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第66話 似た者同士

 目の前には星5のスキルですら見破られない入口。

 中にいるのはラビットA曰く騎士団っぽい人魚。

 そして周囲に散らばっていたのは海竜石。

 それが意味するところはただひとつ。


「つまり……この奥に海竜がいるってこと?」

「……でしょうね」


 奇しくも昨日考察した話が正解だったってことだ。


 人魚が騎士団ってのは、海竜の従者。

 グリムのところのコボルトみたいなところだろう。


「もしくは海竜と戦っている人魚騎士団かも」


 ……それもあり得るか?


「どちらにせよマジで気を引き締めないとな」

「そうだね」


 俺とナビ子は神妙に頷く。


「きゅしし。これ、じーちゃのおみやげー!」


 一方で周囲に落ちている海竜石を拾って喜んでいるラビットA。

 ……暢気すぎる。


「なぁラビットA。この奥ってどうなってるか分かるか?」

「きゅらな~い。だってバレるから入ってないもー!」


 どうやら尾行した時も中には入ってないようだ。

 確かに尾行がバレる可能性は高いから、それが正解なんだが……それならさっきも手を入れるなよと。

 当然のことだが入口の偽装すら見破れないのだから、俺たちのスキルでは中の様子は窺えない。

 おそらく結界的なものだと思うので、侵入者がいたらすぐにバレるはず。


「今頃、警報がなって侵入者ーとか騒いでるかも」


 ……あり得る。


 まぁラビットAが手を入れずとも、入口付近をウロウロしている時点でバレているかもだが。


「なぁ。中で待ち受けてると思うか?」

「入った瞬間に槍持った人魚の軍勢が襲いかかってきたりして」

「きゅっとね。海竜が口をあーんしてるかも!?」

「入ると外に出られない罠が……」


 ……どれも嫌だなぁ。


「きゅう? シュート。どうする? 入る? 入る?」


 何故今の会話で入りたがろうとする?

 まぁ最終的には入るだろうけども。


「そうだなぁ……中に入るのは明日かな」

「きゅええ~」

「なっ何故ですか!?」


 俺が明日と言ったことでラビットAと鈴風から抗議の声が上がる。


「いや、どうせなら万全の体制で臨みたいじゃないか」


 今日は既にナビ子を回復させるためにクールタイム短縮の効果を二回とも消費している。

 もちろん人魚とも海竜とも戦わずに終わるならそれに越したことはないが、万が一を考えるとやはり万全を期して臨みたい。


 それに相手の出方も知りたいし。

 今は相手も臨戦態勢かもしれないが、明日になれば落ち着いてるかもしれないし。

 それに様子を見に外に出てきてくれるかもしれない。

 そこでフレンドリーに話しかけて、こちらに敵意がないことを伝えれば……。

 うん。今となったら行くよりも来てもらう方がありがたいかも。


「それに中に入ったら、いつ休めるか……飯だっていつ食えるか分からんぞ」


 少なくとも昨日の野営みたいに、ぶくぶくハウスで食事……は難しいだろう。

 幸いこの辺りはデカい岩がごろごろと転がっている。

 岩陰からアジトの入口を監視できるだろう。


「……仕方ありません」

「きゅーだね」


 流石にご飯は大事だと渋々納得する鈴風とラビットA。

 ってことで、少し離れた岩陰でひと晩様子を見ることにした。


「ぶくぶくハウスとかくれんぼ~!」


 ぶくぶくハウスとかくれんぼという姿を消す魔法を使うラビットA。

 また知らない魔法を……まぁ名前だけでどんな魔法か分かるけどさ。


「どんなに姿を消したところで、バレバレなんでしょうが」

「やらないよりはマシだろ」


 あれだけ高レベルの偽装スキルを持っているんだから、同レベルの探知系スキルを持っていてもおかしくはない。

 まぁ気休めだな。


「ねーねーシュート。じーちゃのお土産集めてていーい?」

「……かくれんぼの範囲内なら」

「きゅい!」


 ったく。本当に自由というか。


「きゅふふ~ん。じーちゃのためならえ~んやこ~ら」

「ラビットAってば、本当にガロンのことが好きよねぇ」

「きゅみぃ。じーちゃ、大好き!」


 ……俺はそんなことより、その変なかけ声をどこで覚えたかが気になるんだが。


「では、わたくしは明日に備えて武器の手入れをしましょう」


 そう言って鈴風は何もないところから武器を取り出す。

 う~ん。整理整頓の能力ってのは知っているけど……収納系のスキルって、ある意味カードよりも不思議だよな。


 それにしても……次々と武器が出てくる。

 薙刀だけでなく、槍や刀、弓に……扇子?

 薙刀も海鳴刀と静嵐刀の二本以外にも複数あるし。


「なぁ鈴風。おまえ、いったいいくつ武器持ってんの?」

「さぁ? 100を超えた所で数えるのを止めました」


 ってことは、少なくとも100は超えていると。

 ……そんなに多くの武器、どうやって集めたんだろう?

 普通に買ったと信じたいが……まさか弁慶よろしく刀狩りでもしたんじゃなかろうか?


 ……答えを聞くのが怖いので、質問するのはよそう。


「それでも一番の愛刀はこちらでしょうか」


 鈴風はそう言って静嵐刀を手に取る。

 帝都でもずっと持ち歩いてたもんな。


「わたくしが風属性と雷属性に隔たっているからでしょうか。風属性の静嵐刀とは相性がよく……」


 やれ切れ味がとか、軽さがとか、魔力の通りがとか、鈴風が静嵐刀について語る。

 珍しい……というか、こんなに饒舌な鈴風は初めてだ。


「やっぱ。似た者同士よね」


 そんな鈴風を見てナビ子が感慨深げに言う。


「ちなみに聞くけど、誰と誰が似た者同士なんだ?」

「決まってるじゃない。アンタと鈴風がよ。ほら、鈴風が語ってる時の姿……シュートがカードを語る時とそっくりよ。やっぱジャンルは違っても、プレーヤーって似た者同士だわ」


 ……ほっとけ。

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