起!起!起!
「いざ、鬼退治じゃっあああああ!!」
パンイチの王様の号令と同時に鬼の群れへと飛び込んでいく。
前はもちろん、右も左も鬼、鬼、鬼。
とっくに地面は見えなくなり、ひたすらこの不気味な生物だけが視界に飛び込んでくる。
「こっちは粗方片付いたわね。あなた以外の異世界から来たって子たちも戦ってるわよね。アタシはあの可愛い坊や…刀を使う子のとこに助太刀に行くわ」
「えー!いいなー!じゃあ、オイラはあっちの人と一緒に戦ってくる!!」
「なんじゃ!そんなんアリか!じゃあ、俺ぁ向こうに行こうかのう。可愛い子もおったしのおおおおお!」
「おい待て!粗方も片付いてねぇよ!!戻ってこい!おおおい!!
おおおおおおおおおおおおい!!!」
◇
「おーーーーーーい!誰かー、いますかーーーおーーーい!」
1人、森を彷徨っていた。お決まりのパターンで、ここがどこなのか、いつの間にこんな所にいたのか分からない。
ただ、呆けているだけではどうにもならない。それだけの理由でとりあえず歩いていた。
森と言っても、生えているのは竹ばかり。
日が真上にある日中であるから、景色は明るく、幸い不気味な様子でも無い。
いつまで続くか分からない竹の行列を掻き分け、1人自問自答を繰り返していた。
「俺家にいたよな…寝て、起きたよな…学校行ってーーー……いや、昨日は行ってねぇか。とりあえず家にいて、軽くドラクエ進めて、寝て、起きた…起きたら…ここにいたな……」
何度もこれまでを思い返す。変わらない記憶を何度も辿る。そして結局は「いや〜〜〜ワケ分からん。」と同じ結果に行き着く。
「なんでだ?呪い?いや、なんの?呪い呪い呪い呪い……フローラ?ビアンカを選んだからフローラが怒って呪いをかけた?」
自問自答が明後日の方向に差し掛かった頃、少し遠くから物音が聞こえた
「強めのルーラ…?こんな情熱的な面があるならフローラにしとけばよかっ」
ガサ……
「あ?誰かいるん…」
ガサガサ…
何かが近づいてきている。
一つ二つではない。何かの群れがこちらへ駆け寄ってくる。
ガサガサッ…ガサガサッ!!ザッ!!
音が近づき、姿を捉えた瞬間、奇声を上げ“そいつら”は飛びかかってきた。
ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッ‼︎
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」