チョコまみれにドロドロに愛を紡ぐ
世間一般ではバレンタインと騒がれる時期。
今年は平日だし週末だし……。
リア充やらラブ充は爆ぜろと言われる時期だろう。
まぁ、そんなこと僕には関係ないか。
「ね、心愛?」
ぐったりと項垂れる彼女に声をかけた。
輝いていた瞳などどこへ行ったのか。
虚ろな瞳で明後日の方を見つめる。
フワリとクセのある色素の薄い茶髪。
小動物みたいに可愛い可愛い僕の僕だけの彼女。
バレンタインだから尚更心愛と一緒にいたい。
だから学校は休むことにした。
でもこんな状態の心愛に料理を頼むのは気が引けるね。
それに料理なんてさせて心愛が怪我でもしたら大変だ。
そっと心愛の髪を撫でる。
「待っててね、チョコ用意するから」
僕は心愛を置いてキッチンへ向かった。
どこにでも売っているチョコレート。
それを刻んでボウルに入れて湯煎で溶かすだけ。
あぁ、甘そう。
正直に言って僕はそんなに甘い物好きじゃないんだよね。
心愛は好きみたいだけど。
前々からケーキバイキングとか行ってたしね。
今でこそ外には出してあげれないけれど。
甘い物ならこの部屋でも十分口にできる。
湯煎が終わったのでボウルについた水分を綺麗に拭き取る。
そして少し冷ましてボウルごと持って心愛が待つ部屋へ行く。
僕が来たのに心愛は相変わらず上の空だ。
そんな心愛に近づいて視線を合わせる。
顎を掴んで心愛の目をのぞき込む。
何も映さず反射するだけだった心愛の瞳に僕が映る。
それだけで気分が高揚するんだ。
ぼうっと僕を見る心愛。
「心愛は甘い物大好きだもんね?」
僕はそう言って指でチョコレートをすくい上げ心愛の口に入れた。
「むぐ?!」
心愛の瞳に光が戻った。
ハッと目を見開き僕を凝視する。
顔を引いて体をよじって抵抗を見せるが僕はグイッと指を奥へとねじ込む。
苦しそうに数度むせてから僕の指に舌を絡めてくる。
指先を吸い指の一本一本を丁寧に喰わえてチョコレートを舐めていく。
「美味しい?」
ニコニコ笑いながら問いかける僕。
心愛は恥ずかしそうに顔を赤らめながらコクコクと頷いた。
なんて可愛らしいんだろう。
僕だけの心愛。
ドクドクと胸が脈打つ。
愛しさが溢れ出して狂気的に彩られる。
心愛の口から指を引き抜き微笑みながらチョコレートをぶちまける。
「え……」
きょとんとする心愛。
きょとんというよりは唖然とした顔だ。
顔にも服にも。
体全体にチョコレートがかかった心愛。
部屋が汚れるだなんて気にしなくていい。
掃除すればいいんだから。
心愛の手首についた銀色の細かい細工が施された手錠。
それをグイッと引っ張って引き寄せる。
バランスを崩した心愛はチョコレートまみれで僕の方へ倒れ込む。
僕の服もチョコレートまみれになるがそんなのことはどうでもいい。
首筋にチョコレートがついている心愛。
美味しそう。
「ひっ!」
ベロリとチョコレートを舐めとる。
心愛の上ずった声が耳元で聞こえた。
甘い。
チョコレートも。
心愛も。
全部…。
全部食べたい。
チョコレートを舐めとって吸い付いて……。
あぁ、たまんない。
「ん……うあ…………いあぁぁ!!」
くぐもった吐息から悲鳴に変わった。
痛みによる悲鳴。
心愛の首筋に噛み付く僕。
その悲鳴も涙も僕のものだよ。
君は僕のもの。
このまま二人で溶け合って………。
「心愛、愛シテル」
チョコレートと心愛の血が付いた唇を腕で拭いながら微笑んだ。
ぐったりと目を閉じた心愛を抱きしめて。
チョコレートまみれになって僕は眠った。