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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第2章 冒険者登録
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第97話 ゴブリンジェネラル

 ――現れたのは3メートルはありそうな巨大なゴブリンジェネラル。


 あんなんもう小鬼(ゴブリン)じゃなくて大鬼(オーガ)じゃないか!?


 ゴブリンジェネラルが俺たちを見つけると、大きく息を吸い込み……怒号が響き渡る。


 その声を聞いた瞬間、金縛りにあったかのように、身体が動かなくなる。

 なんとか動こうとするが、手足がすくみ、思うように動かせない。


 ――怖い。


 本能的にそう感じた。

 あんな化け物……今まで見たことない。

 勝てるわけがない!!


 ゴブリンジェネラルと目が合う。

 ゴブリンジェネラルがニヤリ……と不気味な笑みを浮かべる。


「ひっ!?」


 俺は小さく悲鳴をあげてその場にへたりこむ。


 ――死ぬ。

 もうその言葉しか頭に浮かんでこなかった。


「シュート!! 何でアンタが威圧のスキルに引っ掛かってるのよ!! ちゃんとスキル妨害を使いなさい!」


 すぐ近くにいるはずのナビ子の声が、はるか遠くからのように聞こえる。


 ――威圧?

 これが威圧のスキルなのか?

 あれっ? スキル妨害ってどうやって発動するんだっけ?

 分からない。何も分からない。


「てぇーい! ナビ子キーック!!」


 突然ガツンと頭に強い衝撃を受け倒れる。

 何が起こった?


「さっさと目を覚ましなさい!!」


 ……はっ!?

 俺はガバっと起き上がる。

 ……動ける。


「ほら! 急いでスキル妨害を発動する!」

「あ、ああ」


 ナビ子に言われるままにスキル妨害を発動させる。


 ――震えはもうない。


「まったく……いいこと。威圧はね、同種族の下位種には絶対に効くけど、他の種族には自分の方が強いって思わせなくちゃ効かないの。だから本来ならシュートが負けるって思わなかったら効かないんだからね」


「……すまん」


 返す言葉もない。

 俺はあの見た目と声で完全にビビっていた。

 くそっこれじゃあ役に立つどころか足手まといじゃないか。


「別に凹まなくていいから、それよりも早くウィッチを元に戻してよ!」


「えっああ!」


 見ると、ウィッチも俺と同じように威圧で動けなくなっていた。

 俺は急いでウィッチに返還(リターン)を使い、カードに戻す。

 一旦カードに戻れば状態異常はすぐに治るので、すぐさま解放(リリース)

 これでいつものウィッチに戻った。


「ウィッチだけは同じゴブリン種だから絶対に威圧が効いちゃうの。だから、シュートのスキル妨害でウィッチを守ってあげて。そうすれば威圧は効かないから」


「分かった」


 スキル妨害は対象を選べるので、ウィッチにもスキル妨害を使う。

 本当なら他のゴブリンにもまとめてスキル妨害を使いたいが、今の俺の力量ではウィッチだけで手一杯だ。


「ウィッチ。大丈夫そうならフェアリーたちを手伝って! ちょっと押されてる。次! 蜂22の回収!」


 俺がヘタっている間に、フェアリーとピクシーがゴブリンジェネラルと取り巻きゴブリン相手に戦っていた。

 ゴブリンジェネラルが振り回している大剣を2人は上手に避けているが、2人の魔法もゴブリンジェネラルには効いていない。

 多分ゴブリンジェネラルを倒すには、ゴブリンガーディアンを倒した時のように、サフォケイトの魔法しかないだろう。

 だが星3の魔法は詠唱に時間がかかる。

 その余裕がフェアリーにはない。


「ウィッチはまず威圧で取り巻きゴブリンの無効化を。その後でピクシーと協力してジェネラルの足止めをしてフェアリーの時間を稼ぐの。できる?」


 ウィッチがうなずく。

 やはりナビ子もサフォケイトしかないと思っているようだ。


「シュートは気をしっかり持ってね。シュートが威圧にやられちゃうと、ウィッチまでやられちゃうんだからね!」


「分かってる! もうヘタレない!」


「その調子で気をしっかり持ってね! そうしたら相手のスキルブレイクも効かないから!」


 そっか。

 ゴブリンジェネラルはスキルブレイクを持っていたのか。

 だから解除してないスキル妨害が突破されて威圧を受けてしまったと。

 まぁ全ては俺がビビったからなんだが。

 俺さえ気をしっかり持てば威圧もスキルブレイクも大丈夫のようだ。

 ウィッチには今までずっと助けられてきたから今度は俺が守るんだ。


「あっ、次デスタラ2とヒューラビ!」


 ついに遊撃隊にまで被害がおよび始めたか。

 集落の方も追い込まれているようだ。

 早くこっちを片付けて応援を送らないと……


 フェアリー達の側にやってきたウィッチが杖を振り回しながら威圧を使う。

 ジェネラル以外のゴブリンが次々と膝をつく。


「ゴガアアア!!」


 ジェネラルが負けじと威圧を使うが、スキル妨害が効いているようで、ウィッチは少し怯むがなんとか持ちこたえる。


「ぴぴっ!」


 そこにピクシーが暗闇の霧を発生させるダークミストを唱え、ゴブリンジェネラルを覆い尽くす。


「ゴァ!?」


 この魔法は相手の視界を隠すだけで、特別な霧ではないが、時間稼ぎになる。

 取り巻きゴブリンが動けなく、ゴブリンジェネラルの足止めをしている内になんとかサフォケイトを……


「フェアリー危ない!!」


 ナビ子が叫ぶ。

 動けないと思っていたゴブリンの1体が、突然立ち上がってフェアリーに襲いかかる。

 完全に油断していたフェアリーは、避けることが出来ずにゴブリンの渾身の一撃が直撃する。


「っ!? リター……」


 慌ててフェアリーを回収を試みるが……既に死んでいたようで、俺が唱えるよりも早くフェアリーが消え、カードに戻ってきた。


「くそがぁ!」


 俺はフェアリーを殺したゴブリンを睨み付ける。

 ゴブリンは少し怯んだように後退り……この場から逃げようとする。


「シュート!! あのゴブリンだけは絶対に逃さないで!!」


 ナビ子に言われるまでもない。

 絶対にあのゴブリンだけは逃さない。

 あのゴブリンに一番近いのはウィッチとピクシーだが、2人は他の取り巻きゴブリンとゴブリンジェネラルを抑えるので手一杯で、あの場から動けない。


 だから俺が行く!


解放(リリース)


 俺は急いで1枚のカードを解放(リリース)する。

 敵は数十m先、今から追いかけても、先に森の中に逃げられる。

 俺はこの場所から大きく離れることは出来ない。

 集落のカード回収もそうだが、50m以上離れてナビ子が消えてしまうのが一番の困る。

 だから逃げられないようにする!


「トレント! 足止めを頼む!」


 俺が叫ばなくても既にやることを理解していたようで、樹木の枝がゴブリンの退路を断つ。

 ウチのトレントは戦う力がなくても、植物を操るスキルを持っている。


 その間に俺は残りのカードを解放(リリース)する。

 ファイアリザードにポイズンリザード、ハードワームにブラッドワーム。

 そしてレッドボアだ。


「お前らはピクシーとウィッチのサポート。どちらも絶対に死なせるな!!」


 これ以上の犠牲は絶対に出せない。


「シュート! 50m以上離れないでね!」


「分かってる!」


 逃げようとしたゴブリンはいきなり木が阻んで立ち往生している。

 俺はナビ子との距離に気をつけながらベレッタを構え……撃った。

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