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伝説の空手家

 体育館では4人の見慣れない男たちがいた。

ひと目で分かる、明らかに悪そうな態度と見た目だ。

間違いなく彼らが今、中学校で問題視され始めた卒業生だとわかった。


背の高い金髪の男

ジャラジャラチェーンをつけた男

スキンヘッドの男

サングラスをかけた男


 4人の男達の周りには、女子バスケット部の女の先生がいた。

男たちのところには、目の辺りを手で押さえた男子生徒が座り込んでいた。

女子バスケットの先生は、4人の男達に何か叫んでいた。


「何やっているの!?ふざけないで出ていきなさい!」


女子バスケット部の先生は、4人組に対して大きな声で言っていた。


「てめぇ!調子に乗ってんじゃねーぞ!こら!!」


金髪の男は、その女性教師の言葉を無視して、目の前に座っている男子生徒の耳元で叫んだ!


女子バスケットの先生は、金髪の男を生徒から引き離そうと、必死に押した。


すると今度は、チェーンの男が


「クソガキがこら!舐めてんじゃねーぞ!!」


と言って、足で生徒の頭を強く押した。


「やめなさい!」


女子バスケットの先生は、今度はそっちの男の方を向いて絶叫した。


「うるせーな!!ババア!オメエもぶん殴ってやろうか!?」


スキンヘッドの男はニヤニヤしながら、女子バスケット部の監督に言った。


「先生!大丈夫ですか?」


体育館に到着したおじいちゃん先生は、それを見ると慌ててバスケットの先生の前に躍り出た。


 そしておじいちゃん先生は、躊躇いもなく4人組に対して向き合う。

その表情はいつものニコニコ顔とは全く別の顔になっていた。


 4人組は空手着を着た老人がいきなり目の前に現れたので、少々面食らったようだ。

だが、相手がおじいちゃん先生で高齢と見るや、おじいちゃん先生に挑発を始めた。


「じじい!!この場で人生終わらせてやろうか?」


笑いながら金髪の男が言った。


「オメエは関係ねーだろ!俺らは卒業生だぞ!問題ねーだろ!失せろや!」


チェーンの男がおじいちゃん先生の横から大声で怒鳴った。


そして次にスキンヘッドがおじいちゃん先生の前に歩み出た。


「あのさぁ、俺たちは後輩たちが可愛くて見に来てんの。そしたらこのガキが、俺たちを挑発したのよ。だから指導してあげたの!わかった!?じじいの出る幕じゃないの!」


と笑いながらおじいちゃん先生を押した。


「やばい!!」


キャプテンが叫ぶと先生のもとへダッシュした。

僕も松崎もキャプテンに続き先生のピンチに駆け出した!


 いくら空手の達人といえども、流石にこの人数では部が悪すぎる!

ましてやもう70歳のお年寄りだ!


 慌てて駆け寄る僕たちを制したのは、他ならぬおじいちゃん先生だった。

おじいちゃん先生は手でボクらを制すとこう言った。


「君たちは何か勘違いしている。ここは君たちが居ていい場所ではない。帰りなさい。」

先生は70歳とは思えぬ迫力の声で威圧した。


「あん!?ジジイ、俺たちは卒業生なの!学校来ていいの!分かる?さっき言ったよね。あーボケてて分からないか!」


と言って金髪の男は爆笑しながら挑発した。


「弱そうだなぁ、本当に空手の先生?俺余裕で勝てそうなんだけど!?」


と言ってチェーンの男は、ボクシングの真似をしてパンチを先生の顔の前に数回繰り出した。


先生は言われたことに動じずに、静かにこういった。


「そうか、口で言って分からないなら、体に教えるしかないな。」


先生はそう言うと、大きな息吹を行い足を少し開き、拳を顔の前に構えた。


 おじいちゃん先生から出てくる闘気はまるでオーラのように空気を揺らす。

若い頃は相当に暴れまわったであろう伝説の空手家の片鱗が見えた。

 キャプテンを含め、僕らはこの張り詰めた空気に、一歩も動けなくなった。


 4人組も思わずおじいちゃん先生と少し距離を取った。

おじいちゃん先生は、構えのままにゆっくりと歩を進め、リーダー格であろう金髪の男の前にきた。


「ジジイ!容赦しねーぞ!!」


と金髪の男は怒鳴った。


 バスケットの先生も思わず息を呑む。

張り詰めた空気感が、緊張の度合いが増してくる。

僕にでもその雰囲気が痛いほど分かった。


 おじいちゃん先生は無表情だった。

その表情に僕は恐怖を感じた。

いつも笑っている人ほど、怒ったとき恐ろしいものだ。


「おい!ジジイ!俺も空手やってんだよ!お前中坊に何教えてんの?盆踊りでも教えてんの?」


金髪の男はそう言っていたが、明らかに表情に余裕がなかった。


 いよいよ距離が詰まった。

ここにいる全員が、おじいちゃん先生の一挙手一投足に注目している。

僕も松崎も、さらにキャプテンも思わず息を飲んだ。


次の瞬間!


 おじいちゃん先生は、ふわっと体が浮いたかと思うと、70歳とは思えぬ早業で金髪の男足元に踏み込んだ!

ポン!と金髪の右肩をおしたかと思うと、体が一瞬で少し体がずれた。

その瞬間、おじいちゃん先生はあっという間に、右足の上段廻し蹴りの態勢に入っていた。

あまりの動きのスムーズさとスピードに僕らは思わず度肝を抜かれた。

これが70歳の老人の動き方だろうか!?


おじいちゃん先生の蹴りが金髪の男の顔を捉えようとした。

その時だった‥‥。


グキッ!!!


鈍い音が少し離れた僕たちの耳にも届いた。


そのまま崩れ落ちるおじいちゃん先生


「む、、、無念、、。」


その一挙動で、腰を抑えてうずくまってしまった。


 僕たちはおじいちゃん先生のもとに駆けつけた!

苦悶の表情を浮かべるおじいちゃん先生。

その額には脂汗が滲んでいる。


「え!?ちょっと、、。」


と面食らう金髪の男。


「先生!!先生!!」


とりあえず絶叫する空手部のメンバー。


「なにやってんの!!アンタたち!!」


金切り声で発狂する女子バスケ部の先生


「だから、何もやってねーだろ、、、。」


金髪は所在なさげに言った。


「きゃあああああ!!」

「いやあああ!」


女子生徒の誰かが悲鳴を上げたら、他の女子生徒も続いて声を上げた!


 分かりやすい修羅場の雰囲気だ。

しかも今回はおじいちゃん先生の自爆とも言える状況だが、もはやそんなのは関係なく、雰囲気は大混乱だった。


「っち!!だから関係ねーだろ!俺はよ!!」


と叫ぶ金髪の男の声はもう誰にも届かない。


騒ぎを聞きつけた他の先生たちが現れたので、4人の男たちは舌打ちしながら体育館から出て行った。


おじいちゃん先生は、青ざめた顔のまま担架に乗せられて保健室に運ばれていった。

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