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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第2章 冒険者登録
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第75話 フレンチトーストの秘密

「それで、わたくしは協力者として具体的に何をすればよろしいのでしょうか?」


 気を取り直したアザレアさんが尋ねる。


「アザレアさんに頼みたいことは、情報提供と資金調達ですね。情報提供は主に珍しいアイテムやモンスターの情報。資金調達は俺が手に入れたアイテムを仕入れ先を明かさずに売却してくれることです」


「それだけでよろしいのですか?」


 おおっ。なんだか頼もしいな。


「そうですね。後は……たまに相談とか……あと、アザレアさんの研究成果とか、ギルドの内情とかも教えてくれると助かります」


 この人のスキルや魔法の知識は俺にも絶対に役に立つはずだ。


「かしこまりました。それで報酬の方は……」


「協力毎にひとつ質問に答えるってことでどうでしょうか?」


「今まとめて先払いというわけには……」


「駄目に決まってます」


 絶対に言うと思ったけど、案の定だ。


「でも……今回は試験の答えを持ってきてくれたので、とりあえずひとつは質問に答えますよ」


「むぅひとつだけですか。ケチケチせずに3つくらい教えてくれてもよろしくないですか?」


 ……うぜぇ。

 これを毎回言われることになると考えると、見直ししたくなるな。


「というか、そもそも具体的に何が聞きたいのですか?」


「そうですね……さしあたって、特に聞きたいことはナビ子様の正体と、フレンチトーストと、召喚スキルに関してでしょうか」


 ナビ子の正体と召喚スキルに関しては分からなくもないが……フレンチトーストがそんなに優先度が高いの?


「なぜそこまでしてフレンチトーストを?」


「フレンチトーストが私の観察眼で読み取れなかったからです」


「……どういう意味でしょうか?」


 その話は純粋に興味がある。


「わたくしの観察眼で料理を確認すると、その料理名が記されます。ですが、フレンチトーストは妨害スキルが発動したような感じで、何も分かりませんでした」


 ふむ。どういうことだ?

 俺は別にフレンチトーストに妨害スキルなんか使ってないぞ。


 料理は食べる前に解除(リセット)するので、カード化も関係ないはず。

 合成で作ったからか?

 ……他の合成で作ったもので確認してみるか。


「すいませんアザレアさん。これをちょっと確認してもらえませんか?」


 俺は鞄からポーションを取り出す。


「……一般的なローポーションですね」


 ふむ。合成で作っても関係ないのか。

 じゃあなんでフレンチトーストだけ?

 もしかしたら料理が駄目なのか?

 それとも……もしかしてフレンチのせいか!?

 この世界の意味じゃないから……って、それは関係ないよな。


「他に読み取れなかった物ってあります?」


 もし本当にフレンチトーストだけが読み取れなかったのだとしたら、その可能性も否定できなくはない。


「実は……ナビ子様と、フレンチトーストに使われていたジャム。それから皿も読み取れませんでした。あの場で読み取れたのは蜂蜜だけですね。その蜂蜜も非常に上質な蜂蜜でしたが」


 ふむ。

 ジャムも駄目と。

 ジャムはこの世界でもあるのに読み取れないのなら、単語は関係ないな。

 じゃあ食べ物が……ってことになるが、蜂蜜は読み取れたと言っていた。

 そして皿が駄目ってことは……何となく分かった。

 異界シリーズが駄目なんだ。

 ジャムとフレンチトーストは異界の食材だけど、蜂蜜はハニービー達やスイートアピスが集めてくれたもので異界シリーズではない。


 ――――

 ハニービー

 レア度:☆☆

 固有スキル:蜜集め、栄養士


 キラービーの亜種。

 戦闘能力やマヒ能力を全て捨て蜜集めのみに特化した。

 ハニービーが集めた蜜は栄養満点らしい。

 ――――

 ――――

 スイートアピス

 レア度:☆☆☆

 固有スキル:蜜集め、栄養士、浄化付与


 ハニービーの上位個体。

 スイートアピスの集めた蜜は回復や解毒作用があり、万能薬の素材としても重宝される。

 ――――


 アザレアさんも上質だと言っていたが、本当に美味しい蜂蜜だ。

 だが、単品として食べるにはちょっとキツイから、合成で蜂蜜酒にするくらいにしか活用してなかった。

 でも、今後はデザートにも活用することになるだろう。


 とにかく、観察眼が動作しなかった理由はわかった。


「理由が分かりました。実はナビ子は少し特殊な場所の生まれでして……フレンチトーストに使われてた食材や皿なんかは、そこから持ってきたものなんですよ。だから読み取れないんじゃないかと」


 特殊な場所……日本。

 皿や食材も日本。

 うん、嘘はついていない。

 というか……あれっ?

 俺にスキルは効くんだ。俺は異界扱いじゃないってこと?

 よく分からないから、後でナビ子に聞いてみよう。


「そっその特殊な場所とは!?」


 アザレアさんが鼻息を荒くして身を乗り出す。

 美人が台無しだ。


「流石にそれは……俺のことは話せても、これに関しては俺の一存で話していい内容じゃないですから」


「むぅ……知りたいですが、これで妖精の国と確執を作るわけにはまいりません」


 どうやらアザレアさんは特殊な場所を妖精の国と勘違いしたようだ。

 そっちの方が都合がいいから指摘しないけどね。


「ではナビ子様のことは何も教えていただけないということでしょうか?」


「そうですね……教えられるのはナビ子は電子妖精って種族ってことくらいでしょうか」


 これはナビ子がいつも言ってるし、嘘をつけないからちゃんと言った方がいい。


「電子妖精……聞いたことのない種族ですね」


 そりゃあそうだろう。


「アタイの種族は数が少ないし、こっちに来てないからね。知らないのは当然だよ」


 ぎりぎり嘘にならない範囲でナビ子が答える。

 そういえば、早ければそろそろ新しい人がこっちに来る頃じゃないか?


「本当はナビ子様のことも詳しく聞きたいですが、残念です」


「すいません。だけど……答えられないことはあるけど、それも踏まえて正直に答えるから」


「仕方がありません。ということは召喚についても聞けないということですか」


「えっ? 何でそこで召喚が関係あるんです?」


「何故って……ナビ子様は契約してシュート様が召喚されたのでしょう。それとも召喚とは違う……テイマーということでしょうか?」


 あれを召喚って言っていいのか?

 それからテイマーは初めて聞くが、魔物使いのことだな。

 なんて答えればいいんだ?


「……そういえば、シュート様は冒険者の常識を知りませんでしたね。職業の話を言っても分かりませんか」


 アザレアさんが何かを察したように言う。


「だから勉強したいって言ったんですよ。そもそも俺はどんな職業があるかすら知らないんですから」


「……では、一体何の職業で冒険者になるおつもりだったので?」


「本当はそれも相談したかったんです。俺って何の職業になればいいですか?」

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