魅惑のチアリーディング部
中学校の体育館で稽古は行われる。
バスケット部、バレー部、バトミントン部など体育館を使う複数の部活でローテーションを組んでいる。
空手道部は月、水、金の3日間体育館を利用することができる。
それ以外は空き教室を利用したりする。
実は僕は水曜日の体育館練習を心待ちにしていた。
なぜなら水曜日の体育館練習は半面を僕らが使うが、もう反面をチアリーディング部が使っているのだ。
チアの練習の時はテンションが上がってしまうのだ。
まずチアリーディング部の顧問の先生が、さとみ先生といってとても綺麗だ。
僕ら中学生には信じられないほど眩しくて、大人の女性に満ち溢れていた。
年齢を聞いても教えてくれないが、多分25歳か26歳くらいだと思う。
ただ教師になってもうすぐ10年とか言ってた気が‥‥。
更にチアリーディング部は、可愛い子が多いのだ。
そしてメチャ有名だった。
全国大会の常連で、なんとアメリカの大会に招待されたこともあるそうだ。
体育祭などは多くのファンが彼女らの演技を見に集まるなんて事もあるそうだ。
3年のチアのキャプテンはもう、芸能人並だし。
僕と同じクラスのサラという女の子もとびきり可愛い。
彼女を狙おうとする男子生徒も実際に多い。
少し前には3年生のイケメン先輩に告白されたりもしていた。
セミロングの髪をいつもポニーテールにまとめて、スポーツ万能。
明るくて太陽みたいな女の子だ。
そして実は僕はサラの事が大好きだったりもする。
まぁ、片思いってやつだ。
1年生にも双子の可愛い女の子がいて、チア部を見ているだけで幸せだった。
だから一緒に体育館で練習できる水曜日を、僕は心待ちにしていた。
おじいちゃん先生は、ちょっと耳が遠いところがあるが、大きな音のチア部の音楽を聞いて踊りだしたりするという、ちょっとおちゃめなところがあった。
だからチアリーディング部の子やさとみ先生ふくめ、おじいちゃん先生は人気だった。
更におじいちゃん先生は頻繁にチョコレートやお菓子を持ってきて、チアリーディング部の人たちにもお裾わけをしていた。
部活中にお菓子を食べるのは本当はダメなんだろうけど、誰も何も言わなかった。
「お嬢さんたちにも分けてあげておくれ。」
と言って、何故か僕に対してどっさりお菓子を渡してくるのだ。
僕は渡されたお菓子を、チアリーディング部のみんなに配り歩くのだが、彼女たちの息遣いと熱気、そしてなんだかいい香りがしてくるので、この役は絶対に譲らない!と心に決めている。
それでもこの気持ちがバレないように敢えて仏頂面をして、お菓子を渡している。
するとクラスメートのサラが、笑いながら
「えー!カッコつけてる??」
と茶化してくる。
「そんな訳あるか!」
と顔を真っ赤にして反論すると、3年生のチア部の先輩たちが
「照れてる!?カワイイ!」
と爆笑したりしている。
つまりどういうことかと言うと、「最高」だということだ。
だから僕はおじいちゃん先生を死ぬほど尊敬している。
それだけは間違いないのだ。
そんな日常がたまらなく楽しくて、僕はこの空手道部に心から感謝している。
こんな楽しくて、素晴らしい部活動は他にないと僕は断言する。
「よーし!今日も空手!いっちょ頑張りますか!!」
僕は同級生の松崎にそういった。
松崎も小学生の頃からの空手経験者で、僕らの世代のエース候補だ。
もちろん僕も自分でエース候補だと思っているので、ライバルだ。
こいつには負けられない!
だから僕らはいつも一緒に練習していた。
「って、ケンさー!水曜日は浮かれてるよな。絶対さとみちゃん目当てだろ!」
松崎はそう言って僕の肩を軽く殴ってきた。
「そんなんじゃねーよ!」
僕は真剣に言った。
さとみ先生ではなくて、チアリーディング部でクラスメートのサラが本命だからだ。
「そういうお前は、サラ目当てだろ!」
僕は敢えてカマをかけた。
「ああ、そうだよ!!」
松崎は当然という顔をした。
「お、、おいおい!!マジかよ!?」
僕は驚いた。
正直言って態度に全く現れない松崎がサラを狙っていたとは!?
「お前には負けねー!」
僕はそう言って、松崎の肩を突き返した。
「てめー。やっぱりサラか!?おーし!!勝負だ!負けねーぞ!」
松崎は僕に向かってそう叫んだ。
僕らは体育館に向かって全力疾走した。
僕たちは青春ど真ん中にいた。
僕たちは地元で最強で、負ける気なんてしなかった。
全てがキラキラしたそんな14歳の夏だった。




