第55話 ジェット君たちの成果
「さっ張り切って玉手貝を探すわよ!」
「きゅい!」
「マスターのためなら、微力ながらアタクシも協力いたします」
不老長寿の秘薬のために張り切るナビ子とラビットA。
更にセレンまで……。
……アズリアたちへのお土産にするつもりだったとか今更言えないよなぁ。
こうなったら、三つと言わず、もっと大量の玉手貝を見つけるしか……。
「きゅいっ! 見つけた!!」
「マスター。アタクシも発見しました!」
早ええよ!?
あっという間に二つ目の玉手貝を発見するラビットAとセレン。
セレンは取得したばかりの超感覚スキルで。
ラビットAは第六感で気になった場所を千里眼で確かめたんだろうが……二人ともこんなに一瞬で見つけるのかと。
俺のためにガチで探したんだろうが、あっという間過ぎて逆に引くと言うか、動機が違いすぎて申し訳ないと言うか。
「なんかね。すぐ近くにいっぱーいるよ」
「ええ。どうやら群棲地があるようで」
群棲地?
もしかして玉手貝って群れで行動するのか?
貝なのに?
「別に不思議なことではないのでは? わたくし、以前テレビで集団で泳ぐほたて貝を見たことがあります」
集団で泳ぐほたて貝……何を思って鈴風がそんな番組を見たのかはさておき。
……考えてみれば、海岸の石に気持ち悪いくらいへばり付いていたりしているもんな。
全部が全部ってわけじゃないだろうが、群れを作ってもおかしくないな。
ともあれ、たくさんいるならありがたい。
ナビ子たちの期待を裏切らずに、お土産分まで確保できそうだ。
「よいですか。二匹目はわたくしがやりますから!」
さっき散々ラビットAに煽られた鈴風がめっちゃやる気だ。
当然宝箱を破壊せずに倒すんだろうが……一体どうするのか?
あまり無茶なことはさせたくないが……流石にこれを止める勇気はない。
二匹目の玉手貝を見つけると、鈴風が近づく。
「外側を破壊できないのであれば、直接箱の中を攻撃すればよいだけのこと」
鈴風は玉手貝に近づくと、そのまま箱を開けようと試みる。
……その瞬間、玉手貝は大口を開けて鈴風に襲いかかる。
「無防備な」
鈴風は空いた箱に海鳴刀の剣先を入れ……本体に直接攻撃をする。
「ふん。なんとも歯応えのない」
あっさりと……本当にあっさりと外の箱を傷つけずに玉手貝を撃退。
本来ミミックって、実はモンスターでしたって不意打ちがあるから強いのであって。
襲いかかってくるタイミングさえ分かれば、カウンターを決めることも可能ってことか。
それより……中に薙刀をぶち込んで、真珠は壊れてないよな?
俺は慌てて玉手貝の死体をカードにして分解。
……よし、真珠も無事と。
問題なかったのを見届けると、鈴風が先ほどの仕返しだとばかりにラビットAを煽り返す。
「どうですウサコ。わたくしに掛かればこの程度のモンスターなど一瞬で……そういえばウサコは楽勝と言っていた割には随分と時間をかけていたようで……しかも魔法まで使って」
「きゅむむ……まほーなしでも、らきゅしょーだもー!!」
あーうん。そうなるよね。
ラビットAも煽り耐性まったくないもんなぁ。
それから二人で競い合うように玉手貝を狩り始める。
「きゅい! こっちのほーがコンマ3早かったもー!」
当然のごとくラビットAも鈴風と同じような方法で玉手貝を倒すことができた。
しかし……コンマ3秒って絶対に適当だろ。
「何を言っているのです。ほら、ここをご覧なさい。慌てて刺したものですから、箱の歯が欠けてます。それに比べわたくしの方は……」
とまぁ非常に高度な戦いをしつつ、非常に低次元な言い争いを行う二人。
うん。玉手貝相手じゃ怪我もしなさそうだし、もう勝手にしてくれと。
俺はもう真珠が手に入ればそれでいいや。
それからしばらくの間、ラビットAと鈴風が玉手貝を倒し続け、俺はそれをカードに。
途中で自由時間兼偵察に向かわせたジェット君たちも帰還。
案の定というか、大量のモンスターの死体を持ち帰ってきた。
「たった一時間でこんなに……頑張り過ぎだろ」
死体の枚数を数えると50体を超えていた。
種類は10種ほどだったが……驚くことに全てが星3以上のモンスター。
星3
・闇喰魚
・スカルフィッシュ
・ホーンドトータス
・ウォータージニー
・ディープシーローパー
・アイボール
・サイクロンスクィーズ
・バイキングスパイダー
・ラハブ
星4
・ワンダージェリー
「流石に深海っぽいモンスターが増えたな」
「そだねー。ゲテモノ系が増えたね」
ゲテモノ系言うなし。
まぁ確かにうわってなりそうな見た目ではあるけどさ。
「シュートは気になるモンスターいる?」
「そうだな……闇喰魚とアイボールとウォータージニーかな」
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闇喰魚
レア度:☆☆☆
固有スキル:闇喰、闇同化、光属性弱点
魚系中級モンスター。
闇を喰い、闇に同化する魚。
光の届かない深海に棲息する。
光を浴びると死んでしまう。
――――
闇喰魚は真っ黒な巨大魚。
ウチのアサシンビ―みたいに闇と同化する能力を持つが、日光だけじゃなく、ちょっとした光を浴びるだけで死ぬという本当に深海でしか生きられないモンスター。
