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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第2章 冒険者登録
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第56話 元気の秘密

「まぁまて。先に詳細を確認してからだ」


 ナビ子の言うとおり、今すぐに呼び出したい気持ちはあるが、スキルの方もめちゃくちゃ気になる。


 まず固有スキル。

 フェアリーが風の素質、ピクシーが闇の素質で2匹とも魔法が使える。


 そして不可視が被っているな。

 説明文に姿を現さないって書いてあるから、やっぱり隠匿系のスキルだろう。


「不可視は隠密の完全上位スキルだね」


 やっぱり隠匿系か。


「あれっ? 隠密の上位スキルって隠蔽じゃないの?」


 スキル合成では隠蔽になったけど?


「そっちも上位スキルだけど……隠蔽は対象を選べるスキルで、不可視は自分だけ。でも隠蔽よりも更に隠れる能力は高いんだよ」


 上位スキルでも種類が違うってことね。

 なら隠蔽とランダム結果だったのかもしれない。

 そうだとすれば、不可視も隠密のスキルで出来るはずだ。

 ……スキルは数が少ないので、実験できないけど。


 隠密は気配を絶って認識されないようにするスキル。

 その際、姿が消えることはないが、不可視は姿が完全に見えなくなるスキルらしい。

 ここまでは同じく上位スキルの隠蔽と同じだが、隠蔽と違って、認識されても見えるようにはならない。

 要するにスキル発動中は透明人間みたいなものだ。

 ……強くね?


 残りの固有スキルはフェアリーが花操作でピクシーが催眠術。

 花操作……名前から察するに花を操るスキルだろうか?


「ナビ子は花操作ってスキル知ってる?」


「いや、これはアタイも知らないよ。だから運営も把握してないね」


 運営が知っているスキルはナビ子も知っている。


「運営も把握していないスキルが有るのか?」


「そりゃあ沢山あるよ。ゴブリン語だって把握してなかったでしょ」


 ああ……そういえばそうだったな。


「前も言ったと思うけど、運営はこの世界を外からモニタリングしていただけだからね。モニタリングで引っかからないことは分からないよ」


「それなのに図鑑には表示されるんだな」


 カードにもなるし……運営が把握してないのに、どうやって登録されるんだ?


「図鑑とカード化スキルも運営がこの世界のことを知るために用意した物だからね。知っていることしか表示されなかったら意味ないでしょ」


 そりゃあそうだが……これじゃあ本当にチートスキルじゃないか。

 ……考えるのはよそう。


「ピクシーの催眠術は、相手を催眠状態にしやすくなるスキルだよ」


「催眠状態にするスキルじゃないのか」


 名前からてっきり催眠をかけるとばかり思ってた。


「うん。催眠状態にするのは闇魔法でさせるんじゃない?」


 確かに闇魔法は状態異常系の魔法が多かったよな。


「この催眠術のスキルはね、眠リ以外に、混乱や魅了、洗脳なんかも成功率がアップするんだよ」


「それって、もう状態異常付与率アップでよくないか?」


 そっちの方が分かりやすい。

 まぁナビ子に言っても仕方ないのだが。


「状態異常って言っても、毒やマヒ、暗闇なんかは違うからね。心――精神に影響のあるものだけだよ」


 それなら精神異常率アップの方が分かりやすく……もしかしたら、上位スキルや下位スキルにあるかもしれないな。


 次に個別スキル。

 フェアリーは擬態と鱗粉、ピクシーは月の光、月光浴、鱗粉と元の固有と個別のスキルを継承しているな。


 2匹とも蜜集めは無くなってしまったか。

 ピクシーはともかく、フェアリーは花が好きなんだから、残っててもいいのに。

 まぁランダムだから仕方ないか。


 鱗粉があるのは、妖精にも羽があるからなんだろうな。

 ピクシーが継続して月の光と月光浴を持っているのは、説明文も夜にイタズラって書いてあるし、夜行性なのだろう。

 ……全然イメージないけど。


 そして一番目を引くのは、2匹に共通する妖精女王の器。

 もちろん元の個体は、古参も合成相手も所有していなかった。

 今までも合成で新しい個別スキルが生まれたりしていたが……

 だけど、今回は直前に合成相手を選んだのが気になる。

 俺が倒した個体はスキルを持っていなかったが、何かを察したから選んだのかもしれない。


「カード化スキルは謎が多いんだし、どうせ考えても分からないよ」


 ナビ子が身も蓋もないことをいう。

 だがその通りだ。

 このスキルがどこから来たか考えるよりも、このスキル自体のことを考えよう。


 似たようなスキルの女王の器を持ったキラービーは、クイーンホーネットに進化した。

 ってことは、この2匹は妖精女王になるのか?

 進化先は同じなのか、それとも妖精女王は2種類いるのか。

 妖精女王……思い当たる名前がひとつある。


「試してみたいけど……」


「止めたほうが良いよ!! 絶対に星4以上だよ!!」


 ナビ子が全力で止める。

 俺だってそう思うから、興味があっても確かめることが出来ない。

 一体いつになったら星4以上が解禁されるんだ?

