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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第2章 冒険者登録
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第90話 ホブAの話

 宿に戻ると、いつもよりも騒がしかった。

 どうやらここにも緊急依頼の件は既に伝わっているようだ。


「あっシュートさん。お帰りなさい」


 俺を見かけたサフランが忙しそうにしながらも駆け寄ってくる。


「ドタバタしてすいません。実は……」


「緊急依頼の件だろ?」


「あっやっぱりご存じでしたか。と言いますか、朝のアザレアさんの用事ってもしかして……」


「アザレアさんが来たことは知ってるんですね」


「そりゃあ、いくら知り合いでも、あんな時間に許可なく通したりはせませんよ」


「ってことは、アザレアさんはサフランを叩き起こして部屋までやって来たのか」


 緊急事態だったとはいえ、迷惑かけちゃったな。


「いえ、既に朝の準備中だったので、それは問題なかったんですが……」


「朝の準備中って……だって、夜も日が変わるまで働いてるんでしょ? それなのに、そんな朝から……ちょっと働きすぎなんじゃ?」


 ブラック過ぎるだろ。

 宿の仕事って、そんなに忙しいのか。


「ふふっ別に毎日じゃありませんよ。昨日は……ほら、3人でお祝いする予定だったので、午後からお休みを頂いてたんです。その代わりですよ」


 あっ一応休みはもらえるんだ。

 ……でも、休んでくれてたのはちょっと申し訳ないな。

 あれっ? でも、昨日働いてなかった?

 ……多分、中止になったからとかそんな理由だろうな。


「中止になって申し訳ない」


 俺が悪いわけではないが、申し訳ない気になる。


「いいえ! シュートさんが悪い訳じゃありませんから。それに……アザレアさんだって、大変だったでしょうから」


 まぁ今の冒険者の状況を見れば大変なのは一目瞭然だな。


「もしかして、シュートさんも依頼に参加されるんですか?」


 サフランが不安そうに尋ねる。

 朝呼び出されたのは間違いなくこのことなのは明白だからな。


「いやいや、昨日冒険者になった俺が行っても足手まといになるだけだから、参加しないよ」


 俺がそう言うと、サフランが胸を撫で下ろす。

 うん、いい子だ。


「実は俺が村長から預かってた手紙に、今回の緊急依頼にちょっとだけ関係があってね。それで呼び出されたの」


「そうでしたか。ちょっとだけ安心しました」


「まぁこんな感じだから、依頼も受けられずに帰ってきたんだよ。これから部屋でナビ子と作戦会議」


「作戦会議?」


「依頼が受けられないんじゃ、別の方法でお金稼ぎしなくちゃ。このままじゃ来月にはサフランに宿を追い出されちゃう」


「もぅ! 私は追い出したりしませんよ!」


 サフランが怒って頬を膨らせる。


「ははっ冗談だよ。でも、作戦会議は本当かな。もしかしたらサフランにもお願いしたいことがあるから、暇ができたらでいいから、部屋に来てほしいんだけど……難しいかな?」


 この様子じゃ厳しいかもしれない。


「多分、休憩がもらえるのは、お昼過ぎになっちゃうと思いますが……」


「全然大丈夫だよ。じゃあこれ以上邪魔しちゃ悪いし、俺は戻るね」


 いつまでも話していると申し訳ないと思い、俺は部屋に戻った。



 ****


「ねぇシュート。何で依頼を受けないの? あれじゃあアザレアが可哀想だよ」


 部屋に戻るなりナビ子に責められる。

 ナビ子までそんなことを言うのか。


「その話は後だ。まずはホブAから話を聞こう」


 依頼の話よりも、ホブAに真実を聞かなくてはいけない。

 もしこれでホブAがキングなんていないと言ったら全てが解決するんだが……


 一応、いきなり扉が開かれてもいいように、死角になる場所にホブAを召喚する。

 先程の話を思い浮かべながら召喚したので、ホブAにも事情は分かっているはずだ。


「さてホブA。さっきの話……キングの話とホブA達が追いやられたのは事実か?」

「ゴブ」


 あっさり頷く。

 やはり簡単に解決……とはいかないか。


「何故それを最初に説明しなかった?」

「ゴブッガッ! ゴゴブ」


 ホブAはなにやら必死に訴えるが、もちろん俺には理解できない。


「シュート。多分説明したけど、シュートが理解できなかっただけだと思うよ」


 ……まぁ何となく分かってたけどさ。

 でも、聞きたくなるってもんじゃないか。

 ただ、それでホブAを責めるのはお門違いだ。

 俺はホブAに謝罪してもう少し詳しく話を聞くことにした。

 ……もちろん二択でだが。

 ゴブリン語の習得も考えたが、やはり言語翻訳のレベルが5になるまで待ちたかった。

 まぁ今回聞きたいことは、二択でも問題ないことばかりだ。



 ****


「――やっぱり時間はないか」


 詳しく話を聞いたが、ホブA達はやはり追い出されたゴブリンだった。

 そして俺に殺される前までは、キングのスキルの支配下にあったらしい。

 キングが行動を起こすまで、あの山で大人しく過ごし、キングの号令とともにバランの村へ攻める予定だったとのこと。

 

