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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第2章 冒険者登録
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第59話 ワイルドホース

 次の日の朝。

 少し早めに起きて、バランの村を後にする。

 見送りは村長とロランさん。

 子ども達に見つかったら、ラビットAを惜しまれるのでその前に出発することにした。


「頑張れよ。きみなら立派な冒険者になれるさ」


「ありがとうございます」


 こんな風に応援してくれると、嘘ばっかりついていたのが本当に申し訳なく思う。

 まぁ嘘はついても、この村の不利益になることは何もしてないからと自分を誤魔化す。


「すまんが、街に着いたらギルドにこの手紙を渡してくれんか?」


 村長はそう言って俺に手紙を託す。

 封がしてあるので中身は読めそうにないが、村長の話では、ゴブリンの群れの出現と、退治された旨の報告が書かれているらしい。

 すでに退治済みのため、依頼の必要はないのだが、ゴブリンの群れが出現した事自体は報告した方が良いと判断したそうだ。

 本当は常連の行商人に渡すつもりだったらしいのだが、早い方が良いと思い、俺に託すようだ。


 俺としてもギルドに行って冒険者になるからついでだし、身分証の代わりにもなってくれそうなので大歓迎だ。


 報酬の馬車はレッドボアが引いている。

 村長の言ったように、大きさ的にかなり不格好だが……それでも引けないことはない。

 それに、村から見えなくなる数分だけ我慢すればいいだけ。


 村長とロランさんに別れを告げて、出発する。

 そして村が見えなくなった瞬間、一軒家を召喚して隠蔽スキルを発動する。


 素早く中に入ると、早速ワイルドホースの魔石をモンスターにすることにした。


 ――――

 ワイルドホース

 レア度:☆

 固有スキル:凶暴化


 馬系の下級モンスター。

 動物の馬がモンスター化した存在。

 暴れるので、騎乗や馬車を引くには向いていない。

 ――――


「……デカいな」

「……おっきいね」


 それが俺とナビ子の第一印象だった。

 馬の背が俺の身長よりも高い位置にある。

 馬をこんな間近で見たことはないので比べようはないのだが……日本の競馬番組で見た馬よりも大きい気がする。

 この馬の大きさがこの世界の平均なのか、モンスターだから大きいのか、それはわからない。


 ただ今いるリビングが一気に手狭になってしまった。


 そもそもリビングなんかでやるなという話なんだが、家の外じゃ隠蔽スキル外になるし、隠蔽してないと目立つ。

 村から比較的近い距離なので、人が通らないとも限らないから隠蔽は必須だ。

 そしてこの家にはリビングよりも広い場所は存在しない。


「……広い作業場がほしいな」


 二日前にゴブリンウィッチ達に解体作業をさせたときにも思ったことだが、普通に住むには問題ないが、なにか作業するには狭すぎる。

 山の時のように外で作業が出来たならいいんだが……これからは外で作業ができないもんな。

 モンスター達を気軽に召喚でき、解体なども出来るような……倉庫のような広々とした建物がないかなぁ?

 最低限、雨風がしのげて、隠蔽スキルを発動できれば十分なんだが……


「自分で作るしかないのかなぁ」


 街に行ってからになるが、必要なものを買い漁って合成で組み立て……って、倉庫のレシピがないな。

 レシピから手に入れないと……図面で大丈夫かな?


