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恋の応援団

 さとみ先生の存在を知ってからの太っちょ先生は、水曜日だけは早く学校に来るようになった。

といって、何をするでもなく遠目からさとみ先生を見ては、ため息をつくというのを繰り返した。


「キャプテン、人ってのはいくつになっても恋するんだな」


「は、はぁ。そうですね。」


キャプテンも流石に回答にキレがない。


「副キャプテン、女性の立場からどうしたらいいと思う?」


「そうやって遠目で見てても何も起こらないと思います。話しかければ良いじゃないですか。待っててもさとみ先生は来てくれないですよ」


副キャプテンは、冷静に冷たく言い放った。


「そうだよねぇ。でもさ、僕みたいなのが話しかけたら迷惑なんじゃ‥‥」


 そういって、太っちょ先生は物憂げな表情で体育館の外を見た。

そしてそのまま空手の指導そっちのけで、体育座りをして外を眺めていた。

イケメンがやるならサマに成るかもしれないが、太っちょ先生がやると違和感しかない。


「うわ‥‥。重症だな。あれは‥‥」


「てか30過ぎの大人が、中学生に恋愛相談するかね」


 ボクと松崎は、太っちょ先生を少々憐れみながらも、太っちょ先生がサラの事をなんとも思っていなことを改めて知り安心した。


 正直さとみ先生はかわいい。年上だからかわいいというのはちょっと変だが、相当な美人だと思う。

申し訳ないけど、太っちょ先生とはちょっと釣り合わない。


 太っちょ先生もそれを知っているから、遠くから眺めているだけなのだろうが、30過ぎの大人が、しかも100キロもあろうという巨漢(横に)が恋煩いとか、正直気味が悪かった。


「もう我慢できない!」


最初にぶち切れたのは、副キャプテンだった。


「おいおい!どうする気だ!?」


 キャプテンはじめ3年の先輩たちが、慌てて副キャプテンを止めに入る。

副キャプテンは、女子をまとめる立場だからか普段から割と強気な発言が多かったが、太っちょ先生とさとみ先生の件については、全く良く思っていなかったようだ。


「先生!!そうやってウジウジしてないで、話しかけたらいいじゃないですか!大の大人がみっともなくないですか!?」


「おい!言いすぎだろ!」


キャプテンが慌てて止めに入る。


「そんな事ないわ!先生のやってることは無駄です!空手家ならば、負けて打ちのめされたら、次に進めばいいじゃないですか!!それをそうやって、ふさぎ込んでいい年の男性のやることじゃないですよ!カッコ悪いですよ!」


副キャプテンは、太っちょ先生にガツンと言ってやった。


「うわぁ。俺あんなの言われたら立ち直れないわ」


普段ちょっとちゃらい渋谷先輩も青ざめて言った。


「しかも、失敗するのが既に前提になってるしな」


大崎先輩も渋い表情で、副キャプテンの発言を聞いていた。


「そ、そうだよね。わかった!!練習終わりに僕は行くぞ!さとみ先生に話しかけるぞ!!そうと決まれば、さあ今は練習だ!集中するぞ!」


「そうですよ!それでこそ先生です!私も応援しますよ!オー!」


副キャプテンは、満面の笑みで右手を高く上げた。


 ひょっとしたら、この人が一番やり手なのかもしれない。

僕はちょっと副キャプテンが怖かった。



 太っちょ先生の稽古は基本的に、実践的だった。

試合を意識した組手の練習とか、そういう練習ではなくて、如何に相手を倒すかという点にスポットが当たっていた。実践的な動き方や、戦うための動き方なので練習はいつも緊張感があった。


 相手の急所を突くとか、相手の体勢の崩し方や転ばせ方、フェイントなどがやたら多かった。

この練習は結局、最後の大会の時まで続くことになった。

 練習中の太っちょ先生は普通で、チアリーディング部の練習を気にしたりする素振りは見せなかった。

おかげで練習は充実したものになった。


 そんな中、練習の終盤にちょっとしたハプニングが起こった。

なんとさとみ先生が、空手道部の練習場所まで来たのだった。

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