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第9話 家捜し

 ナビ子の提案でチュートリアルという名の探索を開始した。

 まずは手始めにこの部屋のベッド、タンス、机をカードにする。


 ――――

 ベッド【家具】レア度:なし


 異界の寝床。

 低反発マットレスで快適な睡眠を約束する。

 ベッドの下にエッチな本が隠されていることもある。

 ――――


 ――――

 タンス【家具】レア度:なし


 異界の衣装箪笥。

 ごく稀に拳銃やへそくりが隠されている。

 ――――


 ――――

 机【家具】レア度:なし


 異界の机。

 引き出しの中にタイムマシンはない。

 ――――


 どうやらこの家の物は全て異界のアイテムとして登録されているようだ。

 この世界の家具と違いはあるのだろうか?

 というか……


「なぁナビ子。このカードの説明文って誰が考えているんだ?」


 この説明文……明らかに狙っているよな?

 タイムマシンのネタとか、この世界の人には絶対に通じない。

 まぁこの説明文が読めるのはカード化スキルを持っている俺だけだから、そういった小ネタに走っているのかもしれないが。

 因みに当然のことだが、へそくりもエッチな本もタイムマシンもなかった。


「異界シリーズは運営が書いているよ。異界シリーズ以外は……誰だろうねぇ?」


 異界シリーズだけ運営か。

 そしてそれ以外は秘密……と。

 ナビ子の含んだ表情から、知らないってよりは教えないって感じだな。

 これも冒険して自分で調べろってことだろう。


「それにしても、タンスの中の物とかは表示されないんだな」


 タンスの中には洋服や下着、机には筆記用具があったが、それらは図鑑に表示されなかった。

 もちろん別々に【カード化】することは可能で図鑑にも登録された。

 つまりタンスの中の服など全て個別にカードにする必要がある。

 少し面倒だが、図鑑のためなら苦ではない。

 というより、このスキルがあればタンスや鞄など収納に関するものが必要ない。

 図鑑がソートできるから、どこに片付けたか分からなくなる心配もない。

 うん、タンスや鞄などの収納アイテムは完全にコレクションとしてしか価値がないんだな。


 そしてタンスやベッドをカードにすると、その場所にカードが隠されていた。


 ――――

 火【素材】レア度:なし


 合成用の特別な火。

 このカードは合成しても無くならない。

 ――――


 ――――

 水【素材】レア度:なし


 合成用の特別な水。

 このカードは合成しても無くならない。

 ――――


 ――――

 合成カード【素材】レア度:なし


 合成用のブランクカード。

 このカードは合成しても無くならない。

 ――――


「なぁナビ子。このカードは何だ?」


「なんだって……書いてある通りだよ。普通合成したら元のカードは無くなっちゃうんだけど、その3枚は合成しても無くならない特別製の。ただし合成以外には使えないけどね」


「使えないってことは……解放(リリース)出来ないってこと?」


「うん。多分合成を始めたら分かるんだけど、水や火って意外と用途が多いんだ。で、水はこの家の水道からいくらでも出るし、火もコンロがあるからね。そこから毎回カードにして……を繰り返すと面倒だから、特別に無くならないカードにしたの。ただ、普通の火と水だからね。上質な水や特別な火が欲しかったら別に用意してね」


 水はナビ子の例でもあったように、ポーションのような回復系のアイテムに欠かせないんだろうな。

 火は……何に使うんだろ? 料理かな?

 俺は日本では一人暮らしだったけど、基本コンビニ飯で自炊なんて殆どしてなかったから、料理なんて出来ない。

 肉と火を合成して焼肉……とかなら便利でいいんだけどな。


 まぁこの2枚はとりあえず問題ない。

 だが、もう1枚は全く意味が分からなかった。


「ナビ子。この合成カードは何に使うんだ?」


 ブランクカードってなってるけど……


「合成って、カードが2枚必要なの。だから1枚のカードしか使わない時にそのカードを使用するんだよ」


「……意味が分からない」


 合成なのに1枚しか使わない?


「簡単な例を出すと、合成を使って果汁100%のリンゴジュースを作りたい。それって使うカードはリンゴだけよね? 水入れたら果汁100%じゃなくなるでしょ?」


「ミキサーのカードとかを使うんじゃないのか?」


「そんなことしたらリンゴ型のミキサーが誕生しちゃうわよ!」


 そっか、あくまで合成だから、ミキサーを使うんじゃなくて、ミキサーと合体しちゃうんだ。

 なら……果汁100%のリンゴジュースの素材はリンゴだけ……と。


「だからリンゴと合成カードを使うの。これを使えばリンゴだけで合成できるからね」


「……それって合成ってよりも、加工なんじゃね?」


 一体何をもって合成といっているのか?


「細かいことはいいのよ! どうせ1枚しか使わないのは限られているんだから!!」


「要するに限られているから別々にしたくなかったってことだな」


 単純に運営が加工と分けるのを面倒くさがっただけだ。


「何? 文句を言うなら使わなくても良いわよ」


「……誰も使わないなんて言ってないだろ」


 実際便利そうだから使わないことはない。


「しかし……火や水もそうだけど、こんな便利カードがあるなら隠さないで普通に渡してくれればいいのに」


 俺がベッドやタンスを変化(チェンジ)しなかったら手に入らなかったカードだ。


「ヒントはあげたんだから、それくらいは見つけてくれないと……ね!」


 あっそうか。

 忘れていたけど今はチュートリアルだった。

 要するにこれはチュートリアルをスキップするなって運営の意思だ。

 それにナビ子もヒントを伝えてくれていたし……

 そもそも目の前のアイテムをカードにしなかったら、コレクター失格だな。


 それならば……俺は気合いを入れ直し、部屋の外――家中をくまなく探索した。

明日はお昼ごろの投稿になります。

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