第5話 スキル
「じゃあこの世界のことについて簡単に説明するね」
そう言ってナビ子は説明を始めた。
この世界の国や人々の暮らしのこと。
この世界に住んでいる人間以外の亜人やモンスターのこと。
そしてスキルや魔法のこと。
種族やスキル、魔法に関しては『グローリークエスト』と似通った部分が多い。
だがこの世界の国や街の名前などは聞いたこともない名前だった。
まぁ正直今ここで国の話を聞いても覚える自信はないので、殆ど聞き流したのだが。
必要になれば、その都度ナビ子から教えてもらえばいい。
それよりも本命は……
「じゃあシュートのスキルについて説明するね」
きたあああ!! これこれ。
俺だけのオリジナルスキル。
ナビ子の説明では、この世界の人間は最初から1~3個のスキルを所有しているそうだ。
そして生活の中で増えていくことがあるらしい。
中には10個くらい所持している冒険者もいるらしい。
スキルは常時発動型のパッシブスキルと任意発動型のアクティブスキルの二種類がある。
スキルは人間や亜人、モンスターなど、種族によって所持しているスキルに隔たりがあるようだ。
例えばドワーフは【鍛冶】や【採掘】のスキル。
エルフは【弓術】や【採取】のスキル。
獣人は【野生の勘】や【身体強化】のスキル。
など種族の特色に添ったスキルを獲得しやすいらしい。
そしてモンスターは各種無効スキルや状態異常付与スキル。
再生スキルなど人間では所有していないスキルを持っていることがある。
そんな中、俺だけのオリジナルスキル。
果たしてどんなスキルなんだろうか?
「なぁナビ子、そもそも自分でスキルを確認できないのか?」
教えてもらわなくてもさ、普通こういった場合って自分で分かるもんじゃね?
それこそゲームっぽくステータス画面が表示されたりとかさ。
「自分のスキルを確認する方法は、鑑定スキルと冒険者になったときに支給される冒険者カードだけだね。基本的にスキルは全員冒険者カードで確認してるかな」
ってことは、俺も自分でスキルを確認するには鑑定のスキルを手に入れるか、冒険者になるしか道はないのか。
「じゃあ鑑定を持ってない、冒険者になってない人間はどうやって自分のスキルを知るんだ?」
「街にはスキル鑑定屋って職業もあるからね。ある程度の年齢になったらそこで確認するのが通例みたいになってるよ」
なるほど。
そこでスキルを調べてもらって自分の職業を決めるって感じかな。
なら俺の場合は、鑑定か冒険者カードのどちらかを早く手に入れないと不便で仕方がない。
「まっ、シュートのスキルに関しては、アタイに任せてよ!」
「そうだな。当面の間はお願いするよ。じゃあ早速俺のスキルを教えてくれ」
「シュートが所持しているスキルは2つ。1つ目は【カード化】、2つ目は【言語翻訳】だよ」
【カード化】と【言語翻訳】
……オリジナルスキルって聞いてたから期待していたけど、なんか思ってたのと違う。
そして俺が残念がっていることがナビ子に伝わったようだ。
「ちょっと何よその『あ~ハズレだ~』みたいな顔は!! 言っとくけどねチョー当たりのスキルなんだからね!」
当たりかどうかは分からないが、スキル名から何となく想像がつく。
【言語翻訳】
要するにこの世界の言葉が分かるスキルってことだろう。
日本語しか話せない俺にとって、このスキルがないと会話が出来ないから、ほぼ必須のスキルのはずだ。
そして【カード化】
カードじゃなくてカード化だから、何かをカードにするってことだろ。
おそらく収納系……持ち運びが便利って感じかな。
冒険をするならあった方が便利なスキルだろうけど、別にカードにしなくても【空間収納】のスキルや収納鞄の魔道具があるはずだ。
別にオリジナルスキルにしなくても、代替品があるのなら微妙と言わざるを得ない。
「じゃあまず【言語翻訳】から。これはその名の通り、この世界の言葉を翻訳するの。今はレベル1だから共通語を話すことしか出来ないけど、レベルが上がれば文字の変換も出来るようになるわ」
大体予想通りのスキルだな。
ただ気になることもある。
「なら現時点で俺は言葉を話すことは出来るけど、読み書きはできないのか?」
「そういうこと。レベル2で文字が読めるように、レベル3で書けるようになるわよ。レベルはどのスキルも最大10まで上がるんだ」
スキルレベルの上限は10か。
「そのレベルはどうやって上げるんだ?」
「スキルのレベルはそのスキルを使い込めば上がるわよ。【言語翻訳】だったら、この世界の人と話してれば自然に上がっていくよ」
ってことは、読み書きに関しては気にしなくてもいいのかな。
「ん? 今、共通語しか話せないって言ってたな。じゃあ他の言語はどうなるんだ?」
ナビ子の説明からすると別の言語があるように思える。
察するに……亜人かな。エルフ語や獣人語があってもおかしくはない。
「うーんと、共通語以外……例えば地方の訛り言葉ならレベルが上がると自動的に覚えるよ」
ああ、言葉が訛っている可能性もあるのか。
その可能性は失念していたな。
「それから共通語以外の言語……エルフの言語なんかは別のスキルが必要なんだ。スキル【エルフ語】とかね」
それもスキルになるのか。
「ってことは、そのスキルを持ってない俺はエルフ語は話せないってことか?」
「別にそんなことないよ。スキルが無くてもエルフから直接言葉を教えてもらったら話せるようになるよ」
「……それってもう【言語翻訳】の意味ないな」
それなら【言語翻訳】じゃなくて【共通語】みたいなスキルでいいじゃん。
「チッチッチ。甘いんだな~これが。実は【言語翻訳】のレベルが5以上になってたら、単語を一つ教わるだけで、その言語全体を習得したことになるの」
「ってことは……例えばリンゴはエルフ語で何か? って聞いて、それを教わったらエルフ語が習得できるのか?」
「そういうこと。凄いでしょ」
「ああ……それは凄いな」
レベル5までどれくらいかかるか分からないが、5まで上がったら実質全ての言語が習得可能ってことかな。
【言語翻訳】……かなり有用なスキルのようだ。
「でもね~このスキルはシュートのオリジナルスキルじゃないんだ。シュートのような条件達成者全員に渡されるの」
まぁそりゃあそうか。
これから来るかもしれない俺以外の日本人にも【言語翻訳】は必須だろう。
オリジナルスキルはもう一個の方……【カード化】のことだ。
名前だけなら期待外れのスキルだが、【言語翻訳】が予想以上に出来る子だったから、この【カード化】も同様に使えるスキルであることを祈ろう。