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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第2章 冒険者登録
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第70話 宿へ

 部屋でのやりとりを終え、アサレアさんの案内で宿へと向かう。

 宿は冒険者支援ギルドからすぐ近くにある、大きいが少し古めの宿屋。

 説明にあったギルド指定の宿屋で、冒険者が格安で泊まれるらしい。

 そして宿の半分が、教習所に通う生徒の寮代わりになっている。


 もちろん宿屋だから一般の人も泊まれるが、その場合は通常の金額となる。

 そのため、利用者の大半が寮生と冒険者となる。

 中には寮生に勉強を教える親切な冒険者もいるとのこと。

 とりあえず、敵を作らないように愛想だけはよくしておこうかな。


「あれぇ。アザレアさん? 珍しいですね。どうしたんですか?」


 宿屋に入ると、アザレアさんが店員から声をかけられる。

 年は……今の俺と同じくらいか?

 三つ編みで元気が取り柄って感じの女の子だ。


「サフランさんこんにちは。実はこちらの宿に泊めて頂きたい方をお連れしたのですが……」


 サフランと呼ばれた子が俺をチラリと見る。


「あっもしかして、新しい寮生ですか?」


「ええ。ですが、この方は正式に寮生というわけではありませんので、一般客の部屋でお願いします」


「えっ? 一般客の部屋にですか?」


 なんか驚かれている気がするんだが……寮生と一般の部屋って違うのかな?


「ええ。彼の分お支払いはわたくしが持ちますので……」


 アザレアさんがとんでもないことを言い出した。


「いやいやいや! それは悪いです。ちゃんと俺が自分で払いますよ」


 そっか。寮ならギルドが肩代わりしてくれるけど、一般客の部屋だと通常の金額を払わないといけないんだ。


「一泊銀貨2枚。朝晩2食付きなら銀貨1枚追加。3日間過ごすとなると、それなりの金額になりますが?」


 1日銀貨2枚か……二千円ってことを考えると、そこまで高くない。

 というか、むしろ安い。

 バランの村の村長に貰った金額が金貨2枚で、入市税が銀貨1枚、それ以外に使ってないから……うん、十分余裕がある。


「ええ。ちゃんと払えますから、問題ありません」


「……そうですか。それならばシュート様が支払えばいいと思います」


 ……なんだろう。アザレアさんが残念そうにしている。

 どうせ自分が支払って貸しを作ろうとでも思っていたに違いない。


「ではサフランさん。シュート様をスイートルームに……」

「違うから!! 普通の部屋でいいですから!!」


 ったく、本当に何を考えているんだか。

 というか、アザレアさんのせいで彼女がどうして良いか分からなくて、困っているじゃないか。


「あっそうでした! 今この宿屋は一般客室が満室でスイートルームか寮生の部屋しか空いておりませんでした」


 アザレアさんがわざとらしく言う。


「それ……嘘ですよね」


 なんでアザレアさんがそんなこと知っているのかと。

 ってか、アザレアさんの唇がキラキラと光る。

 看破スキルが発動した証拠だ。

 つまり今口から発した言葉が嘘だと言うことだ。

 だけど……そんなの発動しなくても嘘と分かるっての!

 というか、看破のスキルは何気に初めて発動したんだけど……初めてがこんなんなのかよ!!


「あら、嘘だなんて……この宿に失礼じゃありませんか?」


「えっ!? あっごめん。別に変な意味じゃなくて……アザレアさんがそんな事知ってるわけないってことで」


 目の前に従業員がいるのに満室が嘘ってのは確かに失礼すぎた。

 というか、悪いのは全部アザレアさんじゃねーか!


「いえ……この宿が繁盛してないのは事実ですから……」


 うわ~すごい気まずい。


「あ~あ、これはもう責任をとってスイートルームに泊まるしかありませんね」


「……ちなみにスイートルームはいくら?」


「1泊銀貨5枚、食事込みで銀貨6枚ですね」


 つまり3日間で金貨1枚と銀貨8枚。……ほぼ全財産じゃねーか!