 今は一度死んだことで、完全に支配からは抜け出しているとのこと。

 だが、ゴブリンである以上、同族支配や威圧のスキル自体は有効のため、スキルを発動されたらまた支配されてしまうらしい。

 まぁ支配も状態異常の一種らしいので、それはカードに戻せば支配から抜け出せるようだが……近づくことができないので、戦うのは厳しそうだ。


 同じく、現ホブAよりも上位種――星4が最低25体はいるはずだから、そのゴブリンに勝つことも難しい。

 その25体とキングはゴブリン以外の戦力で勝たなくてはならない。


 だが、逆も然り。

 ホブA達がいるから、ホブゴブリン以下のゴブリンは何体いても敵ではない。


 ……よし。

 敵の星2以下のゴブリンは、ウチのゴブリンと一部のモンスターでなんとかする。

 そして星3ゴブリン25体と星4ゴブリン25体、それから星5であろうキングをホブA達抜きで倒してしまえばいいだけの話だ。


 ウチの戦力はラビットAを始め、星3の古参軍団。


「……かなり厳しい戦いになるな」


 数でもレア度でも負けている。

 正直勝てるかどうか。

 だが、ウチの子達はただの星3ではない。

 魔法やスキルを装備させれば、決して勝てない相手ではないはずだ。


「……ねぇシュート。シュートは依頼を受けないんだよね? 何を悩んでいるの?」


 ナビ子が不思議がって尋ねる。


「依頼は受けないけど、戦わないとは言ってないぞ。俺はソロでキングを倒しに行くつもりだ」


 というか、ナビ子なら言わなくても分かると思うんだが……


「えええっ!? なんでなんで? ひとりだと危険じゃない? ……そうまでしてぼっちがいいの?」


 またぼっちって言う。

 ったく、ソロだと何回言えば分かるんだ。


「それともアザレアやギルマスに言ったみたいに、周りとのコミュニケーションが不安なの? そりゃあシュートが人見知りなのは知ってるけどさ……」


 コイツ……さっきから俺をディスりまくってないか?


「お前なぁ……ちゃんと依頼の内容を理解しているのか? 別に周りとか関係なく、依頼の内容が問題なんだ」


「依頼の内容? 別に悪くなかったと思うけど」


「まぁ普通の冒険者ならな。でも俺は違う。だって……依頼を受けたら、魔石が手に入らないんだぞ!」


 依頼を受ければ命の危険は少ないかもしれない。

 ギルマスやアザレアへの信頼も上がるかもしれない。

 だがそれで手に入るのは経験値やお金だけ。

 素材や魔石は全てギルドのもの。


 それじゃあ何の意味もないじゃないか!!


「せっかく大量の素材や魔石を手に入れるチャンスなんだぞ! しかも、レア度の高いゴブリンだ。手に入れなくちゃ……勿体ないだろ?」


 最低でも星3ゴブリンが25体、星4が25体、星5が1体手に入るチャンスなんだ。

 その魔石を逃すなんて……コレクターの風上にもおけない。


 俺の力説にナビ子が口をあんぐりと開けて固まる。


「お~いナビ子。理解できたか?」


「はっ!? あまりの衝撃に情報処理が追いつかなかったわ」


 どうやら驚きすぎて処理落ちしていたらしい。


「でもでも~勿体ないって言ってもさ。この間のゴブリン戦とはわけが違うよ。今回ばっかりは本気でヤバいよ!」


「それは分かってる。だけど……どれだけヤバくてもコレクションのためなら行くしかないだろ?」


「……はぁ。シュートって、本当にコレクションのことになるとバカになるね」


 ナビ子が呆れたようにため息をつく。

 失礼極まりないが……それは俺も自覚してるからなぁ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ストーリーの流れのために主人公がアホにされているように感じるというか、合理性に欠ける判断に感じる。緊急以来だと魔石が手に入らないから依頼を断るのは理解できるが、サマナーの性質上理由は正…
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