫が付かないように監視するとかか?」


「っ~~!!?」


左慈を言葉に、華琳は真っ赤になると、踵を返して、政務室へ向かう。


左慈はそんな、華琳の様子に苦笑を浮かべると、一刀たちが消えた先をもう一度見て、曹操の後を追いかけた。


一刀の奥さん、曹操。その導きにより、可愛らしい無敵のセキュリティが、また一つ、追加されたというお話でした。


これ以上の語りは無粋だろうな。

それでは、これにて。


あ、そうそう!


ちなみに、曹操を一番側で護っているは、俺だからな。


なんだかんだで、近くをウロウロしてやってるんだぞ?


有難く思えよ、オヤジ。


「さぁーじぃー!」


「なんだ、北郷?ところで、腹が減った。飯をよこせ。」


「お前、この前のおこずかいは、どうしたんだ?」


「ふん⋯。俺は成長期なんだ。」


「ほぅー?なら、成長を止めてやろうか。今すぐ。」


「ふふ⋯ははは!出来るものなら、やって欲しいものだが、生憎、お前なら、軽くやってしまうのだろうな!ごめんなさい、屋台が魅力的過ぎました!」


「無駄使いは、程々にしろよ?民の血税なんだから。はぁー。仕方ない、出前でいいか?」


「ひゃっほー!カツ丼だな!」


「この時代にはないだろ。ラーメンだ。」


「餃子と白飯もセットなんですね!ダディー!」


「ちっ、欲張りな。まぁ、華琳の護衛のためだ。有難く思えよ、バカ息子。」


「ありがとうございまーす!ご馳走様でーす!」


本当に感謝しろよ、オヤジ!


い、いや、うそうそ。

本当に感謝してるって、オヤジさま。


まぁ、あれだ。曹操と北郷は結局、想い思われの関係だったってことだな。


互いを思う心が一番の、セキュリティなのかもしれない。





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