「この子って適応力スキルで光も大丈夫になったりするのかな?」
「さぁ……なにせ弱点だからな」
アイスワイバーンですら火属性弱体で弱点ではなかった。
しかも固有スキルの方だし……手の施しようがない気がする。
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ウォータージニー
レア度:☆☆☆
固有スキル:水の素質、透過、水同化、吸収
個別スキル:物理強耐性、隠密
貝系中級モンスター。
貝系のモンスターでありながら貝殻を持たない。
身体を自由に透明にすることが出来、周囲と完全に同化することも可能。
捕食はスライムのように獲物にまとわりついて吸収する。
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見た目が微妙なモンスターばかりの中で唯一の癒やしの見た目をしたモンスター。
……見た目は完全にクリオネだけど。
にしても……貝? スライムとかクラゲ系かと思ってた。
「クリオネって巻貝の仲間って知ってた?」
「えっ? そうなの?」
何で貝系のモンスターかと思ったら、本当にクリオネ系のモンスターかよ。
まぁ見た目の可愛らしさとは違って能力は結構極悪だけど。
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アイボール
レア度:☆☆☆
固有スキル:無色の眼、暗視、遠視
ローパー系中級モンスター。
口ではなく、眼に特化したレア個体のローパー。
個体により様々な眼系スキルを習得する。
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ローパーってイソギンチャクをさらに化け物風にしたモンスター。
訓練中に浅瀬で星2のシーローパーを捕まえてはいたが大きな口と無数の触手があるなんとも気持ち悪い見た目をしたモンスターだ。
ディープシーローパーが深海用に進化した個体で、アイボールは口ではなく眼に特化したモンスター。
「この子が気になるなんてシュートさいてー」
「なんでだよ!?」
まぁ確かに存在そのものがR指定になりそうなモンスターではあるが。
俺が気になっているのは無色の眼。
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無色の眼
レア度:☆☆☆☆
レベルが上がると神眼・魔眼系スキルに変化する。
変化する眼系スキルは今までの生活により決定する。
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俺がずっと待ち望んでいた……神眼系スキルの合成素材。
神眼系スキルはレシピはあっても素材がなかったから……これでようやく合成することが出来る。
合成しなくてもレベルが上がれば自動的に神眼スキルを習得できるみたいだけど……合成のほうが手っ取り早い。
しかもこれスキルだけじゃない。
アイボールの死体を分解すると同名の素材が手に入った。
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無色の眼【素材】レア度:☆☆☆☆
特殊な眼をしたモンスターの眼球。
あらゆる眼系の魔道具の素材となる。
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眼系の魔道具ってのは鑑定眼レベルのメガネとか、千里眼のような効果のある望遠鏡やら。
いやぁスキルだけじゃなく素材まで優秀ときたもんだ。
「本人は星3なのにね」
「それは言ってやるなよ……」
もちろん最低でも一体はモンスターとして残すからな。
残りの星3は骨の兜を冠ったスカルフィッシュ。
甲羅がトゲトゲの亀、ホーンドトータス。
生き物かどうかも怪しい渦巻のモンスター、サイクロンスクィーズ。
ラハブはウミヘビ……というか脚のないワニ。
進化したら海竜になるんではなかろうか。
そしてバイキングスパイダーは……足の長いカニ。
海の蜘蛛ってことでバイキングスパイダーってことなんだろうが……強そうってか美味しそう。
今まではカニという名のザリガニばっかだったのんなぁ。
そして唯一の星4がワンダージェリー。
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ワンダージェリー
レア度:☆☆☆☆
固有スキル:水の覚醒、風の覚醒、万能毒、水同化、発光、千差万別
クラゲ系上級モンスター。
自由に姿形を変える不思議なクラゲ。
中には空を飛ぶ個体もいるらしい。
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ワンダージェリーはその名の通りクラゲ。
ジェット君が持ち帰った時は巨大なお椀型のクラゲだったのに、モンスターカードにするとエチゼンクラゲみたいな姿に。
そして今はウォータージニーみたいなクリオネ型に。
本当に自由に姿を変えられるみたいだ。
「……空を飛ぶって書いてあるけど?」
「もしかしたら空を飛ぶ変身があるんじゃない?」
なほほど。変わった姿で空も飛べるかもと。
謎が多そうなクラゲで……結構楽しみかも。




