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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第2章 冒険者登録
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第94話 招かれざる客

 さて、俺も戦いの準備を開始しよう。


 今回の戦い、俺の役割は後方サポートだ。

 ……うん、いつも通りだな。


 ただ今回は数の差があるから、うまく立ち回らないと、全滅するおそれがある。

 そこで俺は数の差をなくすようなサポートをする。


 とりあえず個室を召喚。

 ベッドも机も全てカードにしているので、何もない空っぽの部屋だ。

 まず最初に床に8等分になるように、マジックで線を引く。

 この線はカードに戻せば修復効果で消えるので問題ない。


 8等分にした後は、それぞれの区画に番号を振る。

 この区画は、それぞれの部隊の区画だ。

 戦闘4部隊と回収部隊と遊撃隊で6区画分。

 それから俺の近くで護衛をする部隊が1区画。

 後の1区画は非常用になっている。


 まずは第1区画部分であるラビット部隊を召喚する。

 召喚したモンスターは、ナビ子の元へ向かってもらう。

 ナビ子の作戦会議が終わり次第、リーダーと一緒に割り当てられた場所で待機することになるだろう。


 そして残ったブランクカードに番号を書く。

 この番号は、必ず召喚した順番で番号を振らなければならない。

 この番号は今回の戦いの勝敗を左右するからな。

 もし順番を間違えたら、大変なことになる。


 でも……くそぅ。

 自分のコレクションに文字を書くなんて、コレクターとしてあるまじき行為だ。

 ただ、この行為は今回の作戦上どうしても欠かせない。

 ナビ子が言うには部屋同様、カードのマジックの跡や、傷なんかもちゃんと元通りになるらしい。

 だから……本当に嫌だが、なんとか我慢できた。


 番号を書いたカードは、重ならないように床に置いていく。

 1区画分が全て埋まったら、部隊のカードが残っていても、次の部隊に移る。

 同じように、召喚と番号振り、そしてカードを並べる。


 部屋に敷き詰められたカードを見る。

 ……これだけ見ると、カルタのようにしか見えない。

 まぁ似たようなものか。


 単純作業だが、1枚ずつ召喚と番号書きとなると、結構時間がかかる。

 床一面に番号が振られたカードを並べ終わったのは、1時間以上経った後だった。


 最後にこの作戦の中核を担うクイーンビーを召喚する。

 彼女の感覚共有のスキルがなければ、この作戦は成功しない。

 彼女にはラビットAにピッタリと付いてもらう。

 そして、俺達の指示を感覚共有で聞いて、ラビットAに伝える。

 カードモンスター同士は種族が違っても、意思疏通できるらしいから、現場との連絡役になってもらうことにした。


 よし、これで準備完了だな。

 一旦ナビ子のところに戻ろう。


「ナビ子。こっちは終わったぞ」


「こっちも準備万端だよ!」


 ナビ子の方も準備が完了しているようで、側にはラビットAとクイーンビーしか残っていなかった。


「もう既に各自指定の場所にいるよ」


 さすが仕事が早いな。


「……見つからないかな?」


 全員集落の近くに待機してるってことは、ゴブリンに見つかる可能性が高いってことだ。


「それは大丈夫。各リーダーに覚えさせたジャミングがちゃんと効果を発揮してるみたい」


 今回、リーダー達にはジャミングのスキルを覚えさせた。

 ジャミングは対象の範囲を探知や察知に引っ掛からないようにするスキル。

 妨害スキルは対象を選ぶが、ジャミングは範囲指定で範囲内にいれば、どれだけいても一気に守ることができる。

 しかも、探知や察知のみに関しては妨害スキルよりも性能が上。

 なにより星2なので比較的安価で作れる。

 デメリットの指定範囲から動けなくなるも、待機中ならデメリットでも何でもない。


 だからもし見つかることがあれば、それは直接見られることだけ。

 それも対策済みらしい。

 本当に今回のナビ子は頼りになる。


「集落からは死角になってるし、巡回ゴブリンのルートからも外れているからね。バッチリだよ!」


 巡回ゴブリンとは定期的に集落から出て、周囲の見張りをしているゴブリンで、上位種もいる。

 この巡回ゴブリンは、偵察ゴブリンと違って敵を見ると襲いかかってくる。

 集落を守るために巡回しているんだから、襲いかかるのは当然といえば当然だ。


 もちろん偵察ゴブリン同様、巡回ゴブリンを殺してもキングには分かってしまう。

 それどころか、巡回ゴブリンが倒された方が集落に危険があると思われ、行動を起こすかもしれない。

 かといって、偵察ゴブリンのように足止めするわけにもいかない。

