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第62話 シュートの修業

 久しぶりに戦いたいとか、何であの時の俺はそう思ってしまったのか。

 余計なことをしたせいで、鈴風から修業をつけてもらうことになってしまった。


 きっと鈴風のことだから、某軍曹並みの地獄の訓練が待っているんじゃ?


「正直なところ、シュートの素質は悪くありません。それどころか、身体能力に関しては一級品です」


 おやぁ? 

 てっきりウジ虫以下とか罵倒も覚悟していたのだが……まさか罵倒じゃなくて褒められるとは。


「筋力も体力も……瞬発力は微妙ですが。筋力と体力に関しては、下手すればわたくしよりも上かもしれません」


 しかも自分より上とか……まぁ身体能力に関して言えば、単純に霊薬のせいなんだけど。

 最初の山で見つけたクコの実、チコの実、リコの実の三種から合成で作れる、飲むだけで筋力、体力、魔力が1%増幅する霊薬。

 一年以上飲み続け、さらに筋トレもやってたから……そりゃあ身体能力にだけは凄いことになっているだろう。

 ……最近はサボり気味だけど。


「それだけの身体能力があるのなら、十分強くなるでしょうが……シュート、貴方は強くなるつもりはないのでしょう?」

「もちろん」


 当然とばかりに即答する。

 俺は死なない程度に自分の身さえ守れればそれだけで十分なんだから。


「ですからシュートには……最低限の体捌きとナビ子とのコンビネーションを鍛えてもらいます」

「「コンビネーション?」」


 急に名前を呼ばれたナビ子と俺が同時に鈴風に尋ねる。

 その鈴風はナビ子の方に視線を向ける。


「ナビ子。貴女は何故先程の戦闘でシュートをサポートしなかったのですか?」

「えっ? えっ?」


 突然鈴風に責められ困惑するナビ子。


「貴女は魔法が使えたはずですよね?」

「そ、そりゃ使おうと思えば使えるけど……」


 ナビ子は代理人スキルで魔法系のスキルを借りることも出来るし、カード化スキルでカードから魔法を使うことも出来る。


「補助魔法や防御魔法、相手への妨害魔法を使えば、シュートはもっと簡単にモンスターを倒せたはずですが……何故使わなかったのです?」

「そ、それは……」

「わたくしの相棒であるムサシは魔法が使えずとも、わたくしが実力を発揮できるように万全のサポートをしてくれます」

「今までは探知やクナイで足止め程度でござったが、セッシャ、先日忍術を会得したゆえ、足止め以外にもサポートできるようになったでござる」

「えええっ!? クナイって……ムサシ、そんなこともしてるの?」

「主をサポートのは当然でござろう?」


 ムサシの言葉に驚愕するナビ子。


「なるほど。確かにナビ子は俺を助けてくれなかったもんなぁ」

「あれはシュートがアタイを囮にしようとしたからでしょうが!?」


 うん。あれは俺の方に原因があるな。


「確かにあの漫才はシュートが悪いですが……ナビ子もシュートの相棒でしたら、何かしらのサポートをすべきだったのでは? シュートもそのつもりでナビ子を連れて行ったのでしょう?」


 いや、単純に道連れにしたかっただけで、サポートなんて全く考えてなかったけど……。


「そうだなぁ。ナビ子がサポートしてくれたら、もう少し早く倒せてたかもなぁ」

「アンタ……絶対に鈴風に乗っかってるだけでしょ」


 そりゃ、矛先が俺じゃなくナビ子に行ってるんだから、全力で乗っかるべきだろ。

 それに……ナビ子がサポートしてくれるなら、それに越したことない。


「じゃナビ子は俺のサポートをしたくないと?」

「……そんなことは言ってないじゃない」


 つまりナビ子もサポートしてくれると。


「そこでシュートとナビ子には実戦でコンビネーションを鍛えたいただきます。強くなるためではなく自分たちの身を守るために」


 思った以上に鈴風が俺たちのことを考えていてくれて驚いた。


「そういうことなら異論はないかな」

「アタイも……それなら」


 マジで役に立ちそうだし。

 でも実戦でって……具体的にはどうやるんだろ?


「そうですか。それではウサコが戻るまで少し待ちましょう」

「あれっ? そういえばラビットAはどこ行った?」


 いつの間にかラビットAの姿が見えない。

 鈴風と話している間にどこかに行ったんだろうが……単独行動でどこに行ったんだ?


「ウサコにはシュートの相手を探しに行ってもらっています。そのモンスターを先程の銃と星2以上の攻撃魔法を使用禁止で戦っていただきます」


 ……実質攻撃手段を封じられたんだが。

 星1だけの攻撃魔法でどうしろと?


「それから……その乗り物も禁止です」

「うえええ!? ジェット君も!?」

「当然です。シュートの体捌きも鍛えると言ったでしょう」


 確かに言ってたけども!?

 ジェット君がいないとなると、機動力を失ったも同然だぞ。


「最後に……わたくしがいいと言うまで戦い続けなさい」

「……戦い続ける?」

「……倒すんじゃなくて?」


 いや、倒す方法は封じられてるんだけども。

 鈴風がいいと言うまで倒さずに避けるか防ぐかしろと。

 ……野生の巨大モンスターを相手に?


 くそっ一瞬でもまともな修業かと思ったが…………やっぱり地獄の修業じゃないか。

 そう絶望しながら待つこと数分。


「きゅっきゅいー! ただいまー!」

「ただいまーって……えええっ!?」


 コールに乗ったラビットAが巨大なイカを引き連れて戻ってきた。


「ままま、まさかあのイカを相手にしろって!?」

「良かったですね。色もの相手じゃありませんよ」


 確かに牛みたいな色ものじゃないけども!?

 武器も攻撃魔法もジェット君も封じられて、イカの触手攻撃に抗い続けろと!?


「きゅい! シュート、ターッチ!」


 ラビットAが俺にタッチして、そのまま通り過ぎていく。

 鈴風は既に俺から離れて……くそっやるしかないのか!?


「ナビ子……ちゃんとサポートしろよ」

「シュートこそ、どんなサポートが必要かちゃんと言いなさいよ!」


 ……こんなんで、本当にコンビネーションが鍛えられるのか?

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