しごと5
私達は外に出た。
建物の裏手の広い場所だが、中からは見えない死角の場所。
きっとターゲットは私が誰だか見抜いているからこその判断なのだろう。
夜風が心地よく吹いている。
「ティアス、お前はただのお嬢さんじゃないね?俺の勘が正しければ『暗黒兵器の少女』というやつだろ?」
「否定しません。世間一般では、そう呼ばれています。」
「殺し屋ということはキルト伯爵の命令できたのかな?」
「はい。キルト伯爵の命令により、娘のハルフ=キルトを殺した罪を償って貰います。」
「ははっ…それはいいけどさ、一応抗わせてもらうよ。」
ようやく、まともに向き合う。
ディスノイルはトンファーをかまえ、私は短剣をかまえる。
「来なよ、殺し屋。」
「言われなくとも、いきます。」
一呼吸おいて地面を蹴る。
一瞬刃を交えて距離をおき、また向き合う。
そんな攻防を繰り返す。
「やっぱり名ばかりじゃないね、『暗黒兵器の少女』ってのも。」
「ですが、次で終わりです。」
「それじゃ、俺なりに最後の足掻きをさせて貰おうかな。」
ディスノイルが正面からむかってくる。
振りおろされたトンファーを弾いて私が持っていた短剣で胸の中心を刺した。
するとディスノイルは脱力して、地面に膝をついた。
「さぁ、ティアス。指輪を持っていきな。」
ディスノイルが左手の小指にはめていた指輪を差し出したので、私は素直に受け取る。
「確かに受け取りました。ディスノイル、ひとつだけ聞いてもいいですか?」
「あぁ、いいぜ。」