第101話 VSパラディオン⑥
――よし、アズリアのことは聞かなかったことにしよう。
ここでティータを帰したくない。
うん。俺はアズリアが修羅場っていることなんか聞いてない。
なぁに、俺がティータを呼び出すくらいだから、アズリアだって俺がピンチだって察してくれるはず。
……単純にど忘れなだけなが。
それでもアズリアならなんとかするだろ。
それにティータがいなくても、アンブロシアの精霊のシアがまだ残っている。
海水がなくなってもパラディオンの威圧がなくなったわけではないので、引き続き星4のモンスターは出せない。
だから星4のシアにはティータの代わりにアズリアの方を頑張ってもらおう。
でもやっぱり少し心配だから、パラディオンとの戦いが終わり次第、ティータにはお帰り願おうかね。
「んで、ティータも状況は把握しているな?」
「ええ。あちらにいるドラゴンを倒せばよろしいのでしょう?」
「できるのか?」
「まず無理かと」
「うおいっ!?」
なんてことないような風に言ってるから、一瞬期待しちゃったじゃないか。
「ふふっ冗談です」
……なんだかティータ、アズリアに似てきてないか?
一緒に行動させすぎたかな。
あまり染まらないでもらいたいものだ。
「ですが、わたくしでは敵わないのも事実です。あのドラゴンとわたくしでは格が違いすぎます」
「そんなに違うのか?」
「ええ。なんちゃって妖精と妖精女王くらいの差があります」
「……そんなに違うのか」
「なんでそこでアタイをティスってんのよおおお!!」
「とまぁ冗談はさておいてだ」
「ねぇシュート。さっきからアタイをイジり過ぎじゃない?」
「気の所為だ気の所為」
まぁ今のはティータに乗っただけだけど、正直冗談でも言ってないと、すぐに気が張り詰めそうになる。
やっぱり自分でやるとなったら……ねぇ。
自分でも気づかなかったけど、どれだけラビットAを頼りにしていたんだって話だ。
「それでだ。相手がどんなに格上であったとしても負けるわけにはいかないんだが……いけるか?」
「わたくし一人でとなれば、無理とお答えしますが、マスターが一緒なら負けるはずがありません」
「主。妾もおりますゆえ、何なりとお命じください」
「よし、やり方は二人に任せるが、パラディオンを自由にさせないことが最優先だ」
「「かしこまりました」」
そう言って二人は別々に散っていく。
やってもらうことはセレンと同じく遊撃。
ティータもメーブもどちらかと言えば攻撃よりサポートタイプだから、パラディオンの動きを封じるのに尽力してもらう。
さらに3リスも遊撃側へ回ってもらう。
プリズムエリアは強力な防御魔法だけど、動けなくなる欠点もあるから、海中でなくなった今、使う必要はない。
ナビ子がダークミストで視界を塞ぎつつ、セレンの小鳥爆弾、ティータの風魔法とメーブの闇魔法、さらに3リス。
これだけの数で足止めすればパラディオンとて自由に動けまい。
そこで次は攻撃力に特化した仲間を解放。
「アーク、グリコ、ペル! いいな。三人であのドラゴンにダメージを与えるんだ」
ビー三騎士が合体したビーアークナイトのアークとグリフォンの進化したテンペストグリフのグリコ。
魔法なしの単純な戦闘能力ならラビットAにも負けないだろう。
もう一人はヴォルペルティンガーのペルに関しては攻撃力というよりは防御力。
攻撃役なのでアークとグリコの二人はどうしてもパラディオンに近づいて戦う必要が出てくる。
そこで唯一パラディオンの再生能力に負けず劣らずの再生能力を持ち、弱点攻撃以外ではほぼダメージを受けないペルに盾役になってもらう。
それとは別にラビットAとコールという古参のウサギ仲間がずっと出ずっぱりの中で一人だけ置いてけぼりだったから、活躍させたかったってのもあるけど。
……その活躍の場面が盾役ってのは申し訳ないけどさ。
「ねぇシュート。残りの星5は出さないの? ケリュネイアとかアルケニーとかさ」
「いや、あまり多く出しすぎても邪魔になるだろ」
攻撃対象はパラディオンだけなんだから、あまり多く呼び出しても下手すれば同士討ちの可能性が増えるだけ。
増援が必要ならその都度呼び出せばいいだけだ。
「それに今は飛行能力がある奴だけを選んだんだ」
「あっそうなんだ」
海水が無くなったと言っても元々海水で満たされていた場所だから、決して足場は良くない。
だから今回は飛行能力のある仲間だけ選んだ。
「もしホブAが星5なら呼び出しただろうけど」
「ホブA……あんなに修行してたのに」
巨大モンスターの島でアークと一緒に鈴風に稽古をつけてもらっていたホブA。
ゴブリンジェネラルからオーガジェネラルに進化し、何倍も強くなっただろうが……如何せん星4のまま。
残念ながら今回は使えない。
おっと肝心な奴を忘れていた。
俺はもう一人……アサシンビーを呼び出す。
俺の切り札的存在でもあり、大事な場面ではいつも活躍してくれたアサシンビー。
果たしてパラディオンに毒が効くか不明だが……それでもアサシンビーならやってくれるはず。
そして最後に俺はブラストガンからラビットファイアに持ち替える。
海中ではラビットファイアの能力を十全に発揮できないから弾の消耗も考えて使用を控えていたが、今なら存分に発揮できる。
「そういえばこの銃って神殺しの銃なんだよなぁ」
――――
神殺しの銃【武器】レア度:なし
合成によって作られた、あらゆる魔弾を操る究極の銃。
全てを滅する力を持つ。
――――
合成で完成した当初は神の存在も知らなかった頃で、ただ大それた名前の銃だとしか思わなかったけど。
「結局、今回のことがなくても邪神を倒す運命だったのかもしれないね」
「……全ては女神の手のひらの上ってことか」
とりあえず、まずはこの神殺しの銃が神の守護竜に通用するか試してみるか。




