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2話 予約

「いやぁ助かったよ」

「いいえ別に」


俺は隣で歩くメリルダという少女にお礼を言いつつ自分の手にある指輪を見つめる。

依頼人から捜索依頼を受けていて指輪、三日かけて捜索したそれは月光を受けて美しく輝いている。

さぞかし高級な指輪なんだろう。なんでも成人祝いに親父さんから貰ったものらしいが、まさかその日の晩に酔った勢いで池に落として魚に飲み込まれるだなんて…。青い顔した金持ち娘の依頼人からその話を聞いた時には内心『こいつバカだろ』と思ったがそれを口に出さないのがプロの何でも屋ってもんだ。

一方のメリルダおえはと言えば素っ気なく返事を返すばかりで言葉のキャッチボールが繋がらない。

あの時彼女が気を利かせて助け舟を出してくれなかったら俺はまだあのむさ苦しい詰所にいたことだろうし、俺が解放されてすぐに指輪も返してくれたし感謝の言葉と一緒に晩飯くらいおごりたいと思い近場のレストランに誘ったわけだが彼女はあくまでそれを断った。

公園と詰所のあった路地から路面電車の線路が敷設されている大通りに出たところで声をかけることにした。


よし。


「一つ聞いていいか?」

「なんでしょうか?」

「さっきどうして俺を助けてくれた?言っちゃあれだけどこんな怪しいナリの男を庇うなんてさ」

「別に。困っている市民に手を貸すのは騎士の役目ですから」

「それは学生が勝手に決めていいことなのか?」


メリルダさんはその言葉に表情一つ変えず歩幅を少し広げて俺よりも早歩きを始めた。あからさまに話題をそらしたいとしか思えないな…。次にかける言葉を思案していると不意に前を歩く彼女が歩みを止めて振り向かずに声を出した。

明日あすあなたに頼みたいことがあるのです」


俺も歩くのをやめて足元を見ると路面電車の停留所だった。つまりさっきの早歩きは電車がここに来る前にたどり着きたかったってことか?それはそれで悲そのtきn

「明日?」

「さっき貴方が釈放されるって時に先輩たちから聞きました。貴方の名前や職業とかを」

「俺のやってること知ってるなら今依頼すれば?」

「今日はもう遅いです、また明日の夜8時に貴方の元に改めて行きますので予定空けておいてください」


その時横から黄色い光が俺らを照らした。光の下は電車の前照灯で地面に敷かれた2本のレールが特別光り輝いていた。が、それ以上にメリルダさんのその白い肌と髪の毛が光を反射した。

さっき初めて会った時も思ったが色白とかそんな次元を超えていてそれこそ精巧に出来た人形みたいに全身の隅々が真っ白で紫色の瞳と金色のまつ毛と眉毛がアクセントととして引き立っている。


「ではこれで」


やがて停留所に車両がつくとメリルダさんが扉横の手すりに手を伸ばしてステップに足を乗せた。俺はそんな彼女に一言声をかける。どうしても気になっていたことを言わなきゃ済まない。


「待てよメリルダさん」

「なんですか?」


乗る客はメリルダさん一人だが降りる客はそこそこいるらしく彼女が乗ってからしばらくしても動く気配はなかったのでちょうどいい。


「俺は君のことメリルダさんって呼んでるけど、君は俺のこと‘貴方‘呼びだよな?」

「貴方も名前で呼んでほしいと?」

「ほらまた!俺の名前知ってんだよな?」


ちょっとばかり目をきょろきょろ動かして困った顔をしてから小さく口を開いた。

ところがその時、電車が客を降ろし終えてチンチンと発車の合図を鳴らすとすぐにブーーーンとけたたましいモーター音を唸らせてあっという間に走り去っていった。


ああ、せっかく俺の名前をいうところだというのに間の悪いことで、仕方なしに赤いテールランプが遠くへと消えていくのを目で追った。

まぁ、明日8時になれば自然と「エドさん」と俺の名前を呼ぶ彼女に会えるわけだし良しとするか。俺は用のない停留場を後にすることにした。



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