第61話 戦闘を終えて
「ふぅ。何とか倒せたな」
久しぶりの戦闘だったけど、無事アクアボムでシータウルスの撃退に成功。
シータウルスをカードにしたところでナビ子がピョコッと顔を出す。
「危ないわねぇ。本当、ギリギリだったじゃない」
「勝てさえすりゃギリギリでもいいんだよ」
そう。勝てればよかろうなのだ。
というか、ナビ子も少しは手伝ってくれてもいいのにさ。
結局、最初から最後までポケットに隠れていただけなんだよなぁ。
まぁいい。
これで俺もやれば出来るということを鈴風とラビットAにアピールできたはず。
俺は意気揚々と二人の元へ。
「あんなの相手に手こずるとは情けない」
「きゅート、あれズルい!」
……あれぇ?
俺の予想ではお疲れと出迎えてくれるはずだったのに。
待っていたのは二人の不服そうな顔。
俺の地位向上は?
「ラビットA。俺の何が狡いんだ?」
「てっぽー。アクアボムがばびゅーんって!」
なるほど。
本来、アクアボムは機雷。
その場に設置する罠的な用途が主流。
投げようものなら、海流で上手く命中しないし、投げるスピードによっては水疱から中身のフレアボムが飛び出してしまう。
だから水中専用の魔法にも関わらずラビットAは使用してなかった。
そもそも罠で待ち伏せるような性格じゃないからな。
その点、ラビットファイアはアクアボムは魔弾に詰め込められていたから、水疱から飛び出る心配はないし、スピード、威力も申し分ない。
……初めて魔法でラビットAよりも優位に立てた気がする。
「きゅむむ……いいもんいいもん。自分で作るもー!」
作るって……銃を? それとも改造アクアボムを?
まぁ……無茶だけはしないでいただけたら。
まぁラビットAの不満は理解できた。
一方で鈴風の方は……。
「まさかシュートがこんなにもクソ雑魚だったとは……」
「クソ雑魚言うなし」
なんてことを言うんだ。
そりゃあ鈴風に比べたら俺の方が弱いけどさ。
しかしながら、少しだけ言い訳させてほしい。
手こずったのは事実だけど……それは相手のせいもあると思うんだ。
だってさ。今まで魚だのクラゲだのドラゴンだの……ある意味王道ばっかでさ。
それなのに牛て……何で俺だけあんな色ものが相手なんだと。
そもそもの話、シータウルスをソロで撃退できる冒険者なんて存在すると思う?
そう考えると、俺だって十分超人の域に達してると思うんだ。
ったく。自分基準で考えないでほしいよな。
「これは……少しシュートを鍛えなければ……」
ブツブツと不穏なことを呟く鈴風。
「いやいや、俺は別に強くなりたいわけでは!?」
鈴風が鍛えるとか……死ぬ。絶対に死ぬ!?
「いいえ。このままでは足手まといになりかねません」
「大丈夫! ジェット君とかセレンがいるから!」
というか、どんな状況を想定したら足手まといなんて状況になる?
鈴風クラスのモンスターが存在するとでも思っているのか?
「きゅートはズルっ子だから、てっぽーに頼らない戦いをべんきょーすべき」
お前はラビットファイアに嫉妬しているだけだろ!?
「幸いシュートを鍛えるのにこの辺りのモンスターは丁度よい相手」
丁度いい相手って……巨大モンスターが!?
いやいやいや、マジで死ぬって!?
俺の言い分なんて聞く耳を持たない鈴風とラビットA。
「こうなったら、もう逃げらんないと思うよ。観念して鍛えてもらったら?」
「……だよなぁ」
まさか一回戦っただけで、こんなんなるとは。
空気とか地位向上とか欲をかかずに、空気のままでいればよかった。
「ただな……ナビ子。俺が修行を受けるってことは、お前も一蓮托生だからな」
「へっ!? アタイは関係ないって!?」
ナビ子が慌てて逃げ出そうとするところをふん捕まえる。
「いやあああ!? 勘弁してえええ!?」
さぁ観念して一緒に地獄を見ような。




