第85話 登録・短縮・分解①
サフランと別れて俺は、急いで部屋に戻り、冒険者カードを確認する。
手紙のことも気になるが、悩んでいてもどうしようもない。
それよりはカード化のスキルだ。
「……やっぱりレベル6だ」
再度確認したが、やっぱりレベル6だった。
この期に及んで冒険者カードのミスってこともないだろう。
一体いつの間に……
「ナビ子。どういうことだ?」
ナビ子は最初から知っていたはずだ。
「どういうことって、条件を満たしたからレベルが上がったんだよ」
「条件って……俺はレベル4もレベル5も何もしてないぞ」
「その2つは、レベル4になったと同時に条件を満たしちゃったんだよ」
レベル4になると同時に条件を満たした?
確かレベル4は登録。
レベル5がクールタイム短縮だったよな。
「どんな条件だったんだ?」
「レベル5へは登録100回で、レベル6はカードの修復回数100回だよ」
この回数は、レベルが上がってからではなく、過去のも累積になるらしい。
そういうことならレベル6は分かる。
「レベル4の登録ってのはどういう能力なんだ?」
俺は100回どころか1回も使った記憶はない。
「登録はね。シュートがまだカードにしてない物を図鑑に登録する能力だよ」
「はぁ? 俺がカード化してない物を登録?」
ますます記憶にない。
「そう、試しにスキル図鑑を開いてみてよ」
俺は言われたようにスキル図鑑を開く。
「図鑑の右上に所持、未所持のボタンがあるから、未所持に選択してみて」
……本当にある。こんなボタンあったっけ?
それともレベル4になってから、新しく出来たのか?
少なくとも、この間ラビットAに妨害スキルを覚えさせたときは気づかなかった。
……俺の目って節穴かも。
俺は言われたとおり所持から未所持に変更する。
すると図鑑の表示が一斉に変化した。
表示されたスキルはカード化に言語翻訳、脱兎や女王の器など。
俺やカードモンスター達が所持しているが、スキルカードになっていないカードだ。
「カードモンスターが持っているスキルで持ってなかったのは自動的に登録されるの」
そういうことだったのか。
それなら、確かに100はあるかもしれない。
あれっ? 俺ってカードモンスター扱いなの!?
……まぁ自分のスキルだから登録されているだけかもしれないな。
チラリと確認するが……観察眼とか鑑定のスキルはない。
やっぱり他の人のスキルは登録されないんだな。
俺はカード化の詳細を調べてみる。
「……あれ? 出ないぞ」
いつもならスキル名やレア度、スキルの説明文が表示されるのだが、そこにはカード化スキルの名前しか表示されなかった。
「詳しい詳細は、実際に手に入らないと見ることができないの」
「じゃあ名前が登録されるだけってことか?」
なんだ。じゃあ名前だけが登録されるってだけか。
リスト代わりにはちょうどいいけど、少し肩すかしの能力だな。
「ううん。名前だけじゃなく、合成方法も載るんだよ」
「なぬ!」
合成方法が載るってことは、目当ての合成がやりやすくなるってことだ。
「でもカード化は表示されてないみたいだけど?」
「当たり前だよ! カード化スキルが合成で手に入ると思ってんの? 合成で作れるカードだけが表示されるの」
……やっぱりカード化は合成では手に入らないのか。
なら、他のスキルで確かめてみよう。
……女王の器とかどうかな?
俺は女王の器を選択する。
――――
女王の器
????×????
――――
「あの~ナビ子さん。これはどういうことでしょうか?」
「あのね。まだ図鑑に登録されてないスキルは不明ってことだね」
つかえねー!!
結局何も分からないってことじゃんか。
「……これ意味あんの?」
「あっまた役に立たないとか思ってるんでしょ。じゃあ……ユニコーンが持っていた光の覚醒をみてみなよ」
俺は言われたように光の覚醒スキルを確認する。
――――
光の覚醒
光の素質×レア度3以上の光魔法
光の素質×光の素質
……
――――
「ねっ。こうやって持っているもの同士ならちゃんと表示されるんだよ。それからこのレア度3以上のような不特定多数の物は、持ってなくてもこうやってちゃんと表示されるの」
それでも光の素質が登録されてないと表示されないらしいが。
でもこれは分かりやすくていいな。
図鑑埋めが捗りそうだ。
「なんか続きがありそうなんだけど?」
リストの下に『……』がある。
だが選択はできない。
「その2つ以外にも合成方法はあるってことだよ。だけど、さっきみたいに登録がないから表示されてないの」
女王の器は全て不明だったから、あのように表記されたけど、今回は合成方法が分かるから、可能部分だけ表示され、分からないのは省略された。
省略された部分は……多分光の素養辺りだろう。
光の素質スキルは持っているモンスターがいるけど、光の素養は誰も持っていないから、登録されてないからな。
「しかし……これって登録できるのはスキルだけ?」
モンスターカードが持っているスキルが登録されるのなら、他の……アイテムなどは関係ない能力なのか?
