表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モルトワーンの吸血鬼  作者: 左藤 ふじ
第1章 彷徨える影
5/7

5

「貴方が私を見ていないことなんて、とっくに知ってるわ」


 ――女がわらった。



 こつ、こつ、こつ。

 軽やかな靴音が夜半に鳴り響く。


 歩道に立ち並ぶ新緑の木々はかすかな風に揺られ、さわさわと、誰に主張するでもなく乾いた音を空に届ける。

 小さな商店が建ち並ぶ質素な街並み。各々の軒先を彩るわずかな花々が端々を照らしている。


 人気のない夜に、一つの影が伸びる。

 姿はほぼ闇に溶け、唯一さらけ出された顔と手の肌だけが、人体を形作るように白く映える。

 のそりのそりと、脚も重た気に這う姿を、街の光だけが追っていく。


 その姿から微かに煙る香り。

 鉄錆の香りが、空気に染み出して行く。その足取りは目指す先を見ていない。


 こつ、こつ、こつ。

 軽やかな音だけが何処とも無く響いている。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