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第38話 量産

 俺はラビットAに現時点で持っている魔法を全て覚えさせた。


 そしてそれをラビットAに唱えさせて、片っ端からカードにしていく。


「いやぁ、まさかこんなに簡単に魔法カードが手にはいるなんて……」


 材料も何もなく魔法カードが手に入るなんて……なんかチートとかバグとかを使っている気分になる。

 まぁだからと言って控えはしないけど。


 残念ながら雷属性と無の属性はないが、それ以外の属性は無事に量産に成功した。


 苦労したのは火と風の魔法。

 火にも直接触れる必要があるので、火傷をしながらカードに変えなくてはならない。

 まぁ火傷はその都度ポーションで治したけど。

 本当はラビットAのヒールで治してもらって、ついでにカードにすれば一石二鳥……そう思ったのだが、カードにするとヒールが無くなり、火傷を治すことが出来なかった。

 それなら回復終了直前にカードに……と思ったが、流石にそれも無理だった。

 なので、回復はポーションでまかなう。

 まぁポーションの性能も確かめられたし、良かったと考えよう。


 そして火とは別の意味で大変だったのが風。

 何せ目に見えない魔法をカードにするから、どこを触ればいいか分からない。

 風が当たったかと思ってカード化を唱えても、その頃には既に過ぎ去っている。

 途中で袋の中に風を閉じ込めて、カードにするってことを思い付かなければ、いつまで経ってもカード化出来なかっただろう。


「きゅぺぇ」


 大量にカードを手に入れてほくほくな俺とは対象的に、ラビットAは魔法の使いすぎでばたんきゅーしている。


 ……まぁ随分と無茶をさせたから仕方がない。

 ラビットAは最初こそ余裕を見せていたが、魔力が減ってくると、段々と疲れが見えてきた。

 そして魔力がなくなると同時に倒れ込む。


 そこで終わりではなく、アイテムで魔力回復させる。


 ――――

 魔力回復ポーション【薬品】レア度:☆☆☆


 魔力を回復させるポーション。

 これを飲めばある程度魔力が回復する。

 素材が手に入りにくいため、市場には出回りにくい。

 ――――


 アンブロシアで作った魔力ポーションだ。

 ただ魔力は回復しても精神力――疲れは回復できないようだ。

 それから魔法を使える回数的に、魔力の回復は半分程度。

 これが本人の魔力の割合回復なのか、回復量は固定なのか、説明文からは分からない。


 ちなみに魔力回復ポーションだけでなく、アンブロシアの果実をそのまま食べさせてみたが、アンブロシアでは魔力回復ポーションのさらに半分……全体の4分の1程度しか回復しなかった。

