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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第2章 冒険者登録
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第65話 冒険者ギルド

 辺境最大の街ライラネート。

 この帝国内で、帝都バルバラート、エルギオーネ、サブカナートに続く四番目の大きな街で、帝国四大都市と呼ばれている。


 ただ四大都市といっても、この中でライラネートだけは辺境都市。

 他の三大都市とは明確な差があった。


 分かりやすく日本に例えると、他の三大都市が、東京、京都、大阪だとすれば、ライラネートは福岡。

 都市の大きさでは負けていないが、他の三大都市との距離がライラネートだけかけ離れている。

 そのため、残りの三大都市が魔導列車で繋がっているにもかかわらず、ライラネートだけ魔導列車が通っていない。

 それでも辺境中の人や物が集まるから、決して三大都市に劣っていないそうだ。


 そして俺は今、実際にライラネートの街にいるわけだが……確かに驚くほどデカい街だ。


 まず、この街は東西南北の四つのエリアに分かれている。

 それぞれエリア毎に正門があり、エリアの統治者がいるそうだ。

 一応、エリア間で自由に移動は可能だそうだが、冒険者ギルドや商業ギルドなど、主要な施設は各エリアにあるらしい。

 要するに、この街は四つの中規模の街が合わさった街だといえる。


 俺は西の正門から入ったようで、ここは西エリアだそうだ。

 そのため、とりあえず現在地から一番近い、西エリアの冒険者ギルドへ行くことにした。

 もし問題があれば、別のエリアのギルドへ向かうことにしよう。


 しかし……ナビ子から話を聞いてなかったら、本当にどうしていいか分からなかったな。

 今だって、冒険者ギルドへの道案内をしてくれてるし。

 目立つから旅のしおりに戻れ……とは言えないなぁ。



 ****


「いらっしゃいませ」


 冒険者ギルドへ入ると、女性のギルド職員に声を掛けられる。

 とはいっても俺にだけ……ではないが。


 入口のすぐ横に総合案内と書かれた場所に二人の女性ギルド職員がいた。

 どうやらギルドに入ってきた人に挨拶をしているようだ。

 さしずめ受付嬢ってとこか。

 ……二人ともかなり美人だな。


 冒険者ギルドの内部に関しては、ナビ子も知らなかったので事前知識はない。

 ナビ子は運営がモニタリングで得た知識しかないから、建物の内部などの細かい情報は得られてないようだ。


 そのため、冒険者になるには試験を受けることは分かっていても、試験の内容などはさっぱりだ。

 とりあえず、試験とか詳しい話を聞きたいから、受付嬢に話を聞いてもいいんだが……その前に、とりあえず少し中の様子を探ってみたいので、そのままスルーして中に入る。


 ギルドの中は……見渡す限りの人、人、人。

 昼間なのに、かなりの賑わいを見せていた。


「なんか……すごいね」


「ああ……すごいけど、なんか違う」


 そう。この光景は俺の思い描いていたギルドの風景とは全く違っていた。


「何が違うの?」


「何というか……俺が思っていた冒険者ギルドは、もっとこう活気があって……」


「十分活気があると思うけど?」


「いや、こういう活気じゃなくてさ……簡単に言うと、こんなに事務的な感じじゃないんだよ」


 さっきの総合案内所もそうだし、目の前に見える窓口。

 依頼窓口、更新窓口、買取窓口、相談窓口、試験・入学窓口と用途に分かれてズラッと並んでいる。

 そして窓口の前には番号札。

 冒険者と思われる人々は、その番号札を持って正面の椅子に座って待っている。

 そして番号を呼ばれた人が窓口へ向かう。


 確かに冒険者は多く、話し声もそこら中から聞こえて活気があるといえる。

 だけど……これじゃあ、ただの役所か銀行にしかみえない。


 冒険者ギルドって、こういうのじゃないと思う。


「じゃあシュートはどんな感じを想像してたの?」


「そりゃあ……冒険者が依頼ボードに詰め寄って、依頼の取り合いをしたり、酒場と一体化してて、どんちゃん騒ぎをしていたり……そしてお約束が発生するんだ」


「お約束?」


「そう。俺みたいな目立っている奴に絡んでくる冒険者さ」


 妖精なんて連れて生意気だ。俺たちが代わりに飼ってやろうってな感じだろう。

 そして返り討ちにあって、ざまぁ的な展開までがお約束だ。

 ちなみに、もしそうなってもいいように、ギルドに入る前に、サイレントビーのカードを手元に隠してあった。

 もし絡まれたら、すぐに召喚して返り討ちにするつもりだったんだが……だけど、こんなお役所みたいな場所ならお約束の展開はないかな。


 ゾワッ!?

 そう思っていると、突然、全身が総毛立つような悪寒を感じる。

 体がブルルッと震え……こんなことは初めてだ。


「ちょっどうしたのシュート?」


 ナビ子が心配そうに覗き込む。

 ……もう何も感じない。

 あの一瞬だけだったようだ。


「……分からない。一瞬だけ寒気というか、視線というか、殺気というか……何かを感じたんだ」


 感じたことのない感覚だったから、あれが何か分からない。

 俺は出処を探ろうと、辺りを見渡す。

 数人こっちを見ている冒険者がいるが、特におかしな点は見当たらない。

 こっちを見ている理由は、もちろんナビ子がいるからだ。

 もしかして、ナビ子を狙おうとした冒険者が一瞬だけ殺気を放ったとかか?


「どうかなさったのですか?」


 背後から女性の声が聞こえた。

 振り返ると……そこには総合案内所にいたギルド職員の一人が立っていた。


「えっあっその……」


 俺は思わず口吃る。

 多分、俺の行動が不審だったから声を掛けたのだろう。


 年は20代中頃、眼鏡を掛けていて、かなりの美人だが、ちょっときつめの顔つき。

 まさに仕事ができそうなキャリアウーマンって印象だ。

 知的なクールビューティー……正直ちょっと好みかも。


「失礼いたしました。お客様がお困りのようでしたので、お声を掛けさせていただきました。何かお探しのようでしたが……」


「いえ、大したことじゃないです」


 まさか変な悪寒を感じたとは言えない。


「左様でございますか。実は失礼ながら、そちらの可愛らしい妖精との会話を少し聞かせてもらいました」


 どうやらさっきのナビ子との会話を聞かれていたようだ。

 俺の酒場と一体化とか……お約束の話も聞かれてたってこと!?

 めちゃくちゃ恥ずかしい……というか、事務的とか言われて、内心怒ってたらどうしよう。

 あっもしかして、この人が怒った殺気だったとか? ……うん、ないな。


「一昔前はお客様が仰られたように、酒場と一体化した冒険者ギルドか主流でございました。ですが、冒険者支援ギルドに変わってからは、このような感じなのですよ」


「そうなんですか」


 俺の思っていた冒険者ギルドは一昔前……か。

 ってか、冒険者……支援ギルド?


「お客様はあまり冒険者支援ギルドについて、詳しくないようですが……よろしければ、わたくしがご説明いたしましょうか?」


「そうですね。お願いします」


 どうやら、試験云々以前に、俺は冒険者支援ギルドのことを知る必要がある。


「畏まりました。では……ここでは少々目立ちますので、よろしければ落ち着いて話ができるところに移動いたしませんか?」


 確かに。

 悪寒の正体がわからないから、このままここで長話はしたくない。

 俺は彼女の案内で落ち着いた場所に向かうことにした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 3大都市=東京、京都、大阪に引っかかるのは私だけかな? 京都を入れるならその前に神奈川が入ると思うし、神奈川入れないなら京都ではなく愛知だと思う。
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