「ねぇシュート。この子……どうする?」


「……とりあえず確認はしたし、一旦カードに戻そう」


 ワイルドホースをカードに戻すと、リビングが広く感じる。

 ……やっぱりちょっと大きすぎたよな。


「シュート、荷車貰っててよかったね」


「本当にな」


 俺の身長より高い背にどうやって乗るって話だ。

 たとえ乗れたとしても、高くて気が休まらないだろう。

 馬車の中でゆっくり揺られながら移動する方がいい。


「じゃあ早速この子を外で呼び出して移動を開始する?」


 ナビ子の言葉に俺は首を振る。


「いや、実はこのワイルドホースは合成しようと思うんだ」


「えええっ!? なんでなんで? だってワイルドホースの魔石って1個しかなかったでしょ。……魔法と合成させるの?」


 俺の言葉にナビ子は驚く。

 確かに魔法……それこそ風魔法と合成させたらいい具合の進化をしそうだ。

 だけど今回は……


「違う。今回はビッグラビットと合成させようと思う」


 ビッグラビットは現在2体いる。

 そのうち1体を使うつもりだ。


 ――――

 ビッグラビット

 レア度:☆☆

 固有スキル:脱兎、打撃耐性

 個別スキル:危険察知、逃走加速


 ウサギ系の下級モンスター。

 見た目は巨大なホーンラビット。

 大きさ以外はホーンラビットと変わらない。

 ――――


 大きさ以外は……か。

 その大きさはラビットAよりも大きく……体長2メートルと俺が見上げるくらい大きい。

 大きすぎてバランの村では出せなかったくらいだ。

 ただ、こんだけ大きくても性能がホーンラビットと同じというのがもう……

 唯一ホーンラビットAよりも優れているところが、固有スキルの打撃耐性。

 モフモフ度が上がっているため、殴りに耐性が増えたのだろう。

 だけど基本的に臆病なので、逃げることしか考えてないようだ。


 ちなみにビッグラビットのレシピは、肥えた下級ウサギモンスター2匹。

 たまたま合成に使ったホーンラビットが肥えていたようだ。

 このビックラビットは狙って合成できるので、量産は可能だ。

 そして、そのビッグラビット同士を合成させたのがヒュージラビット。


 ――――

 ヒュージラビット

 レア度:☆☆☆

 固有スキル:肉体強化、脚力強化


 ウサギ系の中級モンスター。

 巨大なウサギモンスター。

 非常時では二足歩行も可能となった。

 ――――


 大きさはビッグラビットと同程度。

 だけど少しスラッとして……角がない。

 今までのウサギモンスターは角があったので違和感があったが……考えたらウサギって元々角はなかった。

 俺も随分とこの世界に毒されているよな。


 そして一番の特徴は二足歩行が可能なこと。

 立ち上がると3メートル弱になる。

 白くてデカくて二足歩行ができるモンスター。

 俺が初めてこのモンスターを召喚した際に思ったことは『ウサギじゃなくてクマじゃん!?』だった。

 全身真っ白なのでシロクマだ。

 正直ウサギの面影は……耳だけだ。

 このモンスターも大きすぎて、基本的に戦闘時以外は召喚できない。


 今回はヒュージラビットではなく、ビッグラビットとワイルドホースを合成させる。


「び、ビッグラビットと? どうして?」


「そりゃあ……だってユニコーンになりそうじゃない?」


 ホーンラビットの角だとちょっと頼りない。

 ヒュージラビットには角はない。

 けど、ビッグラビットなら大きさ的に十分。

 それにビッグラビットの白さはユニコーンの白さに通じるものがある。


「ほら、ワイルドホースなら暴れ馬って感じで、周りから敬遠されがちだけど、ユニコーンなら同じモンスターでも一目置かれると思うんだ」


「もしかして、二日前考えがあるって言ってたのは……」


「うん、このことだな」


 モンスターが見た目で判断されるんだったら、良い見た目になればいいだけだ。

 まぁ理由は何であれ、ただユニコーンが作ってみたいだけ。


「でもでも~、確か他種族の合成ってまだやったことなかったよね?」


 その通りなんだよなぁ。

 今までは同じモンスターか、系列の同じモンスターとしか合成していない。


「別に多種族との合成は駄目じゃないけど、貴重なワイルドホースを実験みたいに使ってもいいの?」


 でも……他のモンスターで変化がありそうなモンスターはいない。

 何せウサギと昆虫が殆どだからなぁ。

 ウサギと昆虫で合成してみる?

 いやいや、絶対に失敗するだろ。

 さっきナビ子は実験みたいと言ったけど、それこそ実験でモンスターを無駄にはしたくない。

 その点ワイルドホースとビッグラビットなら、勝算の方が高いと思う。


「でも、もしウサギの方に進化しちゃったら? 馬系のモンスターが居なくなっちゃうよ」


「いや、それは多分大丈夫だ」


「へっ? 何で?」


「これは……まだ試行回数が少ないから確実とは言えないんだけど、合成にはメインとサブに分類されてると思うんだ」


 合成する2枚のカード。

 同じカード2枚なら関係ないのだが、別のカードでの合成は、メインのカードにサブのカードが合体されて、メインのカードが強化されていると思う。


「まぁそれは何となく分かるよ。でも、問題はどうやってメインとサブのカードになるかでしょ。ウサギの方がメインのカードになるかもしれないじゃん」


「それがな……合成の時は二枚重ねて合成するだろ? その時に、手前のカードの方がメインのカードだ」


「えええっ!? アタイそんなの聞いてないよっ!!」


 やっぱりナビ子は知らなかったか。

 知っていたら合成の説明時に教えてくれるはずだもんな。


「多分運営も知らないんじゃないのか?」


 運営がこのカード化スキルをどうやって作ったかわからない。

 特別なプログラムかもしれないし……作ったわけじゃなく、この世界から入手したのかもしれない。

 だが、プログラムに組み込んでないとすれば、実際にスキルを使ってみないと分からなかったと思う。


「それ……ほんとのほんと?」


 やはりナビ子は信じられないようだ。


「本当と言われても……だから試行回数が少ないから確実じゃないって言っただろ」


 実際に今までの合成は殆どが同じカードなので、どっちがメインでもサブでも関係なかった。

 もしくはポーションのように、どっちもメインのような関係か。


 メインとサブに分かれる合成は、魔法とアイテムくらいしかなかった。

 例えばファイアと木の矢。

 最初に合成した時は、ファイアがメインで木の矢がサブのファイアアローが合成された。

 この時は、木の矢がレシピのような役目だったと思っただけだったが、何度か魔法とアイテムを合成していると、俺は毎回魔法から選んでいたことに気づいた。

 そこで、たまには武器から選んで――重ねる順番を変えて合成したら、属性が付与された武器が生まれた。


 ――――

 氷の石槍【武器】レア度:☆☆☆


 水属性の石槍。

 ダメージを与えると、傷口が凍る。

 武器としての能力は石のため脆い。

 ――――


 アイスニードルの魔法と石の槍を合成させて出来た槍だ。

 本当はアイスジャベリンの魔法が出来ないかと思っていたのだが……重ねるのを逆にしたことで武器の方がメインの合成結果になってしまった。


 これが偶々だったのか分からないが、何回か試す限りでは、手前のカードがメインの合成結果しか出なかった。


 ちなみにこの槍は属性武器なのだが、所詮石器武器。

 攻撃力に期待はできないどころか、石と氷の組み合わせになったことで、武器の強度は恐ろしく脆い。

 カードに戻せば修復可能だけど、到底戦闘で使えるもんじゃなかった。

 ……レア度だけは高いけどね。

 鉄や金属で作ればもっと上等な武器が作れそうな気がする。


「モンスター同士では試したことはないけど、ワイルドホースをメインの合成にすれば、馬系のモンスターになると思うんだ」


 だからビッグラビットとの合成ならユニコーンになるんじゃないかと思う。

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