 どうやらポーションに加工した方が、回復率はいいようだ。

 まぁラビットAはアンブロシアをそのまま食べる方が好みのようだったが。

 魔力回復ポーションよりも、アンブロシアの方が美味しいらしい。


 そんなわけで、ラビットAは魔力回復ポーションの飲み過ぎでお腹がたぷたぷになりながら、魔法を使い続けたと言うわけだ。


「お疲れラビットA。頑張ったからな、後でちゃんとニンジンをあげるよ」


「きゅむ~きゅーきゅーきゅー!」


 ラビットAは不満そうに唸り……そして3回鳴く。


「……もしかして3本寄越せと言いたいのか?」

「きゅきゅっ!」


 どうやら今回の働きはニンジン1本では満足できないらしい。


「分かった分かった。じゃあ今日はニンジン3本な」

「きゅきゅっ!」

「その代わり明日も頑張ってくれよな」

「きゅべー」


 心底嫌そうにへたり込む。

 ……明日は今日より優しくしようかな。



 ****


 ラビットAにニンジンを食べさせカードに戻す。

 これで明日には元気になっているだろう。


 さて、ラビットAとの戯れも終わったし、これからは俺の仕事だな。

 なにせやりたいことはたくさんあるんだ。


 量産できた魔法カードを合成させて別の魔法を作りたい。

 魔法の組み合わせは……きっと多岐に渡るだろう。

 新しい魔法が出来たら、それをラビットAに覚えさせて、カード化させるとさらに効率良くなるよな。

 ただ……今日のラビットAの疲れ具合から見て、あまり酷使も出来ない。

 せめて他にも魔法が使えるモンスターがいれば……

 今の所魔法が使えそうなのはツインホーンラビットだけ。

 だけど、雷魔法しか使えないんだよなぁ。

 そして雷魔法はまだ持ってない。


 それから魔法だけでなく、スキルカードも手に入れないと。

 とりあえずキラービーなどの溜まっている魔石をスキルカードにしたい。


 そうだなぁ……魔法の量産で少し満足したし、先にスキルカードの方から始めようか。


 俺はキラービーの魔石を処理する。

 キラービーの魔石は全部で50枚。

 そのうち25枚スキルカードへ変化させる。


「う~ん、流石に被りが多いな」


 25枚のうち、半分の13枚が固有スキルのマヒ攻撃。

 固有スキルが多い原因として、個別スキルを持ってなかった個体だった可能性が高い。

 前回大量にキラービーを作り出したときもそうだけど、大体個別スキルを持っている割合は半分くらい。

 これはキラービーに限ったわけじゃなく、下級モンスターが持っている割合がそれくらいなんだと思う。

 やはり中級以上のモンスターじゃないと、個別スキルは手に入りにくいのかもしれない。


 残りの12枚は毒攻撃が3枚、隠密、消音、蜜集め、マヒ耐性が2枚ずつ。

 現時点でカードモンスターになっているキラービーとほぼ変わらない。

 でも……隠密と消音が2枚ずつ手に入ったのはありがたい。


 個別スキルを持っていないキラービーにセットすると、もれなくサイレントビーが合成される。

 サイレントビーが更に進化すると……どうなるだろうか?

 ものすごく興味があるが……そういえば、サイレントビーって星3だったよな?

 ってことは、現時点じゃ合成できない可能性が高い。


 なら……隠密と消音、1枚ずつ俺が自分で使用してもいいかも。

 決して損にならないスキルだ。

 ただ……仮に覚えるとしても、ナビ子が帰ってきてからかな。


 隠密に関しては合成させて隠蔽のスキルを狙うのもありだ。

 だけどそれで2枚使うのは……やっぱりもう少しスキルが欲しいな。


 そして残った最後の1枚は騒音のスキルだった。


 ――――

 騒音

 レア度:☆


 音を拡大して伝える。

 音声に関しては効果がない。

 ――――


 要するに羽音をうるさくするスキルなんだろうな。

 うるさくして……どうするんだろう?

 数が多いように見せて威嚇するのだろうか?


 消音とは真逆のスキルなので……合成したら失敗しそうだ。


 残った25枚の魔石は、悩んだけどモンスターカードにした。

 多分似たようなスキルしか手に入らないし、これ以上マヒ攻撃のスキルが増えても勿体ないだけだ。


 モンスターにしたカードの方にも消音と隠密持ちがいた。

 よし、これでモンスターカードだけでサイレントビーが作れるから、スキルの方は自由にしよう。

 スキルカードで手に入らなかったスキルでは偵察があった。

 これはちょっと欲しかったかも。

 やはり何を持っているか分からないのは不便だなぁ。


「おっコイツはおもしろいスキルを持っているな」


 そんな中、1匹だけ見たことないスキルを持っていた。


「女王の器……か」


 スキルカードじゃないので、詳細は分からない。

 だけど、スキル名から何となく察しはつく。

 もしかしたら、このキラービーが成長したらクイーンビーに進化したのかもしれない。

 死んでカードになった時点でそれは不可能になったんだが……

 う~ん、どうにか合成でクイーンビーが出来ないだろうか?


 試しにキラービー同士で合成してみる?

 このキラービーは個別スキルを1個しか持ってないから、確実に継承できるはずだ。

 基本的にキラービー同士だとキラーホーネットが誕生するが、特殊合成があるならそっちが優先される。

 仮に通常合成でも女王の器持ちのキラーホーネットが誕生するだけ。

 デメリットはない。


 ――試してみるか。


 俺は女王の器のスキルを持ったキラービーと、個別スキルを持っていないキラービーで合成させた。


 ――――

 クイーンホーネット

 レア度:☆☆☆

 固有スキル:女王の威厳、女王の号令、女王のベール

 個別スキル:マヒの魔眼、マヒ無効


 キラーホーネットの女王。

 その出で立ちはまさに女王に相応しい。

 この女王には我が子だけでなく、眷属全てがかしずくであろう。

 ――――


 おおう。なんかとんでもないモンスターが出来上がってしまった。

 まさかクイーンビーの更に上の進化を遂げるとは……

 クイーンになったことでスキルは消滅してしまったが、やはり女王の器が鍵だったようだ。


 クイーンビーはキラービーよりもひとまわりほど大きなモンスターだった。

 そしてクイーンホーネットはキラーホーネットよりもひとまわり大きい。


 固有スキルには新たに女王のベールが追加されている。

 が、現在ナビ子が不在のため、スキルの説明をしてくれる人がいない。

 一体どういうスキルなんだろうか……全く想像できない。


 そして個別スキルはマヒの魔眼とマヒ無効。

 マヒ無効は分かるけど、魔眼て……めちゃくちゃ強そうなスキルじゃね?

 こっちも早く詳細が知りたい。


 ナビ子がいなくなってまだ初日だけど……早く戻ってこないかなぁ。

次回は明日の夜に投稿予定です。

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