表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/449

第37話 ナビ子のいない日

 次の日、起きるとすでにナビ子がいなかった。

 どうやらもう日本へ帰ったようだ。


 ナビ子の本体である『旅のしおり』はそのままある。

 か、その本にナビゲーションボタンがなくなっており、呼びかけても出てこない。

 一応『旅のしおり』を読むことは出来るのだが……不在中に勝手に読むと、ナビ子は絶対に怒るだろうな。


 ただ、俺にはひとつだけ気になることがあった。

 以前ナビ子が教えてくれなかった情報だ。

 そのことに関して、ある程度予想できているんだが……一応確証が欲しがった。

 だから……そのページだけ確認させてもらった。

 もしナビ子が戻ってきたときにバレたら……その時は全力で謝ろう。



 ****


 俺は朝の筋トレと銃の訓練の日課を行う。

 筋トレは少し少なめ。

 ナビ子がいないからケアしてもらえないもんな。

 そして銃の訓練だが……そこで命中補正のスキルを実感できた。


 まず銃を持って的を見ると、いつもより的が大きく見える……気がする。

 もちろん的が変わったわけではない。

 そして銃を持っていなかったらいつも通りに見える。

 それだけじゃなく、銃を構えると、弾の軌道がなんとなく見える。

 そしてその軌道通りに弾が発射される。


 流石に動きながら軌道を確認して撃つのは難しいが、今までよりもはるかに命中精度が上がった。

 これ……レベル10になればどうなるんだろう?


 しかし……いつもなら、スキルの解説をしてくれたり、銃の扱いが上手くなったことを喜んでくれるナビ子がいないのは……寂しいな。



 ****


「きゅむ~!」


 目の前にいるラビットAが不満そうに唸る。

 どうやらかなり怒っているようだ。

 原因は俺が返還(リターン)で無理やり呼び戻したせいだろう。


「まぁまぁ。ラビットAなら数日くらい遅れても大丈夫だって。それよりも、俺の話し相手になってくれよ」


 ナビ子がいなくて、カードモンスターも全員出払っている。

 一応定期的に戦利品を持ち帰ってくるのだが、すぐに戻ってしまう。

 本当にボッチだから、寂しくて仕方がない。


「きゅうう……」


 ラビットAは少し悩んでいるようだ。

 俺と一緒にいたいけど、外にも出たいってところだろう。


「なぁ……だったらラビットAにもメリットのある実験をしないか?」

「きゅう?」


 おっ実験と聞いてラビットAが興味を示した。


「ああ……ラビットAは魔法を覚えたくはないか?」

「きゅきゅ!!」


 その言葉にラビットAが大いに喜ぶ。

 本当なら魔法習得は街まで……魔道書を手に入れるまで温存しておくつもりだった。


 ただもうそれは必要ない。

 それどころか、先ほど知り得た情報が確かなら、今後は魔道書を買う必要がなくなる。


「ラビットAは魔の素養のスキルだから、どの属性も適性はあるはず。……とりあえず最初は無難にアクアから覚えていくか」


 何せ魔法を見るのは初めてだからな。

 どれくらいの威力があるのか予想もできない。

 ファイアの魔法は攻撃性が高く、怪我する可能性がある。

 その点、アクアなら水浸しになるくらいで、危険は少ないだろう。


「確か魔法を覚えるのはセットだったよな」


 間違えて解放(リリース)したら大変なことになる。

 俺はラビットAの頭にカードを当ててセットと唱える。

 すると、カードがラビットAに吸い込まれるように消えていった。


 俺がスキルを覚えたときと全く同じだ。

 ってことは、ラビットAはもう魔法が使えるのかな?


「ラビットA……魔法は使えそうか?」

「きゅう?」


 よく分かっていないらしい。

 まぁ俺もスキルの時は全然分からなかったもんな。


「多分もう使えるはずだから……外に出て確かめてみようか?」

「きゅきゅっ!」


 ラビットAも早く試してみくてウズウズしてるので、早速外に出て試してみる。



「いいか、ラビットAが覚えたのは、アクアという水が出る魔法だ。角強化の要領で、魔力を集中して、アクアと念じてみろ」


 俺は簡単にアクアの魔法の効果をラビットAに説明する。

 魔法の効果が分からないと、完成した魔法のイメージが出来ないもんな。


 魔力のコントロールに関してはあまり心配していない。

 角強化はスキルだけど、魔力を消費して強化されるスキルだ。

 魔力の込め方は変わらないので、ラビットAならすぐにできるはずだ。


「きゅむむむむ……」


 ラビットAが唸りながら角に魔力を集中させると、角が光り……


「きゅきゅっきゅー!」


 ラビットAの叫びとともに角の先端に水の塊が現れる。


「おおっ! やったな!」

「きゅきゅ!」


 俺とラビットAが喜んだ瞬間……水はバシャッと地面に落ちる。

 どうやらラビットAが油断して制御を怠ったようだ。


「きゅぅぅ……」


 ラビットAがしょんぼりと鳴く。

 ペタンと垂れた耳がかわいい。


「そんなに落ち込まなくても……魔法は成功したんだしさ。制御に関してはこれから練習していこう」

「きゅっ!」


 俺の励ましにラビットAが耳がピンとなる。

 どうやら元気を取り戻したようだ。


「次は……試したいことがあるから、さっきよりも少しアクアの持続時間を長くしてくれ」

「きゅきゅ!」


 ラビットAは先ほどと同じように魔力を角に込め、アクアを唱える。

 2回目だからか、先ほどよりも手際よく感じる。

 慣れていけば、魔力を込める時間が短縮されそうだ。


「よし、ラビットA……俺が今からアクアに触るから、しばらくそれを維持しておくんだ」

「きゅっ」


 ラビットAが短く鳴く。

 集中している証拠だろう。


 俺は……アクアに手を突っ込む。

 冷たくて気持ちいい。

 本当にただの水のようだ。


「…………変化(チェンジ)


 俺がカード化スキルを発動させると、アクアが一瞬にして消え去る。


「きゅびぃっ!?」


 アクアが無くなったことに驚くラビットA。

 そして俺の手の中には……アクアの魔法カードがあった。


「よし、成功だ!」

「きゅぅぅ?」


 ラビットAは何がどうなったか分かっていない。


「あのな、今のはラビットAのアクアの魔法をカードにしたんだ」


 魔法をカードにする方法は2種類ある。

 俺はその内1種をナビ子から聞き、もう1種は危険だからと教わらなかった。


 1つは魔道書をカードにすること。

 そして危険な方の方法は……魔法を直接カードにすること。

 つまり直接この手で触ってカードにすることだ。

 ゲーム風に言えばラーニングってやつだな。


 それからもちろん発動している魔法をカード化するだけなので、ラビットAが魔法を忘れるってこともない。

 ただし、発動中の魔法はカードに取り込まれてしまうけど。

 これ……カードにしたいから使うんじゃなくて、魔法から防ぐためにカードにするって手もあるよな。

 まぁタイミング次第では大怪我しそうだけど。

 ナビ子が危険だと言って俺に教えない理由もわかる。


 でも……初級魔法で、しかも仲間が使う分には危険はほとんどない。

 そう思ってラビットAに使わせたんだが……大成功だったな。


「よし! じゃあ片っ端から魔法を覚えて、魔法カードの量産を始めようか!」

「きゅー!!」

今週末は予定がありますので、2投稿ではなく土曜日は午前中、日曜日は夜の1投稿とさせていただきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