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第77話 海底楽園⑤

「うう~。ひどい目に遭ったであります」


 再会したエレーネは、拳骨でも食らったようで、頭をさすりながら涙目。

 マリーナの予想通り、たっぷり叱られたようだった。


「叱るのはいいけど、暴力はいけないわよねぇ」

「日本だと炎上案件ですね」

「きゅい! げんこつ良くない!」


 そんなエレーネの様子を見て好き勝手言うナビ子たち。

 ……それ、遠回しに昨日の俺をディスってないか?

 ラビットAはエレーネみたいに頭を抑えてるし。


「え~っと、それで女王はなんて?」


 このままだと本当に俺に飛び火しかねんと思い、エレーナを促すことに。


「ははう……女王は我の報告を聞き、御使い殿をサハギンごときと間違えるとは何事だと脳天に五発……」

「そんなことは聞いてない!」


 俺が聞きたいのはエレーネが受けた折檻じゃなくて、女王が俺たちのことをどう思っているのかってこと。


「もちろん女王も御使い殿が来訪されたことに、いたく喜んでいたであります。最上級のもてなしの準備をしていたので御使い殿も楽しみにしてるであります」


 ……最上級のもてなし。

 なんでだろう。

 普通なら嬉しくてテンションが上がる話なのに、微妙に不安になるのは。


「ごちそうもたくさん準備していたであります。思わず我もよだれが……」


 いや、料理に関しては心配してない。

 マリーナの家で食べたお茶とお菓子に、畑で採れた野菜も美味しかった。

 畑で楽しんでいた間も、俺たちに隠れてマリーナ以外のネレイドの騎士がせわしなく動いていたし。

 多分、俺たちがちゃんとここの食材を食べられるってことを城に伝えてたんだと思う。


 なので食事に関しては不安はないが……そこまでもてなすのって、珍しく客が来たからで、本当に神の御使いだと信じているわけじゃないよな?


 マリーナを始め、エレーネ以外は実際エレーネ以外は俺たちが神の御使いだって思っていない。

 悪人じゃない友好的な人族って認識。

 だから唯一神の御使いだと信じているエレーネの報告だとしても、女王は常識人って言ってたし、まさか本当に神の御使いがやって来たなんて思ってはいないはず。


「おそらく対外的なもので、女王も気づいていると思いますよ」


 俺の不安に気づいたのかマリーナがそっと耳打ちする。

 要するに神の御使い扱いが都合がいいからそうするってことか。

 まぁ本気にさえされてなければそれでいいか。


 ここで耳打ちするマリーナを見て怪訝そうな顔をするエレーネ。


「むむっ御使い殿。えらくマリーナと仲良くなったでありますな」

「えっ? そりゃ色々と良くしてもらったし」


 というか、勘違いせずに常識的なマリーナの方が話しやすいし。


「マリーナ。これからは御使い殿のお相手は我がするので、マリーナは持ち場に戻れ」

「はっ。それでは御使い様。失礼します」


 流石に騎士団の隊長に逆らうわけもにもいかず、マリーナはビシッと敬礼して俺から離れていく。


「さっこれからは存分に我を頼ってくれであります」

「……ああ」


 とりあえず頼る前にその変な敬語を辞めてくれと言いたい。

 マリーナによるとエレーネは騎士団の隊長兼女王の娘ということもあって、普段は敬語なんか使ったことがない。

 が、神の御使い相手に敬意を払うためにも、慣れない敬語を……新入りが使っていそうなあります口調になっているのではないかと言っていた。

 実際に新入りがあります口調を使っているかは……まぁお得意の思い込みでそう思っているのだろう。


「それでは早速城に向かうであります!」


 意気揚々と出発するエレーネの後ろで内心でため息を吐きつつ付いていった。



 ****


 ネレイドの城に到着した俺たちはすぐに女王と謁見することに。

 城内はマリーナの家同様、海水は膝下程度までしかなく、空気があるだけで俺たちにとっては過ごしやすい環境。


 女王がいる謁見の間も同じように空気のある空間で。

 そこにいたのは長い青髪が印象的な三十代前半くらいの凛々しい顔立ちをした美しい女性。

 おそらく珊瑚で作られたのか、随分とゴツい杖を持っている。

 ……もしかしてエレーネはあれで頭を五発も叩かれたのか?


 ただ、その杖や見惚れそうな美貌もさることながら、それ以上に気になるのは下半身。

 彼女は……椅子に二本足で座っていた。


「神の御使い様御一行ですね。わたくしはこの国を治めているエライネ。ようこそお越しくださいました」


 ネレイドの女王エライネ。


「エライネ……随分と偉そうな名前ね」

「この状況でお前はそんな感想しか出ないのか」


 ナビ子の呟きに思わず突っ込む。

 二本足とかめっちゃ美人とか思ったより若いとか、もっと他に突っ込むところがあるだろうに。

 それに偉そうってならエレーネの方がよっぽど偉そうじゃ?

 偉いねってなんか小さい子を褒める時に使いそうだし。


「そういえばあの人ってシュートの好みドンピシャじゃない?」

「ほう? シュートはあんな感じの女性がタイプなのですか」

「……お前らは少し黙ってような」


 確かに俺の好みは少し年上の知的美人のお姉さんだから、エレーネやマリーナ、他のネレイドもそうだが、十代後半から二十代前半くらいの見た目よりも、大人びた知的美人って印象の女王の方が好みだけどさ。

 小声だから聞こえてないだろうけど、本人の前で言うなよと。

 しかも鈴風まで興味を持っちゃってるし。


「あらあら。もしかしてわたくしは御使い様に見初められたのかしら?」


 バッチリ聞こえてたし。

 くっそ恥ずかしいんだけど……えっ? これ、どうすりゃいいの?

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