招かれざる客
大会までもうあと1週間を切った。
僕たちはもう3年生最後の大会に向けてほぼ万全の状態だった。太っちょ先生は、大会にピークを合わせるように、一旦強度の高い練習から、軽めの調整練習に切り替えると言っていた。
この日は水曜日、つまり体育館でチアリーディング部と同じ練習時間の日だ。
放課後のこの時間は、部活が始まるまでの準備時間でもある。
早く着替えて、チア部の練習を横目に見ながらストレッチをする。
これが僕たちの最大の楽しみであり、密かなに日課であった。
体育館に近づくにつれて、胸の高まりはいつまでも変わらない。
季節はもう夏と言って良いだろう。暑さは決して気温だけではなかった。
ボクと松崎は競うように体育館に向かった。
だが、、なんだかいつもと様子が違う。
なんだか物々しいというか、チアリーディング部の女子たちが体育館の外で右往左往しているのだ。
僕と松崎の姿が見えると、同じクラスのサラが走ってきた。
「ケンジ君、松崎くん!ちょっと大変!」サラは慌てて駆け寄ってきた。
「どうした!?」僕らはサラに話を聞いた。
「体育館に卒業生だっていう人たちが‥‥」
僕と松崎は恐る恐る中を覗いた。
背の高い金髪の男
ジャラジャラチェーンをつけた男
スキンヘッドの男
サングラスをかけた男
見覚えがあった。
以前、学校で嫌がらせをしに来た4人組の卒業生だった。
こいつらのせいでおじいちゃん先生は入院する羽目になったのだ。
4人の男たちが体育館で勝手にバスケットボールをしていた。
「ぎゃははは!お前なかなかやるじゃん!」金髪の男が、スキンヘッドに言っている。
「あたりめーだよ!俺はバスケ部だっツーの」そう言うとスキンヘッドの男は、バスケットゴールに向けてシュートを放った。
周りで慌てふためく、女子生徒たちを完全に無視している。
なんだこれは!?
チア部の女子たちが、不良たちを恐れて何もできずにいた。
不良卒業生達は全く眼中にない様子で、勝手にバスケをしたりしている。
ちょうど目の前にいた女子生徒が邪魔に思ったのか、その女子生徒に向かって
「どけこら!!」と金髪の男が怒鳴りつけた。
怒鳴りつけられた女子生徒は思わず泣き出した。
僕らがあっけにとられていると、さとみ先生が現れた。
助かったという思いと、何もできなかった自分が不甲斐なかった。
「君たち!部外者は立ち入り禁止です!」と、さとみ先生が大きな声で言った。
「あらーせんせい!ひさぶりー!」とスキンヘッドの男はさとみ先生に向かって言った。
「!?」さとみ先生はどうやら誰だかわかったようだ。
「おいおい、部外者ったって、俺たちゃ卒業生だぜー」チェーン男は言った。
「可愛い後輩たちの様子を見に来ただけじゃん」とサングラスの男は言った。
「チアリーディング部って有名じゃん!応援だよ応援!」と言って金髪の男はさとみ先生に向かっていった。
「部活動の時間です!」さとみ先生は、構わずに言い返した。
隣にいたチアリーディング部のキャプテンが
「部活動の邪魔になるので、場所を空けてください。」
震え声で、チア部のキャプテンは卒業生に言った。
「あ?しらねーよ。関係ねーだろ!調子のんなよ!」スキンヘッドの男は突然怒鳴った。
チア部のキャプテンは、その怒鳴り声に同様し、下を向いてしまった。
「あなたたち何やっているの!!部外者は出て行きなさい!」さとみ先生はより大きい声で言った。
明るくて楽しくて、おまけに可愛い!だからみんなに大人気だ!男子だけじゃなくて、姐御肌の性格で女子からも人気の先生だ。
「おー!さとみちゃーん!!会いたかったぜー」
少し離れたところにいた金髪の男はさとみ先生に近づいた。
「なぁなぁ、デートしようぜ!」
金髪の男はさとみ先生にそう言って近づいた。
「馬鹿な事を言っていないで、早く帰りなさい!部活の時間です!」先生の凛とした声が体育館に響いた。
「おー、おっかねー。」笑いながら、卒業生の男たちは先生のまわりに集まってきた。
さすがの先生も、男4人に囲まれて嫌な思いだろう!
