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第107話 VSパラディオン⑫

 俺は鈴風から4枚のカードを受け取り……絶句。


「おまっ!? これっ!?」

「なにか問題が?」


 問題が……って!?

 俺は手元のカードをもう一度確認する。


 ――――

 静嵐刀(壊)【武器】レア度:☆☆☆☆


 風属性の魔力を秘めた薙刀。

 刀身に魔力を流すことで切れ味を増加させる。

 風属性の魔法の威力を増加する。

 ――――

 ――――

 海鳴刀(壊)【武器】レア度:☆☆☆☆


 水属性の魔力を秘めた薙刀。

 刀身に魔力を流すことで切れ味を増加させる。

 水属性の魔法の威力を増加する。

 ――――

 ――――

 紅焔刀【武器】レア度:☆☆☆☆


 火属性の魔力を秘めた薙刀。

 刀身に魔力を流すことで切れ味を増加させる。

 火属性の魔法の威力を増加する。

 ――――

 ――――

 縛砂刀【武器】レア度:☆☆☆☆


 土属性の魔力を秘めた薙刀。

 刀身に魔力を流すことで切れ味を増加させる。

 土属性の魔法の威力を増加する。

 ――――


 てっきりメイン武器1枚と合成素材3枚かと思ったら、まさかの武器4枚。


 鈴風が普段使用している薙刀が静嵐刀。

 そして海中でずっと使用していた海鳴刀、さらに紅焔刀と縛砂刀で4本刀だと聞いている。


「……この状況で4本の武器を強化しろと?」

「わたくしが最も使い慣れた武器を強化するのは当然のことでは?」

「ああうん。そうだね」


 最初、静嵐刀!? って驚いたけど、確かに自分の一番の武器を強化するってのは理解できる。

 が、まさか4本刀全部出してくるとは。

 確かに兄弟刀だから1本だけ強化じゃなくて全部強化って気持ちもよく分かる。

 かといって今ここで全部出すか?

 いや、俺は本数がある方が図鑑登録が増えて嬉しいけども。


「今度時間がある時に合成するから、とりあえず今は1本だけでいいよな?」


 流石にここで4本全てを合成するのは厳しすぎる。

 もちろん合成するだけだったら、カードを重ねて合成(リボーン)と唱えればいいだけだから一瞬で終わる。

 素材だって同じ属性魔法を素材にすれば、単純に強化した武器が生まれるだろう。


 ただその属性魔法の素材選びが大変なわけで。

 魔法の種類によって、仕上がりに変化がある。

 例えば静嵐刀にトルネードの魔法カードと合成すれば攻撃威力の上がる暴風刀、サフォケイトなら殺傷威力の上がる真空刀みたいに。

 更に補助や回復系の魔法やスキルも素材として使えば自動修復機能や身体能力向上などの付与できたりする。

 凝り始めたらキリがない。


「ってか、ちゃんと強化したいんだったら、静嵐刀じゃなくて、余ってる武器を使った方がいいんじゃないか?」


 パラディオンを倒すだけなら、市販の武器に属性魔法でも合成して量産型魔剣辺りを作ればいいんだし。

 そして大事な静嵐刀や4本刀を強化したいのなら、後日時間を掛けてゆっくり合成すればいい。

 そっちの方が完璧な武器になると思うぞ?


「シュートは何か勘違いをしているようですね」

「……勘違い?」

「わたくしは、それぞれの武器を強化しろと言っているのではなく、この4本で、新たな薙刀を作れと言っているのです」

「無茶言うなっ!?」


 俺は思わず叫ぶ。

 おそらく鈴風は4本刀をまとめて合成すれば最強の一振りが出来るとでも思っているに違いないし、その考え自体は間違っていない。

 実際、星4を4本合成なら、間違いなく今よりも性能は上昇。

 星5でも最上級レベル物ができるに違いない。


 成功すれば……だが。


「複数の属性の組み合わせでの合成は失敗のリスクが高いんだ」

「失敗のリスクがあるだけで不可能ではないのですね?」

「……限りなく不可能に近いけど」


 そう。不可能ではない……と思う。

 2つの属性なら何度か試したことがあるし成功例もある。

 火属性と土属性の組み合わせで爆炎の魔剣とか。

 火属性と光属性の組み合わせで聖炎の魔槍とか。


 ただ4属性は試したことがない。

 しかも今回の武器は風、水、火、土の4属性。

 火と水、風と土は相反する属性なので失敗する可能性が高い、


「成功率がゼロでなければ問題ありません」

「大ありだっての!?」

「何故です?」

「失敗したら素材になったカードは無くなるんだぞ!!」


 静嵐刀だけじゃなく、4本刀全てをだ。


「では失敗しなければいいだけではないですか」

「それが出来たら苦労はしねーよ!」


 俺だって失敗したくてしているわけじゃないんだ。

 合成したら結果が失敗って出るんだから仕方ないだろ。


「しかし最強の武器になる可能性を秘めているのでしょう?」

「まぁ成功すれば間違いなく最強の一振りになるだろうなぁ」

「でしょう? それが分かっているのにシュートは諦めろと?」

「そうだけど……でも、失敗して4本刀を失うよりマシだろ」

「『妥協してたら、それなりのものしか手に入らない』わたくしの座右の銘です」

「それ、漫画のセリフだよね!?」


 俺も読んだことあるよその漫画!?


