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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第9章 つかの間の休息
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第122話 男子会の結果

 ドンドンドンドン。


「シュート。もう、いつまで寝てるの!? それともまた内緒で出かけてるの!?」


 けたたましい音と共にドアの向こうからナビ子の声が聞こえる。


「あ~もうそんな時間か?」

「そのようでござるな」


 俺はドアを開けナビ子を迎える。


「あっ流石に今日は居たの……酒くさっ!?」


 ドアを開けるなり、ナビ子が顔をしかめる。


「そういや換気を忘れてたなぁ」

「中にいると気づかないものでござるからなぁ」


 部屋を締め切っていたんだから、酒の匂いが残っていてもおかしくない。

 ……まぁ残っている理由は締め切っていただけではなく、今までずっと飲み続けていたからだが。


「まさか……今まで飲んでたの?」


 驚愕の表情を浮かべるナビ子。

 食べかけの料理や散らばったカード……部屋の惨状を見れば驚くのも当然か。


「はははっ時間が経つのは早いなぁ」

「楽しい時間は過ぎるのが早いでござるからなぁ」


 はははと笑って誤魔化す俺とムサシ。

 それを見てまたまた驚くナビ子。


「……随分と仲良くなったみたいね」


 どうやら俺とムサシが予想以上に仲良くなったのに驚いたようだ。


「そりゃあ一晩中酒を酌み交わせば仲良くもなるさ。なぁ」

「酌み交わすって……ムサシは飲めないでしょ」

「……別の飲まなくても、一緒にいるだけで仲良くなれるもんなんだよ。なぁ」

「う、うむ。あっセッシャは主の所へ戻るでござる」

「へっ? あっそうだね。鈴風はリビングにいるよ」

「かたじけないでござる」


 ナビ子に礼を言ってリビングへ向かうムサシ。

 幸いナビ子は気づかなかったようだが……あいつ、ボロを出さないように逃げたな。


「……なんかムサシもお酒臭かった気がするんだけど?」

「そりゃあ同じ部屋に居たなら匂いも移るだろ」

「そうね。この部屋に居たらアタイにも移りそうなだからアタイも行くわ。シュートは……その酒臭い身体をどうにかしてから来なさいね」

「分かったよ」


 そう言ってリビングの方へ飛んでいくナビ子。

 どうやら誤魔化されてくれたようだ。

 まぁ自分が飲めないから、同じ立場のムサシが飲めるとは露程も思わないのだろう。


 ムサシの悩み。

 覚醒したことをナビ子に話すかどうかだが、悩んだ結果、今は保留ということにした。

 下手に今話すと『アタイもなんちゃってじゃ無くなるまで帰らない!』とか駄々をこねそうだし。

 それにもう一人……サナの相棒のルースにも相談しようと。

 ルースもナビ子と同じなんちゃって妖精だが、ナビ子よりルースの方が聞き分けが良さそうだ。

 ってことで、ライラネートに戻ってルースに話すまではナビ子には内緒にしようとムサシと決めたのだった。



 部屋を片付けた後、酒の匂いを消すためにシャワーを浴びた俺はリビングへと向かう。


「遅いわよシュート。もう朝ごはん無いからね!」

「栄養ドリンクでも飲んどくよ」


 さっきまで飲んでたから朝ごはんと言っても全然腹減ってないし。

 栄養ドリンクを飲んで頭をスッキリさせれば十分だ。


 俺はお茶を飲んで寛いでいる鈴風に声をかける。


「鈴風もおはよう」

「昨晩は随分とお楽しみだったようで」

「……確かに楽しかったけどさ」


 主にゲームのせいだろうけど、鈴風が言うと別の意味に聞こえるぞ。


「何やら新しい武器も頂いたようで……とても喜んでおりました」

「そっか。それは良かった」

「えっ!? なにそれ!? ムサシに武器を作ってあげたの!? アタイの居ない時に!?」

「飲んでいる時にそういう流れになったんだ。男子会の途中で呼ぶわけにもいかんだろ。そっちだって女子会をしていたわけなんだし」

「それはそうだけど……」

「それにそこまで大した物は作ってないしな」


 俺は図鑑を開けてナビ子に見せる。


 ――――

 呪縛刀【武器】レア度:☆☆☆☆


 闇属性の短刀。

 斬りつけることによって、対象の動きを封じる。

 ――――


 合成素材はメーブがパラディオン戦で使用していた対象を縛る闇魔法シャドウバインド。

 鈴風やラビットAの神殺しシリーズとは違い、直接シャドウバインドの魔法を発動させることは出来ないが、この刀で相手にどんな傷……かすり傷でも負わせればシャドウバインドと同様の効果がある。

 まさに忍者のムサシにはピッタリだと思う。


 ……そういやナビ子は武器を持ってないな。


「今度ナビ子専用の武器でも作るか?」

「ほんと!? アタイにも神殺しシリーズを作ってくれるの!?」

「いや、誰も神殺しシリーズとは言ってないが……」


 第一、あれは狙ってできるような物じゃないだろう。


「というか、仮に出来たとしてもナビ子は前線で戦わないだろうが。それともナビ子が邪神と戦うか?」

「……そうね。別に神殺しシリーズじゃなくても構わないわ」


 それでも自分専用の武器を作ってもらえることに喜ぶナビ子。

 機嫌が治ったようでなによりだ。


 そのタイミングを見計らったように鈴風が小声で俺に話しかける。


「それで……例の件はどうでした?」


 例の件――ムサシの悩みのことか。

 ……めっちゃ気になってんじゃん。


「……今、ムサシは?」

「カードの中で休ませてます」


 多分、酒臭いとか寝てないだろうからとか言って無理やりカードに押し込んだんだろうなぁ。


「とりあえず鈴風に不満とかはなかったから安心してくれ」

「……そうですか」

「悩みに関しても自分自身の成長とかそういった感じのことで……そのうちムサシ本人から相談を受けると思うぞ」

「そうですか。それではその時を待つとしましょう」


 それだけ言うと鈴風はリビングから出ていく。

 心なしかその足取りは軽い気がする。

 ……安心したんだろうなぁ。

 鈴風とムサシ。本当、いいコンビだよ。


「アタイ専用の武器……どんなのにしようかな……」


 ……はぁ。

 自分の武器の妄想をし続けるナビ子に俺はため息しか出なかった。

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