第86話 登録・短縮・分解②
「次はレベル5の説明だな。クールタイム短縮ってことは、そのままの意味なのか?」
普通に判断すると、損傷したカードの回復が早まるってことだと思うけど。
ベレッタの弾は1発1時間必要だったけど……
「そうだよ。半分に短縮されるの」
半分も短縮されるのか!
ってことは弾の回復に30分で……いやいや、それよりもだ。
「もしかして、アンブロシアは1日3個じゃなくて、6個取れるってこと?」
半日で3個ってことでいいよな。
「そうなるね」
マジかよ。
いやぁ、どうりで24時間経ってないと思わしき日でも、ちゃんと復活してると思ったよ。
「それから1日に1回の制限つきだけど、【修復】って言ってね。クールタイムを無視して回復できるの」
「えっ? それって、アンブロシアを収穫した後で修復をすれば、すぐにまた収穫できるってこと?」
「そうだよ。他にも銃の弾や死んじゃったモンスターも元気になるよ」
そっか。
死んだモンスターも1日経たないと復活しなかったのが、半日になってるのか。
しかも1回だけすぐに復活できるのか。
ボスクラスの敵と戦うときに役に立ちそうだな。
「あっこの1日って、使ってから24時間ってことね」
朝にリセットじゃなくて、最後に修復を使ってから24時間か。
リセットならギリギリで使って2回連続……なんてことも出来そうだったけど、ちゃんと24時間なら、使う時間を考えないと、いざというときに使えないってなりそうだな。
「クールタイム短縮に関してはこれくらいかな。次はレベル6、分解だね」
いよいよ分解か。
これはレベル1の時から、ずっと待ち望んでいた能力だ。
「分解はね、簡単に言うと合成の逆。元のカードから、2枚以上の別のカードに分けることができるの」
「分かりやすいところだと、モンスターの死体だよな?」
「そうだね。ホーンラビットの死体なら、魔石とお肉と角と尻尾の4枚のカードに分けられるの」
ちゃんと解体素材が全部手に入るようだ。
まぁそうでなくちゃ、全く使えないスキルになってしまう。
「これで解体作業ともおさらば出来るってわけか」
いやぁ解体は精神的にも時間的にも本当に辛かった。
まぁ最近はウィッチ達に任せっきりだったけど。
でも、これでようやく解放される。
「ただね……ひとつだけ問題があるの。この分解は、全て普通の解体になっちゃうんだ。だから、上質なお肉とかは自分で解体しないと手に入らないよ」
……そう上手くはいかないらしい。
自分で解体すると、上質、普通、粗悪の3パターンに分かれるが、分解では全て普通になるのか。
失敗がないのは良いことだけど、図鑑登録のためには、結局自分でも解体は続けないと駄目ってことか。
「まぁそれくらいはデメリットでもないよ」
それでも今までよりも十分楽になるのは間違いない。
「でね、分解にはまだ能力があってね。魔石を解体すると、モンスターが所持していた全部のスキルが手に入るよ」
「えええ! それってスキル変化の完全上位互換じゃん」
そんなん解体どころの騒ぎじゃないって!
「完全に上位互換ってわけでもないよ。ほら、変化はスキルを持ってない場合は別のスキルが手に入るけど、これは手に入らないもん」
……でもさ、基本的にどのモンスターもスキルは持っているから、それってゴブリン語専用になるんじゃ?
「それ以外の違いは?」
「それは……ないけどさ」
うん、やっぱり上位互換だな。
くそ~、こんな能力があると分かっていたら、スキルカードにするのを待ったのになぁ。
まぁ悔やんでも仕方がない。
それよりも、今後は登録でスキルを確認して、いいスキル持ちなら分解してスキルを手に入れることになりそうだ。
確かにナビ子が言ったように、登録と分解の相性はかなりいいな。
「それから分解にはもうひとつ能力があるんだけど……」
あっ、まだあるんだ。
でも、ナビ子の歯切れが悪い。
なんとなく言いにくそうだ。
「あのね。魔石だけじゃなくてね、現時点でモンスターになっているカードも分解できちゃうの。そしてね、モンスター状態で分解すると、素材とスキルと魔法と……全部手に入っちゃうんだ」
「えっ、それってつまり……」
さっき魔石から分解すればスキルカードが全部手に入ってお得とか考えていたけど、一旦モンスターカードにしてから分解すると、素材まで手に入って更にお得ってことか。
「だから……例えばユニコーンのカードに分解を使えば、まだ手に入れてないユニコーンの素材や、光の覚醒のスキル、それに一度使っちゃった妨害スキルも全部手に入っちゃうの」
合成で進化したモンスターは元の素材は何もない。
だけど、分解すれば手に入れることが出来るってことか。
……ナビ子が言いにくそうにしていた理由はこれか。
「もちろんモンスターカードは無くなっちゃうんだけど……」
「ナビ子。確かにそれが一番効率がいい集め方かもしれないけど……それを俺が使うことはないよ」
これがただのゲームなら、効率のいいやり方でプレイしただろう。
だけど、ここはゲームの世界じゃないし、カードモンスターだって実在する。
ナビ子はカードモンスターはもう死んでデータみたいなものと言っていたが、ラビットAやホブA、俺が倒してないユニコーンやウィッチだって、ただのデータとは思えない。
俺には生きている――家族と同じようなものだ。
その家族を俺のエゴでもう一度殺すなんてできるはずがない!
仮に最初からスキルカードにするつもりだったとしてもだ。
コレクションのために、もう一度命を吹き込んで、すぐに殺すなんて、そんなの命に対して……いや、コレクター魂の冒涜でしかない。
だから俺は、たとえどんなに欲しいスキルがあったとしても、一点物の貴重な素材があろうとも、絶対にその能力だけは使うことがないだろう。




