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第95話 シュートの決断

「はぁ!? ばっかじゃねーの!?」


 パラディオンの言葉を聞いて俺は思わず声を荒げる。

 正直さ、多少の無理難題は覚悟していたよ。

 だって神が最低でも世界の理を超える力がないと救えないと思ってるんだから。


 でもさ。

 もっとこう……この世界を征服しようとする魔王を倒せとか。

 ……まぁそんな話は聞いたことないけど。

 つーか、それなら相手はエイジになりそうだけど。


 もしくは天変地異が起こるのでそれを防いでほしいとか。

 ……覚醒した力で防げるか知らんけど。

 むしろグリムとか自然災害を防いでくれるモンスターが複数いれば大丈夫そうだけど。


 ともあれ、この世界でどうにかなるギリギリラインの危機をこの世界を超えた力で乗り越えると思ってたんだよ。


 それがさ。

 ――邪悪なる神を追い払ってほしい?


「んなの、常識的に考えても無理に決まってるだろ!!」


 邪悪な神って要するに邪神ってことだろ。

 この邪神が下級神なのか上級神なのか不明だけど、そんなの関係ない。

 どっちだろうが神の時点で眼の前の守護竜よりも格上の存在。

 そんな守護竜にすら、どう足掻いても勝てそうにない俺に邪神を倒せと?


「アンタ、本気で俺がそんなこと出来ると思っているわけ?」

「ちょ、ちょっとシュート。素が出てるわよ」


 俺がパラディオン相手にアンタ呼ばわりしたことで慌てるナビ子。


「もうこんな無理難題言ってくるような奴相手におべっかなんか使う必要ないだろ」

「おべっ!? アンタこそちょっとぶっちゃけ過ぎじゃない!?」


 いや、ここで下手に出たら本当に戦わされそうだし。

 絶対にやらないぞと毅然な態度でいないと。


「では貴様は我が主の命には従えぬと?」


 俺が不敬な態度でも特に気にした様子はなく淡々と話すパラディオン。


「そりゃどう考えても無理だし」

「ふむ。無理であるならば仕方がない」


 意外とアッサリと引き下がるパラディオン。

 ……んなわけはなく。


「であれば貴様の持っておる知識の書を回収させてもらう」


 などと巫山戯たことを言い始めた。


「はぁ!? 駄目に決まってるだろ!?」

「知識の書は主が使命を果たす者に授けたもの。であれば使命を果たさぬ者から回収するのは当然であろう?」


 俺の意思なんか関係ない。

 やらないなら返せと。

 全くもって正論だとは思うが。


「カードコレクターからバインダーを回収しようとか……」

「この期に及んでも知識の書をバインダー呼ばわりするシュートのコレクター魂は尊敬するわ」


 ナビ子の呆れなのか尊敬なのか分からない呟きはさておき。

 カードコレクターにとってバインダーってコレクションの次に大事なもの。

 何があろうと手放す訳にはいかない。


 かといって、じゃあ神と戦いますってのは無理ゲーだし。

 こうなったら回収される前に逃げるしか……。


「元々知識の書は我が主が授けたもの。貴様がどこにいようと、我が主であれば回収することは造作もない」


 まるで俺の心を読んだかのようなことを言うパラディオン。

 つまり逃げても無駄だと。


「それは卑怯だ……ってか、いつでも回収ってこの世界に干渉しちゃ駄目なんじゃねーの!?」

「……回収だけなら過度な干渉にはならぬ」


 おや? 微妙な間があったけど……もしかして回収できないんじゃね?

 なら試しに逃げても……いやいや、確定じゃないんだ。

 そんな一か八かで逃げてバインダーを手放すことになったら困る。


「はぁ。こんなことなら旅行に行こうとか言わなきゃよかった」

「今更だけどね」

「ってかナビ子のせいだからな」

「何でよ!」

「だって旅行に行きたいと引きこもってた俺を外に連れ出しただろ」

「別にアタイは冒険に行きたいって言っただけだもん。それを言うなら海を選んだシュートが悪いんじゃない」

「それなら海竜石がここにあるって教えたギルマスが原因だな。あれがなきゃ海には行ってもこの海に来ることはなかった」

「……アンタね。それこそ責任転嫁すぎでしょ」


 いや、俺のコレクター心を擽るよう事を言ったギルマスが悪い。

 帰ったら文句言ってやる。

 ……無事に帰れたらだけど。


 ……はぁ。現実逃避はこの辺りにして。

 結局、1%でもバインダーを手放す可能性があるのなら、俺が取ることの出来る手段は一つ。

 神の使命に従って邪神を討伐すること。


「やっぱやるしかないか」

「……そこまでしてバインダーを手放したくないシュートのコレクター魂には本当に尊敬するわ」


 やはり呆れなのか尊敬なのか分からない呟きをするナビ子はさておき。


「分かったよ。邪神の討伐でも何でもやってやるよ」


 俺はそうハッキリとパラディオンに宣言した。


「ほう。よいのか?」

「ああ」


 バインダーのためには仕方ないしな。

 それに……本当にこの世界が邪神に滅ぼされても困るし。

 まぁ俺に出来るかは分からないけど。

 やると決めたからにはもう迷わない。


「であれば、まずは我を倒してみせよ」


 …………ん?


「どういうこと?」

「貴様が使命を果たす決意をしたことと、貴様が使命を果たすに相応しいかは別の話」

「つまり……実力を示せと?」

「然り」

「ちなみに……倒せなかったら?」

「資格なしである故、知識の書は回収させてもらう」


 なんじゃそら!?

 結局、パラディオンを倒さないといけないってこと!?


「貴様の実力……試させてもらうぞ!」


 こうして俺は有無を言わさずパラディオンと戦うことになった。

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