第99話 終戦
「じゃあ3人とも。もうひと頑張り頼む」
「「ぴぴっ!」」
フェアリーとピクシーは了解と鳴き、ウィッチはコクンと頷く。
3人はそのまま集落へ向かっていく。
……元気だなぁ。
強敵だったゴブリンジェネラルは、下剋上スキルを持ったウィッチが倒した。
そのため、安全になったこの場所よりも集落に行ってゴブリンを殲滅してもらうことにした。
集落のナンバー2……戦力でいえば一番を倒したんだ。
ウィッチがいれば、下剋上スキルで残りの星4ゴブリンやキングすらも倒せるはずだ。
こうなってくると……一気に消化試合っぽくなる。
「シュート! まだ集落に星4は残っているし、ゴブリンだって300体くらい生き残っているんだから……シュートが油断しちゃ一気に逆転されちゃうよ」
俺の心の中を見透かされたかのようにナビ子が窘める。
確かにナビ子の言うとおりだ。
俺はパンっと両手で頬を叩き気合を入れ直す。
「確かにそうだな。悪い」
「だから引き続きシュートはレベル7に……」
そこでナビ子が止まる。
どうし……もしかして!?
「はははっもうレベル7になってた」
やっぱりか!?
「いつ!? 一体いつレベル7に!?」
それがあったらもっと早くゴブリンジェネラルを倒せてたんじゃないの!?
……いや、あの段階でレベル7になっても、誰を合成するのかも、誰と合成するのかも決まってなかったので、結局は使わなかったかもしれない。
「さっきまでは本当にレベル7じゃなかったから……あのゴブリンの分解でかなぁ?」
下剋上の時の分解か。
あれが最後の分解だったから、その可能性は高いな。
「誰か呼び戻して星4にしてみるか?」
ここに残っている中で、星4になれそうなのはいない。
「それ、絶対に後でラビットAが文句を言うから止めた方がいいよ」
まぁ星4筆頭がラビットAだからな。
だけど、ラビットAはクイーンビーの護衛も兼ねているから、戻ってこれない。
切羽詰まっている状況ならともかく、星4合成を試してみたいから……なんて理由で合成したら、後で何を言われるか……。
「ちなみにラビットAは活躍してるのか?」
集落のことはピンチになった仲間の回収くらいで、詳細は聞いてない。
さっきの話だと、半分以上は倒しているみたいだけど実際はどうなんだろう?
「ラビットAはクイーンビーを守りつつ、星4を3体も倒してるよ」
おおっマジか。3体はスゲーな。
これはますます無下には出来ない。
「他の古参も1体ずつは倒しているから……帰ってきたらみんなを誉めてあげないとね」
みんな頑張ってるんだな。
ちゃんと労ってやらないといけないな。
「とりあえず星4に関しては保留で。もうないとは思うけど、ヤバそうになったら解禁しよう」
「うん。アタイもその方がいいと思う」
そういうわけで、引き続きこの場所で状況を見守ることにした。
****
「シュート。キングが動いたよ」
「ようやく動いたか」
いつ動くかと思ったけど……生き残ったゴブリンが残り100体を割ったところで無理と悟ったようだ。
「やっぱり裏からコソッと逃げる気だね」
ゴブリンキングのスキルは強力だが、戦闘能力はゴブリン並み。
だから生き残るために逃げると思っていた。
だけど、ナビ子がいる限り逃げることなんて不可能。
どれだけ隠れていても、常に居場所を察知し続ける。
「向かわせるのはウィッチでいい?」
「まぁウィッチしかいないだろうな」
正直誰でも勝てるんだろうけど、ここは過去に集落を追いやられたウチのゴブリン達に任せたい。
本当なら、ウチのゴブリンのリーダーであるホブAが相応しいんだろうけど、ウィッチ以外のゴブリンではゴブリンキングに勝てないからな。
ちょっとウィッチを優遇しすぎるかもと思わなくもないが、下剋上スキルがひとつしかないから仕方ない。
「シュートが倒せば、意思を持ったキングが生まれるかもよ?」
確かにそうだけど……
「俺はキングはモンスターカードにするつもりがないよ」
「えっそうなの!?」
ナビ子が驚く。
そんなに驚くことかな?
「ああ、それだけじゃなくゴブリンジェネラルやゴブリンガーディアンもモンスターカードにするつもりはない」
もしモンスターカードにするのなら、さっき倒したゴブリンジェネラルをモンスターカードにして集落の応援に行かせている。
「どうして?」
「どうしてって……いきなり強カードを手に入れるよりも、自分で作りたいだろ?」
もし上限解放がもっと先だったら……星4と星5を手に入れる術がないので、モンスターカードにしたかもしれない。
でも今は合成で作れる。
それなら自分で星4や星5を作りたい。
そっちの方が、複数の個別スキルを習得しやすいし、何より今まで一緒に戦ってきた愛着もある。
「それにウチにはすでにリーダーがいるだろ? トップは2人もいらないよ」
ウチは実力主義でもあるが、基本的には年功序列っぽいからな。
そのリーダーや古参連中を差し置いて、星4とか星5はいらない。
まぁゴブリン以外の種族なら話は違ったけどね。
「だから、キングが欲しくなったら、そのうちホブAがキングになるよ」
その場合は弱いゴブリンキングじゃなくて、きっとゴブリンジェネラルのように強いゴブリンキングになる気がする。
「うん! アタイもそっちの方がいいと思うよ!」
やっぱりナビ子も一緒に旅した仲間の方がいいようだ。
「だけど……登録のために、キングを見に行こうか」
その時のために、キングのレシピは手に入れないといけない。
後は……ゴブリンジェネラル以外の星4や星3のゴブリンも図鑑登録しないと。
流石にここまでゴブリンが減って、ゴブリンキングも逃走したら負けることはないだろう。
俺達はここを引き払って、集落へ向かうことにした。