 まぁ現レベルが3の時点でまだ当分先なのは分かるけど。


「先の進化を考えるよりもさ、早く呼び出そうよ。こっちはずっと待ってんだよ」


 そうだな。

 調べるのはこれくらいにして俺は2枚のカードを解放(リリース)した。


 そこに現れたのは2匹……もう匹じゃないな。

 2体……いや、2人でもいいかもしれない。

 2人の妖精だった。


 身長20センチ程度、それにバタフライの時と同じ色をした羽。

 フェアリーは明るい黄緑、ピクシーは夜っぽい紫。

 まるで対象的な2人だ。


「「ぴぴっ」」


 2人は小さく鳴く。

 残念ながら言葉は無理……というか、妖精語になるのかもしれない。

 2人は嬉しそうに俺の周りを飛び回る。

 なんというか……幻想的だ。

 今が一番ファンタジーを堪能している気がする。


 俺はナビ子の方を確認する。

 ナビ子は小さく震えているようだ。


「どうしたナビ子?」


「……ア」


「あ?」


「アタイと被ってるじゃないのさ!!」


 ナビ子の絶叫が響き渡る。

 ……なんだろう。

 前にも似たようなことがあったような……


「ナビ子、安心しろ。全然被ってないぞ」


「えっ? 本当!?」


「ああ……フェアリーとピクシーはナビ子みたいに、なんちゃって妖精じゃないからな。美しさが全然違う」

「「ぴぴっ」」


 俺の言葉に2人が頷く。


「なんちゃってって言うなああああ!!」


 再度ナビ子の絶叫が響き渡った。



 ****


「あ、アンタらねぇ……アタイだってしまいにゃ泣いちゃうよ」


 既に若干涙目のナビ子。

 あれからひとしきりフェアリーとピクシーと3人でナビ子をからかってたんだが、ちょっと調子に乗りすぎたようだ。


「ごめんごめん。悪かったって。流石に調子に乗りすぎた」

「「びぃ」」


 3人でナビ子に謝る。


「よし、じゃあお詫びに今度何か奢ってやる。何がいい? ニンジンか?」


「何でニンジンなのよ!! 全然反省してないじゃないの!!」


 いかん。火に油を注いでしまった。


「いやぁ。最近お詫びって言ったら、全部ニンジンで片付いていたんで……」


 誰かとは言わんが……というか、他の奴はお詫びとか請求しない。


「……アタイはラビットAのように安くないもん」


 ナビ子よ。今はカードの中で休んでいるけど、それをラビットAが聞いたら『きゅぴえ!?』ってなると思うぞ。


「じゃあ何が欲しいんだよ」


 ナビ子の場合、食事もしないから欲しいものが分からないんだよなぁ。


「そだね~……何か考えとくよ。だから……貸し1ね」


 貸しか……ずいぶんと高くついたな。

 何を言われるか分からないから怖いぞ。


「あっあとね……さっきからかわれたお陰で、重大な事実が分かったよ」


「重大な事実?」


「うん。この2人がシュートの倒した蝶を選んだ秘密」


「はぁっ!? 分かったのか!!」


 俺にはさっぱりだぞ。


「うん。あのね……この2人、今までよりも元気――表情豊かじゃない?」


「そりゃあ蝶から妖精に進化したら、表情豊かにもなるだろうよ」


 蝶の時と比べて人間っぽい見た目になっているんだから、蝶よりも表情が豊かで当然だ。


「それに別にこの2人だけでなく、進化したら皆それなりに表情……は分からないモンスターもいるけど、感情豊かにはなってるぞ」


 古参とか言い始めたのも、それが原因だろ。


「でもでも~人型のゴブリンは進化しても、表情豊かなのはホブAだけだよね?」


「そんなことないぞ。ゴブリンウィッチはさっきも俺に笑顔で答えてくれたぞ」


 解体作業を笑顔で手伝ってくれるゴブリンウィッチは俺の癒やしだ。


「確かに表情は豊かになってきているけど……声まで出しているのはホブAとラビットAだけだったよね」


 そう言われれば……確かにゴブリンウィッチも笑顔で接してくれるけど、声を出してくれた記憶はない。

 他の種族も……ホーンラビットも鳴くのはラビットAしかいない。


 決して声が出せないわけではない。

 戦闘中は雄叫びを上げていることもある。

 会話での声がないんだ。


「今回の2人は声を発しているな」


 さっきからずっと『ぴぴっ』って鳴いている。


「声を出しているラビットA、ホブA、そしてフェアリーとピクシーに共通すること。それはシュートが倒したモンスターが使われているってことなんだよ」


 ラビットAは俺が初めて倒したモンスター。

 ホブAは……元はゴブAとゴブD。ゴブAが俺の倒したモンスターだ。

 そして今回の2人は山を下りるときに俺が倒した蝶を選んだ。


「えっ、じゃあ俺が倒したモンスターだけが声を発したり、感情が豊かになるの?」

「「ぴぴぴっ!!」」


 大正解とばかりに2人が鳴く。

 だから2人は俺が倒したモンスターを選んだのか。

 というか、カードモンスター達はその事実を知ってたってことか。


「他の進化した子たちも段々感情豊かになっているようだから、このまま進化し続けたら声を出すかもしれないけど……最初から声を出せるのは、シュートが倒したモンスターだけみたいね」


「しかし……何で俺が倒したモンスターだけ?」


「そんなの分からないよ。シュートが倒したから特別なのかもしれないし、ベレッタのせいかもしれないよ」


 そっか。今まで倒したのは全部ベレッタだったな。

 ベレッタはこの世界にない異界シリーズ。

 異界シリーズが関係しているのかもしれない。


「今はこれ以上分からないよ。まっカード化スキルの不思議ってことでいいじゃない」


 それで片付けていいのかよ。


「まっ、皆と仲良くなりたいなら……これからはシュートが頑張って倒していかないとね」


「……善処するよ」


 もちろん無茶はしないけど、他のカードモンスターとも仲良く出来るのなら……今までよりやる気にはなったかな。

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