第39話 魔法合成
ナビ子不在の2日目。
「うわぁ……」
朝起きると、外には大量の死体があった。
俺が寝ている間にカードモンスターたちが運んできたようだ。
死体の大半はゴブリンだ。
ホブ達がよくやってくれているようだ。
他にも骨や魔石も……多分ゴブリンが食料にしたモンスターのだろう。
あの時やられていたワイルドディアの魔石もあるかな?
ゴブリンとは別の山には……おっホーンラビットの死体がある。
ラビットAがいなくても、アイツ等は頑張っているみたいだ。
他にも蝶やら蜂やらいつも通りのモンスターに、リスやワームの死体もある。
どうやら今まで合成できなかったモンスターも頑張っているようだな。
それから……おっ枝付きでクコ、チコ、リコの実がある。
3リスが気を利かせて持ち帰ってくれたようだ。
これで3つの実も毎日量産が可能……と。
というか、これ……改めてすごい光景だと思う。
誰に見られたら、それだけで白い目で見られそうだ。
まぁこんな場所で目撃はされないだろうが……死体が腐敗したり、魔素に還元される前にさっさとカードに変えてしまおう。
とりあえず今回は解体はせず、魔石だけ取り出して、残りは死体としてカード化した。
……きっと時間があるときに解体するだろう。
にしても……この調子で山狩りしていったら、1週間後にはこの山にモンスターがいなくなるんじゃないか?
……生態系が崩れたらどうしよう?
「まっ細かいことは気にしたら駄目だな」
今俺が考えても仕方がないし……ナビ子が戻ってきたらそれとなく聞いてみよう。
****
「きゅぺぇ……」
昨日に引き続きラビットAが力尽きる。
死体を片付けた後、俺は日課を終え、昨日に引き続き魔法の量産を行った。
一晩休んだら、ラビットAも元気になっていた……が、早くもばたんきゅー状態。
昨日はこの状態で魔力回復ポーションを飲ませたが……流石に今日それをするのはラビットAを酷使しすぎる。
「さて、ラビットA。とりあえずアンブロシアでも食べるか?」
「きゅみぃぃ」
ラビットAが複雑な表情を浮かべる。
魔力がないので食べたいんだろうが、食べたらまた魔法を使わないといけないと思っているようだ。
「今日はもう魔法を使わなくていいぞ」
「きゅぴっ!?」
俺がそういうと、ラビットAがアンブロシアに飛びついた。
……まだまだ元気じゃないか。
「今日は今からモンスター合成の時間だからな。もしかしたらラビットAも楽できるかもな」
合成によって魔法が使えるモンスターが誕生するかもしれない。
「きゅう?」
まぁラビットAは分かってないみたいだけど。
とりあえずラビットA以外のカードモンスターは出払っているから、さっき手に入れた魔石をモンスターにする。
最初はゴブリン。
魔石の数は40ある。
アイツら……昨日一日で半分くらい倒してるんだな。
今回はスキルを気にせず全てモンスターにする。
スキルよりも、ゴブリンの数を揃えたい。
ゴブリンの半分をホブゴブリンの合成にする。
これで20のゴブリンと10のホブゴブリンになるはず。
だったのだが……
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ゴブリナ
レア度:☆☆
固有スキル:威圧
個別スキル:器用
ホブゴブリンのメス。
ゴブリンはメスが少ないため、中々出会うことはないだろう。
――――
まさかゴブリンにメスがいるとは思わなかった。
見た目ゴブリンの時点では見た目ではオスとメスの区別はつかなかい。
まぁ素材の睾丸があるかどうかで判断はつくだろうが……最初のゴブリンは全員オスだったし、今回は魔石しか取り出していないから分からなかった。
そして一応ゴブリン達は全員全裸ではなく、上下に服……というにはお粗末だが、布製品や革製品を着用していた。
そのため、現時点でもカードのイラストを見ても全く判断がつかなかった。
残ったゴブリンにメスはいるのだろうか?
いたら……その個体はホブゴブリンじゃなくてゴブリナに進化させたいな。
ゴブリナになると、ホブゴブリン同様身長が伸び、明らかに女性と分かる体つきになっていた。
……が、肌の色は緑だし、ゴブリンはゴブリンだから、女性的な肉体になっても特に思うところはない。
これ……ゴブリナ同士を合成させると、人間の女性に近づいたりするかな?
