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第41話 ナビ子の帰還

「な、な、な……なんじゃこら~~~!!」


 5日振りに帰ってきたナビ子が大声で叫ぶ。


「また随分と古典的な驚き方だな」


 少なくとも小さい妖精の格好をした女の子が出していい言葉じゃない。

 というか、なんかナビ子は古臭いんだよなぁ。

 ナビ子を作った奴の趣味なのかな?


「そんなことはどうだっていいのよ! えっ? アタイ、5日のつもりだったけど、実はこっちでは1年くらい経ってたりするの?」


「はぁ? 何を言ってるんだ? こっちだって5日しか経ってないに決まってるだろ」


「じゃあ何でこんなに変わってるのよ~!!」


 ナビ子が驚いているのは図鑑の登録数。

 その数約450。

 ナビ子が日本に帰る前に見たときが200ちょっとだったから、倍以上増えている。


「だから言っただろ? 帰ってきたらビックリさせてやるって。ちゃんと合成100種は越えたから、レベル3になってると思うぞ」


 50以下だった合成は、100どころか150以上合成している。

 まぁ自分で確かめることが出来ないから、本当にレベル3になってるかは分からないが。


「モンスターカードだけで60!? それに鉄パイプしかなかったアクセサリーが30? スキルが30以上に……えええっ! 魔法も50越え!? もう意味わかんないよ!?」


「まぁ元々下地はあったじゃないか。俺はそれを合成させてただけだよ」


 だが俺の言葉はナビ子の耳に届かない。


「シュートおおお!! アンタ本当に何してんのよ!?」


 ナビ子が俺の襟を掴んでぐいぐいと詰め寄る。


「あの……ナビ子さん? ちょっと落ち着いて……」


「これが落ち着いていられるかあああ!! さっ吐けっ! 全部吐いてしまええええ!!」


 ナビ子のあまりの剣幕に、俺は旅のしおりを読んだこと、ラーニングで魔法を量産したこと、木材や石材で武器や防具を作り、魔法と合成させたことを白状した。


 ……分かっていたことだが、俺が旅のしおりを勝手に読んだことにナビ子は激怒した。


「もう、さいってー!!……エッチ! スケベ! 変態!!」


「いやいやいや! それはおかしいだろ!」


 最低までは許容できてもその後は違うと思う。


「おかしくないもん! ……ちょっとそこに正座しなさい!」


 ナビ子の有無を言わさない迫力に俺は正座をする。


「いいシュート? 乙女の秘密を勝手に見るのは駄目なことだよ。そこを分かってる?」


 いや、乙女の秘密って……そもそも旅のしおりって俺が自由に読んでいいもんじゃ……俺はそう言いかけるが、ナビ子に睨まれて言い淀む。


「なんか文句ある?」


「……いえ、何でもありません」


 ……俺ってばよぇぇ。


「あのね。アタイが一番怒ってるのは、シュートがアタイを信用してくれなかったこと」


「いや、別に信用してないわけでは……」


 むしろ頼りっきりなんだが。


「だまらっしゃい!!」

「はい! すいません!」


 俺は半分条件反射的に謝る。


「アタイは別に出し惜しみしているわけじゃないの。ちゃんとシュートのレベルに合わせて情報を出してるの。それでも、どうしても知りたいって情報はちゃんと言ったら教えてあげるよ」


 確かに……カード化スキルのレベルのこともちゃんと教えてくれた。


「だから……こんな風にこそこそしなくても、別にシュートが教えてくれって言ったらアタイはちゃんと教えたよ。それとも……やっぱりアタイが隠すと思って信用してくれないの?」


「そうじゃない! 信用してないとかそんなんじゃなく……俺はただナビ子がいない間にレベル3になって、驚かせたかっただけなんだ」


 ナビ子を信用してないわけじゃない。

 そこはちゃんと否定したかった。


「確かにめっちゃ驚いたけど……でも、シュートは最初から勘違いしてるよ」


「勘違い?」


「うん。アタイは驚くよりも……いつもみたいにシュートと一緒に合成の瞬間を喜びたかったよ」


 合成で何が出来るかのワクワク感。

 完成したカードの確認。

 今回俺は一人でやったけど……正直に言えば、ナビ子と一緒に話ながら合成していた方が楽しかった。

 ……ナビ子も同じ気持ちだったのか。


「ごめんナビ子……俺が悪かった」


 俺は心からの謝罪をした。


「うん、許す! だけど……今度からはちゃんと相談してね」


 ナビ子がはいっと両手を差し出すので、俺も右手を出す。

 ナビ子が俺の人差し指を持って、仲直りの握手をした。


「もし次似たようなことがあったら……」


 ナビ子の含んだ笑みに、二度と勝手に旅のしおりを読まないことを誓った。



 ****


「シュートの話を聞きたいけど……まずはアタイの報告からするね」


 仲直りも済んだので、気を取り直して、お互いの不在期間の話をすることにした。


「まぁアタイの方はそんなに話すことはないんだけど……」


 まぁ運営の話となると、俺に聞かせられないことはたくさんあるだろう。


「そういえば、俺以外にこっちの世界に来た人はいるのか?」


「ううん。まだみたい。でも……ランキングがずっと変わってないから、早ければ次の定例会の時までには誰か来てるかも」


 確かランキング十週連続一位が条件だったかな?

