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第111話 図鑑の所有権

 それからしばらくしてパラディオンが目覚めた。


「迷惑かけたな……すまぬ」


 開口一番パラディオンが謝罪する。

 また暴れるかも……少しだけ警戒していた分、肩透かしにあったようで少し面食らう。

 どうやらパラディオンは暴れていたことを覚えていたようで、自分が女王に危害を加える可能性が高かったことにショックを受けているようだ。


「体調は問題ありませんか? 脚や腕は動きますか?」


 鈴風がパラディオンに確認する。

 外傷は残っていないが、一度は上半身と下半身が分離したんだ。

 変な後遺症……最悪、下半身が動かないとかいう可能性もある。


 鈴風の言葉にパラディオンは軽く体を動かし問題ないことを確認する。


「……うむ。問題ない」

「そうですか」


 流石に少し気にしていたようで、返事はそっけないが、明らかに安堵した表情を浮かべる鈴風。

 こちらとしてもパラディオンの体調も問題ないようで一安心。

 これで本題に入れる。


「それで今度こそ俺たちの勝ちでいいんだよな?」

「う、うむ。非常に不本意ではあるが……だが小僧。我は小娘――鈴風に負けたのであって、小僧に負けたわけではない」


 苦虫を噛み潰したような顔で答えるパラディオン。

 しかも俺に負けたことは頑なに認めないし。

 つーか、鈴風のことは小娘じゃなく鈴風呼びで、俺は相変わらず小僧呼びなんだな。


「やっぱ煽りすぎたから……」


 そう俺に耳打ちするナビ子。

 だから煽りじゃないって……って言っても通用しないんだろうなぁ。


「まぁ勝敗はどうでもいいんだけどさ。俺は図鑑の所有権さえ認めてもらえれば」

「……小僧のような卑怯な奴の方が、邪神にも引けを取らぬであろうな」


 一応所有権は認めてもらえたようだが……なんだかモヤっとする。


「シュート。アンタだって似たようなこと言ってたじゃない」

「そうだっけ?」


 あまり覚えていないが……そういえば説得する時に言ったような気もするかも。


「パラディオン。貴方はシュートが知識の書を持つことに不安のようですが、あのような物はカード馬鹿であるシュートが適任でしょう。安心なさい、代わりにわたくしが邪神とやらを倒します」


 鈴風がフォローのような、そうでないような微妙な援護をしてくれる。


「ぷぷっ。カード馬鹿だって」

「あ、うん。それはいいんだけど」

「ええっ!? いいの?」

「だって事実だし」


 勿論一番いいのはコレクターだけどさ。

 なんちゃって鍛冶師に比べると遥かにマシだろ。


 パラディオンは鈴風の微妙なフォローに大きく頷く。


「うむ。任せたぞ」


 ……ねぇ。お前、鈴風に斬られたよな?

 何でそんなに全幅な信頼をおいてるの?


「やっぱり正々堂々って大事なのね」


 ほっとけ。

 どうせ俺は正々堂々じゃないですよ。



 それから知識の書の所有権を正式に認められ、ついでに邪神討伐も鈴風が勝手に引き受けたので、詳しい話を聞くことに。

 話は神殿の中でということで、神殿の中へ。


「少し待て」


 パラディオンがそう言うと、パラディオンが光に包まれ人型の姿に。

 やはり人化のスキルも持ってるんだな。

 人型になったパラディオンは青い長髪の超絶イケメ……ン?


「えと……男? 女?」


 一瞬イケメンのようにも見えたが、微妙に中性的な感じもうける。


「我には繁殖の必要がないため、性別の概念はない」


 まさかの無性別だった!?


「ほぅ。もう少し詳しく聞いても?」


 そして何故か興味深そうにしている鈴風。

 ……なんだか武器を渡した時以上に目が輝いている気がするんだが?


「ねぇ。鈴風ってさ……」

「言うな。何も知らない方がいい」


 うん。俺は何も聞かないし、知ろうともしない。

 俺は鈴風とパラディオンの話を聞かないように神殿の中を見渡す。


 気になったのは神殿の通路の両端に並んでいる石像。

 全部同じ姿形で、鎧と槍を身に着けた女性の姿をした石像。

 鎧と言っても厳ついとかじゃなく……まさに戦乙女って感じの美しい女性の姿をしていた。


「これ、多分この世界の創造神の石像よね?」

「多分そうだろうなぁ」


 ここにあるのに別の神の石像ってんなら、そっちの方がビックリだ。


「思いっきり女神なんだけど……これも性別ないのかしら」

「その話はもういいから」


 この女神像が実は女神じゃないってのはなんか嫌だ。

 というか、女性じゃない時点で女神とは言わんだろ。

 確か創世記によると、この世界を創ったのは女神って話だから、女神でいいんだよな?


「ん?」

「どうしたのシュート?」

「いや、この石像……なんか見覚えがあるような気がして」

「なに? 石像相手にナンパ?」

「違うから!?」

「でも、見覚えあるって……シュートって創造神に会ったことあるの? もしかして本当に神の御使い?」

「いやいや。会ったことなんてないから。それに何となく見覚えがあるだけだから……」

「あっ。あれじゃない。ネレイド騎士団の鎧。あれに似てない?」

「あ~それかもな」


 確かにエレーネやマリーナが着ていた鎧に似ている気もする。

 というか鎧だけじゃなく槍だって。

 きっと、この石像を参考に騎士団の装備を作ったんだろうなぁ。


 ただ見覚えがある原因がそれかは……あんまりイメージがない。

 かといって、他に思い浮かぶようなこともなし。


「まぁ日本にいた頃の何かで似たようなのがあったんだろ」


 ってことで納得することに。

 アニメとか漫画とか……もしかしたら社会の教科書とか。

 そういったので見覚えがあったに違いない。


「エレーネで思い出したけど、ここに知識の書のレプリカもあるのよね?」

「そういえばそうだったな」

「貴方が神か……って、あの時は本当に驚いたわ」

「鈴風は思いっくそ噴いてたけどな」


 色々ありすぎたけど……全てはエレーネが俺の図鑑を見て神の御使いだと勘違いしたのが発端だったな。

 うん。そのレプリカは見せてもらおうかな。

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