 しかし、ここで断ればまたアザレアさんが自分が払うと言い出すに決まっている。


「……じゃあ食事なしのスイートルームで」


 折衷案として、食事なしのスイートに泊まることにした。

 これなら銀貨3枚は浮く。


「あらっ、宜しかったらお食事代はわたくしが出しましょうか?」


 やっぱり自分が払うことを狙っていたか。


「違います。お金が足らないんじゃなくて、まだ消化しなくちゃいけない食材が残ってるんです」


 ここで弱みは見せられない。


「ちっ残念ですね」


 ついに舌打ちをしやがった。


「まぁそういうことらしいんで……よろしくお願いします」


「い、いや。そんなに無理をしなくても……」


 うん、この子はアザレアさんと違って正常だな。


「サフランさん。気にしなくてもよろしいですよ」


 ……何故それをアザレアさんが言うのか。


「はっ、はぁ。分かりました」


 そしてサフランさんも分かるって……はぁ、もう泊まれれば何でも良いや。


「ではシュート様。本日はこれで失礼させていただきます」


「あっ、色々とやらかしてくれましたけど、とりあえず助かったのは事実ですので……ありがとうございました」


 最後に色々ぶっこんでくれたけど、やることやってくれたのは事実だ。


「こちらこそ……少々弄ばれてしまいましたが、貴重な体験をさせていただきました」

「もてあそ……!?」


「だから人聞きの悪いことを言わないでください。サフランさんが引いてるじゃないですか」


 アザレアさんの言葉にめちゃくちゃ戸惑ってるじゃないか。

 というか、俺……今からこの子がいる宿に泊まるんだけど!?


「シュート様。サフランさんに手を出したら許しませんからね」


「いや、出さないし」


 俺を何だと思っているんだ。


「サフランさん。シュート様は宿のお客様ですが、敬う必要はありませんからね。適当にあしらうとよろしいかと。後セクハラには気を付けてください。ああ見えて女性には見境がなさそうですから。それから、わたくしがいなくなると、わたくしのことを根掘り葉掘り聞くはずですので、一切答えては駄目です。よろしいですか?」


 随分と失礼なことを言われている気がする。

 ……やっぱり乙女の部分を根に持ってるのかな?


「はっはい。よろしいです」


 サフランさんが頷く。

 ……多分ほとんど理解してなくて、反射的に頷いているだけだろうな。


「シュート様もサフランさんにわたくしのことを聞くのは契約違反ですからね」


「……分かっていますよ」


 契約なんかした覚えはない。

 だけど……バレたら絶対に俺の秘密を話すまで許してくれそうもないな。


「明日の朝、お迎えに上がりますから……寝ていたら優しく起こして差し上げますよ」


「心配しなくても早起きだから大丈夫です」


 美人に起こしてもらうのは男の夢のひとつでもあるが……この人に起こされるとろくなことにならないだろう。


「サフランさんに手を出したかどうかは、明日の朝、確認いたしますので……」


「だからしませんってば……」


「それからそれから……」


 まだ何か言い足りないのか、アザレアさんが必死に言葉を探す。


「ないならもう帰ってください。アザレアさんだって忙しいんでしょ」


「むぅ……仕方がないですね。それでは失礼いたします」


 アザレアさんは深々と頭を下げるとギルドの方へ戻っていった。

 ちょっとおふざけが過ぎるけど、やはり根っこのところは真面目な人みたいだ。


 そして後に残される俺とサフランさん。


「アザレアさんがあんな冗談を言うなんて……」


 驚いた表情を浮かべながら俺を見る。

 ものすごく聞きたそうな目をしている

 どうやらアザレアさんがかき乱してくれたせいで、俺への追求は避けられそうになさそうだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 70話まで読んだ感想です ここまで読んで主人公が賢いという印象は皆無だったので、ギルドでの会話が一撃ドロップアウトするほどに気持ち悪く感じてしまいました。 なんていうか、痛い。最高に痛い文章…
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