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第58話 巨大モンスター海域

 海底探索二日目。

 前日の予定通り、巨大モンスターの海域へ。


 道中は昨日ジェット君たちが倒してくれたからか、あまりモンスターは現れず。

 現れても新規モンスターはいなかった。


 さらに巨大モンスターの海域に近づくと、モンスターは全くと言っていいほど登場しなかった。


「やっぱり強いモンスターがいるって分かっている場所には近づかないみたいだね」


 巨大モンスターがいる付近には普通のモンスターは近づかない……ますます俺が昨日言った海竜がアクアパッツァ近海にいるって仮説が現実味を帯びてくる。


「きゅっきゅきゅー。どっらごん、どっらごん」

「海竜……ふふっきっとブラックドラゴンよりも手強いんでしょうね」


 ……若干二名は早くも海竜のことで頭がいっぱいのようだが。

 ったく。それ以前に巨大モンスターのことについて考えてほしい。



 巨大モンスターの海域に入る前に、一旦水深150メートルから水深30メートル付近まで上昇。

 暗い場所で入ってそうそう遭遇ってのは怖いから、明るい場所から巨大モンスターの海域へと入る。


「シュート! あっちからおっきなモンスター!」


 早速お出迎えのようだ。

 姿はまだ見えないが、領域内に獲物が入ったのを嗅ぎつけたのか、こっちに向かっている様子。


「わぁ! シュート、ドラゴン!」

「えっ!? ドラゴン!?」

「よし、わたくしに任せなさい!」


 鈴風が臨戦態勢を取る。

 もちろん俺たちも油断はせずに身構える。

 そして数秒後、ラビットAが指した方角から長細い……ウミヘビみたいなモンスターが。

 俺はすぐさまハイアナライズ。


 ――――

 Gイール

 レア度:☆☆☆


 巨大ウナギ。

 獲物に巻き付いて絞め殺す。

 ――――


「……ラビットA。あれはドラゴンじゃない。ウナギだ」

「きゅれぇ?」


 って、ドラゴンじゃなかったからって、安心している場合じゃない。


「えええっ!? デカっ!?」


 いや、マジで。

 見ただけでグランドワーム以上の大きさって分かるぞ。


 あんな大きいの……どうやって倒すんだ!?

 そう思って鈴風を見る。


「ドラゴンでないのは残念ですが……」


 そう言って鈴風は昨日何度も見た得意の飛ぶ斬撃。


「どれだけ大きかろうが、所詮はウナギ。であれば……的が大きい分、むしろ倒すのは容易い」


 鈴風の放ったその一撃は、あっさりとウナギの頭を切り落とす。

 いや、マジで凄いんだけど。


「……大きいから倒すのが容易いんだって」

「……アタイ、小さくてよかったかも」


 いや、その感想はおかしいが……まぁ気持ちは分からんでもない。

 にしても、大きかったら硬かったり届かなかったり大変だろうに……そっか。

 どんだけ大きかろうと、鈴風には全く関係ないのか。


「きゅい! 負けな―もん!」


 そんな鈴風に対抗意識を燃やすラビットA。

 この様子だとラビットAも問題なく倒せそうだ。


 もちろん二人だけに任せるわけにはいかない。

 せっかく巨大モンスターが相手なんだから、俺も巨大モンスターを呼ばないと。


 ――――

 ヒュドラー

 レア度:☆☆☆☆

 固有スキル:竜、水の極意、超再生、猛毒

 個別スキル:水中移動、適応力、威圧


 ドラゴン系上級モンスター。

 水辺に棲息する多頭竜。

 年を追うごとに最大九つまで頭の数が増えていく。

 水陸どちらでも活動することが可能。

 多頭から吐き出される氷結ブレスと猛毒ブレスが驚異。

 だがそれ以上に脅威なのが、ヒュドラーの再生力。

 一つの頭を斬り落とすと、二つになって再生する。

 ――――


 今でこそタイラントワームに負けてしまったが、この間まで俺のモンスターで一番大きいモンスターだったヒュドラー。

 能力だけ見るとアホみたいに強いのだが……やはりデカすぎてあまり表には出せないモンスター。

 ちなみにウチのヒュドラーは頭が五本なので、小型の方みたいだけど。

 九つの頭まで成長すると、どれだけの大きさになるのか。


 説明文にあるように水陸両用だが、水中ではメイン攻撃のブレスの威力が半減。

 猛毒のブレスに至っては海水が毒で汚染されて……きっとメガロバラクーダの比じゃない。

 まぁそれでもGイール程度のモンスターには負けないだろう。

 そしてもう一体。


 ――――

 カルキノス

 レア度:☆☆☆☆

 固有スキル:水の覚醒、水疱、硬質化、怪力、強靭

 個別スキル:砂隠れ、砂泳、適応力


 クラブ系上級モンスター。

 別名キングクラブ。

 10メートルに及ぶ巨大なカニでクラーケンの脚すら引きちぎる。

 ――――


 説明文のような10メートル級ではないものの、脚を入れると二階建てバスくらいの大きさはある。

 もしクラーケンに出会うことがあれば、是非とも脚を引きちぎってもらいたいものだ。


「ウナギよりもその二体の方が手応えがありそうですね」

「……今は絶対に駄目だからな」

「失礼ですね。わたくしだって分別はあります。……が、今はということは、後ほど必ず時間を作っていただきます」

「……いずれな」


 ともあれ今は探索が先。

 Gイールを皮切りに、巨大モンスターが次々とやってくる。


「キングトータス! 星3、めっちゃ硬いらしい!」

「ほぅ。斬りごたえがありそうですね」


 巨大な亀を相手に鈴風が薙刀一本で対峙。

 ……まぁ大丈夫だろう。


「Gプリン! 星4、透明のアメーバーみたいなやつ! 物理攻撃無効っぽい。核を叩け!」

「きゅぴ!? プリン!? おいしーの!?」

「お馬鹿! 食べ物じゃない」

「きゅぴぇ……」


 ちょっと不安だが、物理攻撃が効かないみたいなのでラビットAに頼るしかない。


「星3、シーサーペント!? ヒュドラー……いけるか?」

「…………」


 言葉はないが、代わりに全ての首が頷いて前進する。

 相手は頭が一つのウミヘビだから、ヒュドラーが負けるはずない。


「星3、シードレイク……大丈夫か?」


 問題ないとばかりにカルキノスがハサミを鳴らす。

 プレシオサウルスみたいな竜を相手にするカニ。


 あっちこっちで大海獣決戦が始まる。


「……アタイたちって完全に空気よね」

「……今更だろ」


 う~ん。そろそろ俺も一回くらい戦っておくべきか?

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