 巡回ゴブリンは数時間で集落に戻るため、戻らなくても怪しまれる。

 幸い俺にはナビ子がいたので、巡回ゴブリンに見つからないようにここまで来ることが出来た。


「巡回ゴブリンは基本おんなじルートを通って、探知スキルに引っ掛かると調べるんだよ」


 だからジャミングで妨害してルートを外れていれば見つからないらしい。


「後はシュートが合図したら、いつでも開戦できるよ」


 俺の合図で戦いが始まる。

 だが、今すぐに合図はしない。


「とりあえず、この状態で限界まで粘るか」


 大丈夫といっても、見つかる可能性は残されているし、待機中の仲間達にも負担がかかる。

 準備ができたなら早めに仕掛けた方がいいのは分かっているが、やはり時間ギリギリまでレベル7になることを諦めたくはない。

 俺は申し訳ない気持ちになりながらもレベル上げを再開した。



 ****


「ねぇシュート。レベル7になるまで後どれくらい掛かりそう?」


 あれから1時間くらいしてナビ子が尋ねる。


「……それは俺の方が聞きたいんだが?」


 俺は回数なんて数えていない。

 いや、最初は数えていたんだが、すぐに分からなくなってしまった。

 だからレベル7になればナビ子が教えてくれるはずだったんだが……

 多分もうそろそろのはずだよな?


「……まだレベル7にはなってないね」


 ナビ子が残念そうに言う。

 やっぱりまだなのか。


「ごめんシュート。緊急事態」


「……何があった?」


 俺は分解の手を止める。

 ナビ子が緊急事態と言うんだからただ事じゃない。

 もしかしてゴブリン側にバレた!?


「あのね。今、冒険者がゴブリンと戦ってるの」


「はぁっ!?」


 予想外の答えに、俺は慌てて集落を見る。

 ……集落に変化はない。


「集落じゃなくて、もうちょっと麓の方。巡回ゴブリンと戦ってるの」


 ……マジか。

 くそっ冒険者が来るのが早すぎる。

 予定ではまだ数日は大丈夫だと思ったのだが……

 おそらく本隊が来るまでの間に集落の場所を確かめようとする先鋒隊だろう。

 元々ギルマスが調査を依頼しようとしていた冒険者がいるはずだから、それかもしれない。

 だとすれば依頼よりも早く準備をしていた可能性があるから、早くてもおかしくない。


「この位置からだと遠くて気づくのが遅れちゃった。……ここを選んだアタイのミスだね。ごめん」


「いや、ナビ子が謝る必要はない」


 ここが待機に最適なのは事実だから、ナビ子は間違っていない。

 むしろ、それだけ離れていても気づいたことを誉めるべきだ。


「それで……冒険者の方はどうなんだ?」


「うん。ちょっと遠くて判断つかないけど、多分6人いるよ」


 6人か……1グループってことだろう。


「それで……ゴブリンとの戦いはどうなんだ?」


「うん。相手はゴブリンガードとホブ2体とノーマルゴブリンが7体。ゴブリンガードには少し手間取ってるけど、普通に戦えてるよ」


 ――――

 ゴブリンガード

 レア度:☆☆☆

 固有スキル:威圧、身体強化、自己治癒


 非常に頑丈になったゴブリン。

 まるでトロルのような回復力を持っており、多少の怪我ならすぐに治ってしまう。

 このゴブリンと戦う場合は高火力で一気に片付けてしまいたい。

 ――――


 ウチにも1体いるし、今回のゴブリン隊のリーダーに任命しているから分かるが、本当に頑丈だ。

 自己再生じゃなくて自己治癒だから部位欠損は回復しないが、多少の傷ならあっという間に回復する。

 斬り落とすくらいのことをしなければ、物理攻撃で倒すのは至難の業だろう。

 高レベルの魔法で一気に倒すしかない。


 苦戦しているようだが、負けそうじゃないのなら一安心だ。

 もし負けそうなら助けに行く必要があった。


「それで……どうする?」


 どうする……か。

 助けに行く必要はなさそうだが、問題はその後だ。


「もし冒険者の方が勝ったらどうなると思う?」


「そりゃあ……このまま先に進むだろうね」


 だよなぁ。

 大怪我をしたならともかく、苦戦しても普通に勝てるなら調査を続行するよな。

 そうなると、俺達の邪魔にしかならない。


「キングの方は?」


 キングは建物の中にいるようで、俺は様子をうかがえない。


「すでにゴブリンがやられちゃってるからね。当然気づいているみたい」


 やっぱりゴブリンが死んだら気づくか。


「今ね、星4ゴブリンと話をしているみたい。たぶん様子を見に行かせるつもりなのかな」


 少なくとも今すぐ全軍出撃って状況ではないようだ。

 だが、今までよりも警備は強化されるに違いない。

 ったく。本当に余計なことをしてくれるよ。

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