 俺がこっちに来る前は3週連続一位の状態だった。

 ってことは、現在は6週か、7週連続ってことだろう。

 次の定例会が一ヶ月後となれば……確かにこっちに来ているのかもしれない。


「もし来たとしても、それはここじゃないんだよな?」


「うん。別の場所。もちろん、ここと同じように、スタート地点は比較的安全な場所だけどね」


 一応スタート地点は配慮されているみたいだ。

 確かに……考えてみれば、この山だって一番手強かったのがゴブリンだ。

 そのゴブリンでさえ他所から移動してきたモンスター。

 ゴブリンがいなければ、かなり難易度が低い場所だろう。


「じゃあ、ここにアンブロシアがあったのも計算通り?」


 あれだけはスタート地点としては破格のアイテムだ。

 救済アイテムだったのかな?


「いや、流石にそれはないよ。運営はバックグラウンドが取りやすく、人里から離れていて、厄介なモンスターが居ないところを選んでいるだけ。だからシュートはかなり運がいいよ」


 それは本当にラッキーだったな。


「じゃあ山を下りるときに、必要なものは全部カードにして持って行っていいんだよな?」


「もちろんだよ」


 よしよし、これで旅は楽になるな。


「あっあとこれも渡しとくね」


 ナビ子は俺にカードを渡す。


「お土産だよ」


「おっありがとう」


 俺は礼を言って受けとる。

 カードはビールのカートンが2枚と家庭料理の料理本。

 それから……武器防具のイラストが書いてあるカード。

 武器は剣と槍と斧と弓。

 防具は鎧と盾。

 それから指輪のイラストのカードにその他と書いてある。


「料理本はページを切り取って変化(チェンジ)するとレシピカードになるよ。武器防具カードはジャンル別の型紙カード。それを使えば希望の武器が手に入るよ」


 武器防具のカードはレシピカードとは少し違うらしい。

 使い方は変わらないんだが、出来上がるものは、そのジャンルの中でランダムになる。


 例えば剣のカードと鉄を合成すれば、ブロードソードやショートソードなど、剣の中でランダムに完成するらしい。


 図らずしも俺が魔法と木の矢で方向性を示したのと同じ用途ってことだ。


「流石に最初からレシピは楽しすぎだって。でも鉄パイプみたいなのばっかじゃかわいそうだから、大まかなジャンルだけは区別してくれたよ」


 確かに……これくらいジャンルが分かれていたら、後はどうとでもなりそうだ。


「このその他ってのは?」


「これは大まかなジャンル以外がランダムで出るんだよ」


「普通の合成と違うのか?」


「剣とか鎧とかは出なくなるんだから、アクセサリーとか、鉄パイプは出やすくなるよ」


 いや、鉄パイプはもういいから。

 でも……そっか、完全ランダムよりは確率は上がるか。


「一応頼まれてた物はこんな感じでいいよね?」


「ああ。ありがと」


 ピッタリ10枚に抑えるとは流石だな。


「あと……流石にこれだけじゃあれだったんで、追加もあるよ」


 ナビ子が更にカードを取り出す。


「おおっ!? すごく気が利くじゃないか」


 俺はナビ子からカードを受けとる。


「へへ~ん。もっと誉めていいよ!」


 ……すぐに調子に乗らなければ、もっと誉めたかもしれないのに……

 俺はカードをかくに……


「おい、これはなんだ?」


「見て分からないの? …………ニンジンだよ!」


 ナビ子の言う通り、カードにはニンジンと書いてあった。

 ……段ボールに大量に入ったイラストで。


「多分シュートのことだから、ラビットAを酷使してるんじゃないかなと思ってね。ラビットAへのお土産なの」


「……そっか」


 俺へのお土産じゃなかったのか。

 なんか褒めて損した気分だ。


「そういえばラビットAは?」


「今は魔法の使いすぎで、カードの中で休んでいるよ。そろそろ回復してるんじゃないかな?」


「やっぱり無茶させ過ぎてたのね」


 やっぱりお土産を持って帰ってきてよかったとナビ子が言う。

 まぁニンジンは少なくなっていたから、ちょうどいいんだけど。

 ラビットAも……魔法を使い始めてから、更にニンジンの要求が増えたもんな。

 ニンジンだけは、いくらあっても問題ない。


 それに……ナビ子が帰ってきたことによって、レベル3のレシピ合成が可能となる。

 念願の料理本もあるし……ついに料理を合成できるようになった。

 これからは食材がいくらあっても困らない。


「ラビットAも進化してるから……後で紹介するよ」


 ラビットAだけじゃなく、古参連中はフェアリーとルナの両バタフライ以外、全員進化しているんだが。


「えええっ!? ラビットAも進化してるの!? もう! ちゃんとアタイが帰ってくるまで待っててよ!!」


「本当にごめんって。だけど、俺もカードモンスター達の圧力に負けてな。仕方なかったんだ」


 ゴブリンメイジを合成した時点で、古参連中から逃げる選択肢は存在しなかったもんな。


「じゃあラビットA達がどんな進化をしたのか……今度はシュートの方の成果を見せてよ」


 俺はナビ子に魔法やスキル、モンスター図鑑などを見せ……予定通り2日後に山を下りることにした。

ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。

とりあえずここで序章は終了となります。


明日以降は3話ほど、本編扱いですが、オマケ……といいますか、

ナビ子に説明の体として、魔法、スキル、モンスターの図鑑リストの話を投稿します。

リストといっても、いつものようにカード説明文ではなく、本当に名前のリストだけ。

あとはナビ子との会話が少しでしょうか。

本編は進みませんし、新規のカードの説明文に関しては、改めて本編で登場しますので、飛ばしていただいて問題ありません。

本編は8月3日土曜から投稿予定となります。

もしよろしければ、引き続きお読みいただければと思います。


また、ブクマや評価、本当にありがとうございます。

大変励みになっております。

また、誤字脱字報告もいつもありがとうございます。

相変わらず誤字が減らなくて大変申し訳ありませんが、本当に助かっております。


それでは今後ともよろしくおねがいします。

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