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2匹の龍の男

「なんだよ、来てたんなら早く出てこいよ」


 金髪の男は急に落ち着いた雰囲気を取り戻した。どうやら金髪の卒業生たちの仲間のようだ。だが他のメンバーよりも少し小柄でやせ型だった。


「俺はここの卒業生じゃないから、別に出てくるつもりなかったけどさ。可愛い先生が居るっていうから、一緒に来ただけなんだよね。でも楽しそうだから入っちゃった。空手ねぇ‥‥。役に立つの?それ?」


 この男は3年の先輩たちではなく、さとみ先生を見ながら言った。そしてその男はジャケットを脱いだ。タンクトップから見える腕には2匹の龍の刺青が入っていた。


「う、これってまさか‥‥」


 隣町に腕に龍の刺青を入れたとんでもない不良がいるという話は有名だった。名前は「千葉」という男で都議会議員の息子だった。本来ならば少年院に送られるような事件も全てこの父親がもみ消したという噂だった。そしてボクシングで高校全国大会に行くレベルだが、喧嘩、恐喝、暴行等の暴力沙汰の数々が原因でボクシングをやめ、それから自分で不良仲間を集めてギャング集団を作っているという噂だった。


「千葉ちゃんでーす。じゃあ、俺が相手してあげるYO!」


 というなり、いきなり真ん中にいた、キャプテンの顔をパンチで打ち抜いた。キャプテンが反応できなかった。

キャプテンは構えを崩していなかった。だが、刺青の男は素早くワンツーを打ち込んだ。やはりキャプテンは反応ができずに、打たれてしまった。


「はは!防御しかしないとか、こういうのをサンドバッグて言うんだぜ。まぁ、俺はサンドバッグ打ち大好きだから、容赦なく打ち込むけどな!ちょーストレス解消!」


 刺青の男はそう言って、近くにいる3年生に襲いかかった。

ただでさえ素早い動きの刺青の男の前に、先輩たちはやはり避けきれなくなった。

一発・二発とパンチをもらってしまう。素手のパンチはやはり強力で、パンチを受けた先輩たちは血まみれの状態になった。


 その状態になったのを見て、金髪の男を始め全員が空手部の3年生を殴る、蹴るという最悪の状況になった。刺青の男以外の攻撃は先輩たちは何とか避けていたが、刺青の男の攻撃は貰ってしまう。一度貰い始めると集中力が切れたのか、他の不良たちの攻撃も貰うようになった。


「ふざけんな!」怒りの表情で、海老名先輩はついに殴り返した。だが、刺青の男はあっさりと避けると、そのまま海老名先輩にパンチを浴びせた。海老名先輩はそのまま倒れ込んだ。


「おーっといいのかなぁ。これで喧嘩成立!お前らは最後の大会にも出られません。暴力沙汰は学校としても理由はどうあれ、あっちゃいけないもんな!ははは」


 金髪の男が大声でそう叫ぶと、先輩たちの動きは一気に止まってしまった。殴られ、蹴られるのを必死で耐えた。うずくまりながらも何とか耐えるのだが、卒業生たちは容赦なく殴りつけるのだった。


「いい加減にしなさい!警察を呼びます!」


さとみ先生が、立ち上がって生徒に指示をした。指示を受けたチア部の女子生徒が、体育館を走って出ようとした時、チェーンの男がそれを遮った。


「おーっと!そうは行かないのよ。もうちょっと待っててもらわなきゃ!」


 と言って、女子生徒の腕を掴んだ。


「止めなさい!」さとみ先生がそれを見て大声で叫んだ。


「だったらぁ。アンタ服脱いでよ。生徒助けたいんだろ?そしたら俺ら何もしないで帰るよ。だって俺らゲームだもん。掛けしただけだからさ。アンタが脱いでくれたら、そのまま帰るよ。なぁ!」


 ニヤニヤと刺青の男が、他の4人に声をかけた。


「ふざけないで!」

「ふざけてなんかないよ。まじまじ、脱いでくれたらすぐ帰るよ」

「バカなことを言わないで!早く帰りさない!」

「あぁ、ならいいや、ちょっと見せてやって!」


 刺青の男がチェーンの男に指示をした。


「オーケー!」というとチェーンの男は、掴んでいた女子生徒の上着を脱がそうとした。


「きゃー!」という女子生徒の叫び声が響いた。


「何考えてるの!誰かー!誰か来てください!」さとみ先生が叫んだ。


「だからー!アンタが脱ぎゃ良いって言ってるじゃんか。それ以外ここの場は収まらないよ」


ヘラヘラと笑いながら、刺青の男が言う。


「いい加減にしてください。それが男のやることですか?」


 副キャプテンだった。副キャプテンはいつもの通りに、強気な態度で金髪の男と刺青の男の前に立ちはだかった。


「おい!無茶すんな!下がれ!」キャプテンが叫んだ。


「ヒュー!ちょー可愛い!俺このみ!俺この子にするわ!オバさんはもう良いよ!」


 刺青の男が、副キャプテンの前に進んだ。

その次の瞬間、副キャプテンは思い切りこの男にビンタをした。


 バシーン!と大きな音が響いた。


「あらー俺叩かれちゃった。いいねぇ!その強気!俺の好物!胸が熱くなっちゃうね」


 そう言い終わらないうちに、副キャプテンに対して思いっきりボディーブローを打った。


「うっ!」そう言って副キャプテンはお腹を抑えて膝をついた。


「おい!ふざけんな!やめろ!」キャプテンが叫ぶ!至るところで悲鳴が上がった。


「俺は気の強い、綺麗な女が苦しむ姿が大好きなんだよ。お前をボッコボコにして、ボロボロにしたらさぞ興奮するだろうなぁ。」


 刺青の男は、そう言うとにやりと笑い、副キャプテンを蹴り上げた。


「きゃ!」と短い悲鳴を上げて、副キャプテンは後ろに仰け反った。


 その瞬間、松崎が立ち上がりダッシュで刺青の男に突っ込んでいった。

僕も同じ思いだった。気がついたら、二人して刺青の男に殴りかかっていった。


 だが、刺青の男はさっと避けると、僕らに対してあっさりと殴りかかってきた。

もの凄いスピードのパンチが、いくつもん飛んできて僕も松崎も二人がかかりだったのに、あっという間にボコボコにされて、体育館に倒れてしまった。今日ほど、自分の実力のなさが悔しいと思ったことはない。


 倒れ込んでいる僕の横に金髪の男が立っていた。僕は金髪の男をやっとの思いで見上げた。男は僕に一瞥するとそのままサッカーボールを蹴るように、足を振り上げた。


 鈍い衝撃だったが、不思議と痛みはなかった。

パーンと頭の後ろの方で音が鳴ったように聞こえた。でも、次の瞬間には目の前が赤く染まった。上を向いていたハズの僕の体は、いつの間にか下を向いていた。


 痛みは無かったけど、誰かが何かを叫んでいた。

あれはさとみ先生かなぁ?キャプテンの声も聞こえるなぁ。でも何て言っているかわからないや。

女子生徒の悲鳴が聞こえる。何があったのだろう。


 あれ?おかしいな声が出ない、体が動かない。僕はどうしちゃったんだろう。そうだ。松崎に起こしてもらおう。確かとなりに来ていたはずだ。でも体が動かないや。どうしたら良いんだろう。


 あれ‥‥おかしいな‥‥


 おい、松崎‥僕をおこし‥‥て‥‥


 そして意識が無くなりかけた‥‥まさか‥このままなんてこと無いよな‥‥

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