試してみたいところだけど……誰がメスなのか分からないからゴブリナを合成できない。
10体のホブゴブリンを作ろうとして、現時点で5体を合成、そのうち1体がゴブリナに進化した。
ゴブリナのレシピはメスのゴブリン2体……オスとメスで合成するとホブゴブリンになってしまう。
こうなってくると、間違ってメスを使わないように、ホブゴブリンの量産も勿体なくてできなくなる。
「一旦ホブにするのは諦めて、今のホブを更に進化させるか」
「きゅきゅい!!」
だがそれにラビットAが異議を唱える。
次の進化をするなら自分が先だろうと言いたいらしい。
「ラビットAは……ホーンラビット達が戻ってきたら、進化させるよ」
「きゅむ~」
どうやら納得できないらしい。
どうせ進化させるのは決定してるんだし、なぜそんなに一番になりたがるんだ?
「ふぅ、仕方ないな。じゃあ別の合成を先にするから……ラビットAは自分が合成したいと思うパートナーを迎えに行ってこい。急がないと……合成が終わってゴブリンに先を越されるかもしれないぞ」
「きゅきゅっ!!」
ラビットAは慌てて森の中へ入っていく。
仕方がない。少しだけ待つか。
さて、別の合成だが……魔法の合成をやってみようかな。
まずは定番の同じ魔法同士の合成。
ファイアとファイアを合成させて……
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フレイム【火属性】レア度:☆☆
火属性魔法。
指定した場所に火柱を発生させる。
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ファイアの強化版って感じの魔法ができた。
他の属性も確認してみる。
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フラッド【水属性】レア度:☆☆
水属性魔法。
大量の水を発生させる。
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ブラスト【風属性】レア度:☆☆
風属性魔法。
突風を巻き起こす。
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サンドショット【土属性】レア度:☆☆
土属性魔法。
砂の塊を射出させる。
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キュア【光属性】レア度:☆☆
光属性魔法。
対象の状態異常を回復させる。
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ポイズン【闇属性】レア度:☆☆
闇属性魔法。
対象を毒にする。
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ふむ。どれも強化版って感じだ。
しかし……魔法ってもっとたくさん種類があるよな?
多分星1でもたくさんの魔法があるはずだ。
だけど魔法同士を合成させたら星2になりそう。
魔法1枚と合成カードで試してみようか?
それだと同属性で同レア度の別の魔法に変化しそうだ。
それもいいが……いや、この際だから別の方法を試してみるか。
ひとつ前々からやってみたかったことがあったんだよなぁ。
俺は素材カードから木の枝を取り出す。
レア度もない……ナビ子にゴミ扱いされたカードだ。
それと、そこら辺に落ちている小石を合成させて……
「おっ一発で成功だ」
――――
木の矢【武器】レア度:☆
何の変哲もないただの矢。
野生の動物を仕留めることは出来るかもしれないが、モンスターを仕留めるには威力が足らない。
――――
枝の見た目と、矢尻用の石さえあれば合成でも失敗しないんじゃないかなぁと思ったが、無事に成功。
ちゃんと矢羽まで付いている。
矢羽の分が魔力で補ってるんだろうなぁ。
武器の合成は完全にランダムだから鉄はもったいなくて使えないけど……枝や木材、石ならこの辺りにたくさんある。
木剣や木刀なんかじゃモンスターと戦うには物足らないだろうから、後回しにしていたが……武器制作の練習にはなると思っていた。
そしてこの程度の武器なら、合成で使っても勿体ないと思わない。
さて、早速この矢とファイアの魔法を合成させて……
――――
ファイアアロー
【火属性】
レア度:☆
火属性の初級魔法。
炎の矢を放つ。
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うん、やっぱり出来た。
魔法の定番って言ったら〇〇アローや〇〇ジャベリンだもんな。
矢や槍で出来ると思ったんだ。
後は……盾でガードとかもいけるかもしれない。
まぁ木材で対応する武器や盾を合成するのがランダムなので、魔法と合成するまでが大変なんだが。
ファイアアローのレシピを確認すると……やっぱりファイアの魔法だけでもいけたっぽい。
木の矢は必要なかったってことだ。
まぁ矢がある分、方向性が決まったって感じだろう。
レシピカードと似たような使い方かもしれない。
ファイアアローとファイアで星2の魔法が出来たりするだろうか?
それにファイアアロー同士でも……
ファイアアローはラビットAがいれば量産は可能だろう。
今は別の属性でも星1の初級魔法の種類を増やして……それから別属性同士の合成もやってみたいな。




