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第1話 Barで働く男

「坊ちゃん、今日はもう上がってもいいぞ」


「うっす。マスターもほどほどに休んでくださいよ?」


 俺、斎藤大介という男は現在、この人気のない場所にあるBarで働いている。

 なんでこんな所で働いているかって? んなもん、あの有名芸能事務所のクソ社長からクビにされたからに決まってんだろ。


 当時それを聞かされた時は「え、まじっすか? 俺……なんかやらかしましたっけ?」と尋ねてみたものの、一切聞き入れてもらえず、ゴツい警備の人に追い出されるというなんともまあ理不尽な話だ。


 まあ、自分はただのしがないマネージャーだったし、他に有能な奴はいくらでもいるんだろうけどさ……。く、まじでやってられないぜ。


 ああ……そういえば()()()()()()()、井上秀太っていう超有名なイケメン俳優がいたな。


 そいつ、なぜか所属当初から俺の悪い噂ばかり吹きまわしてたから、多分そのせいだろうな。

 まあ、全部事実じゃなかったから無視したけど。

 しかも、俺、女の子と遊ぶほど陽キャじゃないしな……。顔も地味だし。


 ってか、そもそも俺のことばっか攻撃しないでくれよ……。火消しするの毎回大変だったんだから。


 特に、俺がマネジメントしていた()()()()()()()()には「他の女と遊んでたんだ? ふぅーん? 死ねば?」などと、罵詈雑言を浴びせられ二週間、口を聞いてくれなかったこともあったからな。


 いや、いくらなんでも理不尽すぎるだろ。

 そもそも人生で一回も彼女できたことのない俺だぞ?


 そんな奴が女と遊びに行くだなんて度胸、あるわけないだろ。



 でもまあ、クソ社長のおかげで今、誰にも干渉されずにのんびりとやれているだけ良しとするか。

 ()()()()のマネージャーやってるのも、正直嫌々でたまらなかったし。うん。


 それにあの頃は毎日が多忙で休む暇も無く、過労で倒れそうになったこともたくさんあったからな。


 正直、クビになったらなったで結果オーライ。

 案外良かったのかもな……。


「お、そういえば坊ちゃん」


「ん? どうしたんすか、マスター?」


「今日接客した客の中で超可愛い女の子、いただろ?」


「え、うーん。そんな奴いましたっけ……?」


 あれ。まじで記憶にない。

 ここの店。何でかは知らないけど妙に客が入るからな。

 田舎なのに。


 マスター曰く、俺がここで働くようになってから売り上げも良くなったとか言ってたし。

 なんかそういうのって嬉しいよな。


 でもまあ、人数が多いから、誰に指名されたとかはあんまり覚えてないけど。


「おいおい、お前。まじで女に興味ないんだな……。あれだけアタックされておいて……。多分、あの感じだと毎日来るぞ?」


「いやいや、それは絶対にないっすよ。ってか、まじで誰でしたっけ?」


「ほら、あのサングラスかけた二十代前半ぐらいの若い嬢ちゃんのことだよ。本当に覚えていないのか?」


「うーん……あっ」


 あー、あの人か。ようやっと思い出したわ。確かにいたわ。うん。

 なんか超酒癖悪かったなーあの人。


 顔はずっとサングラスつけてたからあんまり分からなかったけど、多分どっかのモデルだか芸能人といった所だろう。

 もちろん今となっては興味は無いが。


「まあ、あの()()()()()()()()()()()()()をやっていたお前にとっちゃ、可愛さのレベルが多少落ちるのは無理もねえが」


「え? いやいや。あいつは全然可愛くないっすよ? むしろ今、俺にとってはクビになって清々しているところです」


「ハハハっ! ったく、お前らしいっちゃお前らしいな! ……けど、恋愛事は早く解決しておいた方が良いぜ? これはマスターからのちょっとした()()()()()だ」


「は、はあ……なるほど?」


 ん? 恋愛事って何だ?

 まあいいか。俺にとっては縁のない言葉だし。


 それに、何といっても明日は休日。

 ここのBarは週一で休みがあるので、一週間の疲れを癒す唯一の一日だ。


 早く家に帰って、熱い風呂にざぶっと入ろう。

 そして昼までぐっすり眠り、ゲームでもして時間をつぶすのが俺のルーティーンだからな。


 一人暮らし万歳。生涯独身万歳、といったところだな。うん。


「よぉーし! 明日はまったり過ごすぞおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」






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