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第98話 VSパラディオン③

 セレンのクリオネ爆弾が直撃。

 ……したものの、爆風の中から姿を現したのは無傷のパラディオン。


「なっ……あれで無傷なのかよ」


 ったく。どんだけ頑丈なんだ。

 俺が同じ攻撃を受けていたら、跡形もなく木っ端みじんだぞ。

 これ……さっきは一息で相殺されちゃったけど、ブラストガンが直撃してても無傷だっただろうなぁ。


「なぁナビ子。攻撃は通るけどダメージ0と、攻撃が無効化されるけど、無効化されなければ大ダメージになるの。どっちの方がマシだと思う?」

「……難しい質問ね」


 そうか?

 俺的にはあの理不尽バリアさえなければダメージは通るんだから、鈴風の方がマシだと思うんだが……ったく。

 こっちがイジケたいくらいだ。


「あっ、でも見てあそこ。ほら、無傷じゃなさそうよ」


 どれどれ……確かによく見ると確かに所々怪我や火傷の跡が見える。

 が、それがどうしたというのだ。


「あんなん怪我のうちに入らねーだろ!」

「何よ。シュートが無傷だって言うから教えてあげたんじゃないの」


 だからって、走って転んで擦り剥いた程度の傷に喜んでどうするよ。

 しかも話している間にも、傷が治っていくし。


「おいおい、どんなスキルを持っていたらあんなに早く回復するんだよ」


 魔法を使っている様子はないから、回復系スキルなのは間違いない。

 俺のモンスターの中にも自己治癒促進とか再生のスキル持ちはいるけどその比ではない。

 おそらく超速再生とかそんな感じか?


「気になるならハイアナライズすればいいじゃない。ってか何でしないの? もう完全に敵対しちゃってるんだからいいでしょ」


 俺はどこかのギルド職員とは違って、好き勝手に鑑定はしない主義だが、流石に敵対者相手には鑑定する。

 なので、パラディオン相手にも遠慮するつもりはない。

 が、今回はそういう問題ではない。


「……すでに試した」

「えっ? でも……」

「すでに試したの! でもカードが出なかったの!」


 ハイアナライズ自体はセレンのクリオネ爆弾よりも前にすでに試している。

 が、いつもは目の前に現れるはずのカードが一向に現れない。

 今までそんなことなかったのに……考えられることとしては、俺のハイアナライズが通用しないレベルの妨害スキルを持っているか……存在そのものが俺のハイアナライズよりも上か。

 俺のカードマスターは星6のレベル8なので、それ以上のレベルだとしたら十分に有り得る話だ。


「ただでさえ頑丈な上に回復能力までチート。更にアナライズすら効かない。こんなんどうやって倒せばいいんだよ」


 せめてレベル10まで待ってくれてもいいのに。


「やっぱアタイらが勝つにはラビットAが必要よね」

「……だな」


 鈴風と同程度の能力を有しているにも関わらず、理不尽バリアに無効化されされないチートウサギ。

 セレンのお陰でコールを派遣してからすでに2分以上は経過している。

 そろそろ参戦してくれると嬉しいのだが……。


「きゅきゃー!!」


 そのチートウサギは……何故か叫びながら地団駄を踏んで暴れていた。


「ちょっ!? 何やってんの!?」

「ラビットA。完全にキレちゃってんじゃないのさ!」


 ちょっと見ない間に何があったし!

 ラビットAのすぐ側にいるコールはどうすればいいかと困惑してるし。



 ……コールが無事にラビットAと合流したってことはだ。

 コールがラビットAを説得。

 それでも鈴風を気にかけるラビットA。

 俺と鈴風の間で板挟みになって……どうして良いか分からずキレちゃったと。

 そんなところだろう。


 正直、ラビットAがここまで葛藤する理由がさっぱり分からない。

 いったい鈴風の何を気にしているんだ?

 鈴風がその場から動かないから守ってあげたいって話なら、ムサシもいるし、そこまで気にする必要はないだろ。

 鈴風が負けた相手を倒すのは気が引ける?

 いやいや、むしろ敵討ちって張り切るタイプだろ。

 そして自分の邦画強いとドヤ顔するはずだ。


 う~ん。

 どう考えてもサッパリ分からん。


「きゅっきゅきゃーーー!! ぶくぶくはーうす!!」


 キレてるラビットAはそのままの勢いで何故かぶくぶくハウスを唱える。


「えええっ!? アイツ、本当に何やってんの!?」

「ラビットA……壊れちゃった?」


 ぶくぶくハウスはラビットAを中心に、鈴風を包み込み……さらに膨らんでいく。


「お、おいおい。どこまで……」

「ちょっ!? シュートこのままじゃ危ないよ!」


 いや、ぶくぶくハウスは危なくないだ……待て待て。

 俺は今海中に浮かんでいる状態。

 もしこのままぶくぶくハウスの範囲が広まって俺のいる場所の海水が無くなったらどうなるよ。


「ちょっ!? ラビットA、タンマ!」

「ラビットA。ねっ落ち着こ。ねっ」


 だが、キレたラビットAは聞く耳を持たず。

 ぶくぶくハウスは範囲を広げ……俺やナビ子、パラディオンすらも巻き込んでいく。


 ――ぶくぶくハウス内に入るや重くなる身体。


「お、落ちる!?」

「ふ……フライー!!」


 慌てふためく俺にナビ子がフライの魔法カードを使う。


 ――――

 フライ【風属性】レア度:☆☆☆


 中級風魔法。

 宙に浮かぶ魔法。

 浮くだけで自由に移動することはできない。

 ――――


 ただ浮かぶだけで空を自由に飛ぶことは出来ない中途半端な魔法だが、今はこれで十分。

 俺たちはゆっくりと地上へ降り立つ。


「な、ナビ子。助かったよ」

「へへん。アタイがいて良かったでしょ」

「ああ、今度ばかりは助かったよ」


 ただ、ピンチになった原因は敵からの攻撃ではないけどな!

 ラビットAの唱えたぶくぶくハウスは俺たちを巻き込んだ後も範囲を広げていき……最終的には今いる広場に海水が綺麗さっぱり無くなった。


「いや、どんだけだよ!?」

「……この広場にあった海水って何処に行ったんだろ?」

「そんな疑問はどうだっていいだろ!?」


 確かに気になるけどさ!

 今はそんな疑問を考えている場合ではない。

 いったい何を考えてラビットAはこんな真似を……。


 だが、ラビットAはこれだけで終わらせるつもりはなかったようで。


「ぶくぶくはうす……からの~」

「「からの!?」」


 からのってこれ以上何する気だ!?


「ぱわーあーっぷ!」

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