ばけもの10
その瞬間、会場からブーイングがとんできた。
「ふざけんなよ!」
「俺達の楽しみとんなよ!」
「そーだ!化け物のくせに、いい者ぶってんじゃねーよ!」
次々と、「そーだ!」とか「化け物」とか罵声を浴びせてくる。
私は目を閉じて意識を集中させると、左足を思いっきり振り下ろす。
すると大きな音と共に地震が起きた様に揺れ、亀裂が入る。
「そんなことを言うのであれば不服ではありますがあなた方を相手にして差し上げます。さぁ、こちらへどうぞ?」
その言葉を聞くと一気に会場内が静まった。
私は優勝の証のバッジと賞金を受け取り、会場を後にした。
会場を後にし、酒場の裏の路地を歩いていた。
すると前からマントを被った2人組が歩いてきた。
私は足を止め、2人をみた。
「あなた方が依頼人ですか?」
2人がマントをとる。
右が私と歳がそんなに離れていないであろう男性で、左がおっとりした20代後半の女性だ。
「僕が依頼人で、彼女は殺られた仲間の妻だ。…大会、見たよ。見事だったね。」
「ですが、私は決勝に行くまでに2人、殺られ屋の方を……。」
「きっと、大会がなくなったことで皆報われるよ。君には辛い思いをさせたね。ごめん。」
「いえ、謝ってもらう必要はありません。約束のバッジと賞金です。ご確認下さい。」
バッジと賞金を男性に渡す。
「ティアスちゃん、ありがとう。依頼のためにあんな危険な大会に出てくれて。」
「問題ありません。私にとってはまだ準備体操程度です。」
何故、お礼を言われるんだろ…………。
私はただ、人を殺しただけなのに。
「解りません。私は大したことをしてません。」
「ティアスちゃんには当然と思えるかも知れないけど、私達にとってはとても嬉しいの。」
「僕達じゃできないことだからね。」
そうだった。
ここは強者が支配する世界。
服従の世界で反乱なんかすると、どんな目に逢うか…。