「じゃあ次はモンスター図鑑を確認して!」
言われた通りスキル図鑑を閉じてモンスター図鑑を取り出す。
モンスター図鑑には何もないだろうに。
「……おっリザードマンがある」
――――
リザードマン
水属性トカゲ系モンスター×人型モンスター
――――
もちろん俺はリザードマンを持っていない。
リザードマンを見たのはついさっき。
実技試験の時だけだ。
「登録はね。シュートが登録したいって物が対象になるんだ」
確かあの時の俺はリザードマンのレシピや生息地が分かればいいと思ってた。
あれで登録したいってことになったのか。
レシピは……トカゲ系モンスターと人型モンスターか。
これって今でも作れるんじゃね?
トカゲ系は残念トカゲのファイアリザードとポイズンリザードがいる。
人型はゴブリンでいいだろ。
と思ったけど、水属性のトカゲ系モンスターか。
ウチの残念トカゲは名前通り炎属性だもんな。
今さら変更は……出来ないよなぁ。
ポイズンリザードの方も水じゃないし……水属性の魔法を覚えさせたらいけるかな?
「今回はシュートはリザードマンを知っていたから何も思わないかもしれないけど、実はシュートの知らないモンスターもちゃんと登録できるんだ。だから、名前だけだけど、鑑定スキルの代わりみたいなこともできるよ」
あっそれは便利だな。
たとえ知らないモンスターでも名前さえ分かれば、毒持ちや魔法が使えるかなど、どんなモンスターか分かる場合が多い。
それにモンスターだけじゃなく、道具や武器にも使えそうだ。
いや、むしろそっちがメインかもしれない。
うん、確かに鑑定スキルっぽい役割が出来そうだ。
これは……ますますカード化スキルのチートに磨きがかかってしまったな。
「ただし、見て確認が出来るのは、物やモンスターだけ。その人やモンスターが持っているスキルや魔法までは見ただけじゃ確認できないよ」
あ~、やっぱりそこまで万能ではな……ん?
「見ただけじゃって言った? ってことは他の方法で見ることができる?」
「鋭いね。スキルや魔法はその人に直接触って、知りたいって思えば知ることができるよ」
なるほど、遠くからは無理でも触ればいけるってことか。
「じゃあアザレアさんのスキルも分かるのか?」
「やっぱり気になるんだ?」
ったく、ニヤニヤしやがって。
「違うっての。観察眼のスキルは是が非でも登録したいだろ」
もしそれでレシピが分かれば、俺も観察眼のスキルを手に入っることが出来るかもしれない。
「それで……触るって、どこでもいいの?」
「いったいどこを触る気だったのかなぁ?」
お前はどこのエロ親父だよ。
以前から思っていたが、恋愛話になるとナビ子はちょっとウザいよな。
「いや、そんな冗談はいいから教えてくれよ」
「んもぅ、シュートったらノリが悪いなぁ。触る場所はどこでもいいよ。でも、人差し指でちょんっとかは駄目だよ。手のひらでしっかりと触らないと」
手のひらでしっかりとか。
「握手とかでも大丈夫?」
「うん。握手とか、頭を撫でるとか、肩を叩くとかでも大丈夫だよ」
「ちなみにスキルを見られたことって相手にバレたりは……」
「レア度5の妨害系スキルを持っていたらバレるかもね」
ってことは、少なくともレベル4までの妨害スキルならバレないってことか。
これはカード化スキルがレア度5ってことなのかな?
まぁ星5のスキルなんて持っている人なんかいないだろうから、心配する必要はないな。
「あと……これがシュートには一番大事かもしれないけど、魔石を調べると、その魔石のモンスターが持っていたスキルも分かるの」
「えええっ!? マジかよ」
それが本当なら、モンスター化させる前に調べて有用なスキルを持っているか確認することができる。
「メチャクチャ便利な能力じゃないか」
「でしょでしょ。でもね……登録の本当の真価は、レベル6の分解との組み合わせだよ」
なるほど。分解はレベル6だったのか。
早くその能力を知りたいけど、その前にレベル5だな。