「漫画のセリフだろうが、格言には違いありません」

「そうだけどさ」


 確かにいい言葉とは思うけども。


「ですからシュート。失敗を恐れていたらカードのコンプなど出来ませんよ」

「むっ……」


 痛いとこ突くなぁ。

 コレクターとしてカードコンプを言われると弱い。


「シュートはコレクターですか? それとも、なんちゃって鍛冶師に甘んじますか?」

「俺はなんちゃって鍛冶師じゃねー!」

「ですが、ここで諦めて自身を持ってコレクターと言えますか?」


 くっ……確かに失敗を恐れて新規カードを手に入れるチャンスを逃すのは俺のコレクター流儀に反する。


「……ちなみに仮に失敗して4本刀が消失したらどうする?」

「もちろんシュートをぶち殺します」

「理不尽じゃね!?」


 そこは仕方ありませんって納得しろよ!?


「ねぇシュート」


 ここまで黙っていたナビ子が声をかける。


「失敗するのが嫌ならさ。『仮想合成』で試したらどうかな?」

「仮想合成……か」


 仮想合成はカードマスターレベル4の能力で、合成する前に合成結果が分かる能力だ。

 まぁ結果が分かると言っても、名前が表示されるだけだが。

 合成前に結果が分かるのは邪道ってことで自主封印していたんだが……うん。すっかり忘れてたな。


「うん。シュートの流儀には反するってことは知ってるけど、今回だけは解禁してもいいんじゃないかな?」

「あ~。うん、そうだなぁ」


 合成結果の名前が表示されるってことは、失敗するかどうかの結果は分かる。

 だから結果が失敗なら合成を諦めればいいと。


「ありがとうナビ子。仮想合成で試してみるよ」

「ええっ!?」

「……何故にそこで驚く?」

「いや、まさか使うって言うとは思わなくて」


 まぁいつもコレクター魂とか言ってるから、提案はしても実際に使うとは思わなかったんだろうなぁ。

 これが静嵐刀が俺の所有物なら解禁はしないが、今回は鈴風の所有物。

 それに、鈴風だって自分の信念を曲げて俺に頼んでいるんだから、俺もそれくらいしないと。


 ってことで、早速仮想合成を試してみることに。


 ――――

 ??????


 静嵐刀×海鳴刀×紅焔刀×縛砂刀

 ――――


「なんっじゃそらあああああ!?」


 せっかく俺も自分の信念を曲げて仮想合成を試したのに、結果が『??????』だと!?

 全っ然役に立たねーじゃねーか!?


「ちょっと待ってシュート。今まで仮想合成で不明なのってある?」

「いや、ない」


 というか、仮想合成を試したのはスキルブレイカーを完成させた時だけだし。

 あの時は色々なスキルの組み合わせを試したけど、全て合成結果が表示されていた。


「じゃあ合成結果が失敗の時は?」

「……失敗の結果がなかったから」


 だから今回の『??????』が失敗って可能性がある。


「じゃあさ。レア度なしの結果の時は」

「……レア度なしの結果もなかった」


 合成結果でレア度なしが出る場合がある。

 例えば俺のラビットファイアがそれだ。

 この世界にない合成でしか手に入らない物で合成シリーズと名付けている。

 確かにその可能性もある。


「……ってことは、失敗かもしれないし、大成功かもしれないと」


 やっぱ全然役に立たねーじゃね!!


「良かったわねシュート。数パーセント成功率から五割の成功率になったわよ」

「……これも五割って言うのか?」


 これで五割なら仮想合成前も成功か失敗の五割でいいと思うぞ。


「……シュート。これ、成功の方ではありませんか?」

「鈴風……合成したいのは分かるけど、これで成功かは断言できないだろ」

「いえ。ここを御覧なさい」


 そう言って鈴風は仮想合成結果を指す。


「……どう見ても『?』しかないけど?」

「『?』の数を見なさい。失敗なら6個もあると思いますか?」


 !?

 確かにそうだ。

 なんで『?』が6個なんだ?

 過去にもアナライズで合成素材が不明の場合があったが、その時は6個もなかった。

 ……てことはだ。


「合成結果が6文字ってこと?」

「そうだよきっと!」


 ナビ子が元気よく賛同し、鈴風もそうだと頷く。


「シュート。これでもまだ合成を渋りますか?」


 ……ここまで来て試さないのは、マジでコレクターを名乗る資格はないよなぁ。


「やるよ……でも変な結果になっても後悔するなよ」

「その時はシュートをぶち殺すだけですから」


 ……やっぱりぶち殺されるのか。

 まぁその時は全力で逃げるとするか。


 さて、じゃあ合成に入るわけだが。

 その前にパラディオンに壊された静嵐刀と海鳴刀を修復(リペア)で元通りの状態へ。

 これで今日はもう修復(リペア)を使えないのか。

 正直、ラビットAのばたんきゅー状態を治したり、アサシンビーを生き返らせたりもしたいけど……まぁ武器が完成したら鈴風が終わらせてくれるだろうし、大丈夫だろう。


「あっそうだ。合成って最大5枚まで可能だけど、残り1枚はどうする?」


 魔法とかスキルを追加することで自動修復機能とか、威力アップとか見込める。

 下手したら合成結果が変わる可能性もあるけど。

 まぁ新たな武器じゃなければ大丈夫だろう。


「好きになさい。わたくしは4本刀以外はどうでもいいです」


 好きにって……自分の武器だろうに適当すぎんだろ。

 ……ふむ。適当……か。


 俺は一枚の魔法カードを取り出し、4本刀の下に重ねる。


「ちょ、ちょっと待ちなさいシュート。今、何を重ねました?」

「ん? 適当なカードだよ」


 そう言って俺は合成を開始する。


合成(リボーン)

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