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盲目の赤ずきん

作者: 白猫保温

 赤ずきん、赤ずきんや。お婆さんのお家へお薬を届けに行って頂戴。絶対に寄り道なんかしたらいけないよ?狼に食べられちゃうからね。まっすぐ帰ってくるんだよ。

この赤い頭巾は絶対にはずしちゃ、いけないからね。


 本当に嫌になっちゃうわ。お母さんったらこんな可愛い娘に森を歩かせるなんて。まあ仕方ないわよね。熱出しちゃったんだもの。お父さんは狩りに出かけちゃったし、頼れるのは私しかいないものね。でもやっぱり森は怖いわ。いや、これは森を歩いているのが怖いわけじゃなくって目が見えない私が一人で出かけるのが初めてだからなのね。森は小石が多いから慎重に歩かなくちゃね。

 ガサッ

しばらく歩いていたら、右のほうから何かの音がしたわ。

これはきっと、いえ絶対に狼だわ。見つかったらがぶりと頭から食べられちゃうわ。

逃げなくちゃ。今日のおやつはアップルパイだし、私が帰ってこなかったらお母さんとお父さんが心配しちゃうわ。

走らなくちゃ。追いつかれないように速く、早く。


ドン


足が痛くなった、何かにぶつかったみたい。ほら、さっき気を付けて歩かなくちゃって思っていたのに。もう忘れちゃったのね。顔に冷たい感触がする。濡れてる、というか湿ってる感じがするわ。転んじゃったのね。

どうしよう、いつもなら転んだ時はお母さんとお父さんが立たせてくれたのに。今は一人だから立ち上がるのが難しいわ。でも、立たなくちゃ狼に食べられちゃう。

地面に手をつけて、頑張って体を持ち上げなくちゃ。怖いけど大丈夫。足が震えるけど、どうにか立てそう。


立てたのはいいけど、白杖がないと歩けないわ。せっかく立ったけどまたしゃがまなくちゃ。

転んだ時に手放しちゃったからここら辺にあるはずなんだけど・・・見つからないわ。

もう少し探してみなくちゃ。ちょっと遠くに飛んでっちゃったかもしれないし。


カラン


あ、冷たい感触がした。白杖だわ。良かった、これでお婆さんの家へ行ける。狼が来ないうちに早く立たなきゃ。

もう少し注意して、でも狼に追いかけられないように少し早歩きしましょう。


サクッ


あ、足音が変わった。きっとここはお婆さんお庭ね。ここをまっすぐにいけばお婆さんの家のドアへ行けるわ。

こんっと音がすると同時に杖が震えた、これがドアね。



おかしいわ、押しても開かない。

引くんだったかしら。・・・ダメだわ、あかない。

もしかしたら、ここがドアじゃないかもしれないわ。どうしよう!

でも、大丈夫なの、壁に手をつきながら横へ横へと歩いてドアを探しましょう。


しばらく歩いてもドアみたいな感触がないわ。

もしかして、転んで起き上がった時に違う方を向いてそのまま進んでしまったのかしら・・・。

大変!迷ったら家へ帰れないわ!

早く来た道を戻らなくちゃ!

壁から体を離して、少し急いで歩いて、森へ入るの。


結構歩いたはずなのに、まだ森の中。おかしいわ。

いえ、結構歩いたと思っても本当はあんまり歩いていないのかもしれないわ。

もうすこし、歩きましょう。





このまま、私はずっと歩いたの。森の奥は狼がたくさんいることも忘れて・・・。

早く家に帰りたい一心で歩いていたの。

でもね、私は来た道を辿っていなかったの。だって、ドアを探してうろうろしていたのにそのことを忘れてそのまま目の前にあった違う道に入ってしまったから。

私はモウモクだから分からなかったんだけどね、その道のそばに看板があったんだって。


ここから先、狼の巣! 立ち入り禁止!  っていう看板が…

読んでくださりありがとうございます。

盲目の赤ずきん、これは絵本を読んでいて狼に「なんで耳が大きいの」、「なんで口が大きいの」と赤ずきんが質問しているときに、これで目が見えなかったらどうなっているかな。と思い作ったものです。

もともと非現実的なことを考えるのは苦手な私ですが、こんなのを考えるのも楽しいと書いているときに思いました。


  ひらめいたら、すぐ行動   もしかしたらそれがとても楽しいかも。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 着想、構成、それを書こうとした実行力は素晴らしいと思います。 赤ずきんを視覚障碍者に繋げるとは、これを見たとき「おお」と思いました。 [気になる点] 途中から段落が一マス空いていません(;…
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