とても見ていられない。僕は悔しくて、下を向いた。
と、その時、隣にいたはずの松崎が、先生の横走っていった。
「あの!すみません!先輩方!これから僕ら部活の練習なんです!試合も近いので帰ってください!」松崎は震える声でそう叫んだ。
金髪の男は手を叩きながら、松崎のところに来た。
「オー!かっこいいなぁ!!お前!!やるじゃん!!」
「お前名前は?」
「松崎です。空手道部の2年です!」
「ふーん、空手部かぁ。俺も空手部だったんだよ。2年前!じゃあ、お前後輩じゃん!」
「そうなんですか!?」
松崎は無理やり笑顔を作って返した。
次の瞬間、金髪の男は突然松崎のみぞおちに膝を突き立てた!瞬間胸を抑えて倒れ込む松崎。
「おい!!しっかりしろ!!」
僕は松崎のところに走った。
「後輩なら後輩らしく、調子に乗るなよ!反吐が出る!」
そう言って金髪は松崎の頭を踏みつけた。
「何やってるの!」さとみ先生は、金髪の男を押しのけた。
松崎はうずくまったままだ。
「ヒーロー気取りか?そういうの一番ムカつくんだわ!二度と街歩けねえようにしてやろうか!」
金髪の男は松崎に対して怒鳴った。
僕は松崎の傍らにいて、金髪の男への怒りと恐怖で震えていた。
「さとみちゃーん。生意気な後輩しつけてるだけー」ヘラヘラと金髪の男は笑った。
「アナタたち!これ以上はもう警察を呼びますよ!今すぐこの場を去りなさい!」
スマートホンをかざしてさとみ先生は言った。
「おっと!それは無し無し!」チェーンの男が、さとみ先生にのスマホをいつの間にか取り上げた。
「返しなさい!」
「おっと嫌だねー。さとみタンの携帯みちゃおっかなー。彼氏とかいんのー?」
チェーンの男はさとみ先生の肩に手を回した。
「放しなさい!ふざけないで!」
「おおーおっかねー。あ、滑った!」
チェーンの男はスマホを落として、そのスマホを踏みつけた。
「何やってるの!やめなさい!」さとみ先生は怒りに震えていた。
「きゃああ!」少し離れた所から悲鳴が聞こえた。
チア部の女の子が、しゃがみこんだ。
「何やってるの!?」さとみ先生は叫んだ。
「何って、ちょっとおっぱい触っただけ。最近の中学生は発育がいいねぇ」
サングラスの男が、女子生徒にいたずらをしたようだ。
さとみ先生はダッシュで、サングラスの男の前に行くと、思い切りビンタをした。
「ふざけないで!謝りなさい!」
こんなに怒っているさとみ先生は見たことがない。
「おい、ふざけんなこのアマ!」
サングラスの男は、さとみ先生の髪の毛を掴むと振り回した。
さとみ先生は振り回されるままに、左右に体を振られて倒れた。
「あーあ、あいつ怒らせるからぁ」
金髪の男がニヤニヤしながら、みんなに聞こえるように言った。
「ねぇ、先生、もうさ、こうなったら今度これを収めるなら、裸になってよ」
金髪の男は、サングラスの男を軽く押さえながら、さとみ先生にニタニタしながら言った。
さとみ先生は、乱れた髪のまま、ふたりの男を睨みつけた。
「あーあー、そんな態度とっていいのかなぁ。中学生女子に興味ある奴がイタズラしちゃったりしてー。そうしたら先生のせいだね。」
チア部の女子は、この発言を聞いて恐れおののいた。
その時、体育館の入口から猛ダッシュでやってくる人がいた。
僕ら空手道部のキャプテンだった。
キャプテンは怒りの表情で、金髪の男の前に躍り出た。
「先輩、お久しぶりです」
今まで見たこともないほどの怒りの表情で、キャプテンは金髪の男に言った。




