第40話 大合成会③
妖精から精霊に変化できるということが分かったことで、残ったハイフェアリーとハイピクシーが自分もと群がった。
まったく現金というかなんというか……たが、結局アンブロシアの精であるシア以外に新たな精霊は生まれなかった。
うちの庭に咲いている花とかで試してみたんだが……やはりアンブロシアのような特別製じゃないと無理なのか。
あと風とか火とか四大精霊になるのも……これは今後じっくりと検証する必要があるな。
ってことで、妖精は終了。
次からは同じく妖精……らしいゴブリン。
ゴブリンに関してはやはり初期メンバーだし、初めての大仕事でもあったから、色々と感慨深いものがある。
星1はゴブリンのみ。
あの事件で数百のゴブリンの魔石を手に入れたけど、合成やらスキル回収やらで半分以上の魔石がなくなった。
星2はホブゴブリンとゴブリナ。
星3以降は職業の派生が一気に増えた。
星3ゴブリンソルジャー→星4ゴブリンジェネラル
星3ゴブリンガード→星4ゴブリンガーディアン
星3ゴブリンアーチャー→星4ゴブリンスナイパー
星3ゴブリンメイジ→星4ゴブリンアークメイジ
星3ゴブリンウィッチ→星4ゴブリンセージ
星3ゴブリンシャーマン→星4ゴブリンネクロマンサー
星3レッドキャップ→星4ゴブリンアサシン
そして、これに属さない特別な星4が俺の癒やしでもあり、全モンスターたちのお母さんミスト。
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ゴブリンミスティック
レア度:☆☆☆☆
固有スキル:威圧、自然の祈り、地の覚醒
個別スキル:風の覚醒、器用、母性、下剋上
慈愛の心を持つゴブリンが進化した姿とも言われているが、ゴブリンに慈愛の心があるはずがなく、ゴブリンキングやゴブリンネクロマンサーよりも目撃がない幻のゴブリン。
魔法や自然の力を使うとされいるが、詳細は不明。
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これに登録だけで未所持が星5ゴブリンキング。
星5がキングってことだから、星4の古参はこれ以上の進化は望めない。
正直まだまだ派生の職業はありそうだが……属性では全部メイジやウィッチになってしまう。
従ってレッドキャップやミストのようなレア種だろうが、こればっかりは狙って合成はできない。
「ってことで、ホブA。どうする?」
ゴブリン達のリーダーで、言葉も話せるゴブリンジェネラルのホブA。
やっぱりキングになるなら彼が適任だろう。
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ゴブリンジェネラル
レア度:☆☆☆☆
固有スキル:威圧、力づく、剣術、逆境
個別スキル:棒術、魔力探知、リーダーシップ
ゴブリンの将軍。
攻守のバランスのよいゴブリン最強の存在。
こと戦うだけならば、伝説のゴブリンキングより脅威となる存在といえよう。
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キングになるには王の器って特別なスキルが必要になるが、以前倒したキングからスキルは回収済み。
王の器を所持した状態で、星3以上のゴブリンと合成するのがキングの条件だ。
だがホブAは首を振ってキングになることを拒む。
「嫌ゴブ。ボスの命令でもキングにはなりたくないゴブ」
いや、命令じゃないから、なりたくなければなる必要ないけど……。
「どうしてそんなにキングになりたくないんだ?」
「キングになると弱くなるゴブ」
あ~なるほど。
キングの戦闘力自体は星1のゴブリンと同程度まで下がってしまう。
その代わり同族支配と同族進化という強力なスキルを得ることができ、ゴブリンを支配することができる。
ホブAは支配するよりも自分が率先して戦いたいってタイプか。
「ようするにホブAはもっと強くなりたいわけか」
「そうゴブ。負けてばっかは嫌ゴブ」
……多分、鈴風にコテンパンにやられたんだろうなぁ。
でもそれは鈴風が特別なだけで、ホブAが弱いわけじゃないぞ。
まぁそう言っても聞きはしないんだろうが。
「でも……じゃあどうする? 新しいスキルでも覚えるか?」
説明文にもあるように、強さだけならゴブリンジェネラルはゴブリン最強の存在。
それ以上の強さを求めるなら、新しいスキルを取得するくらいしかない。
……いや、もう一つ。
キング以外の星5を見つけるか。
ホーンドヘアからコーラルヘアになったように、ゴブリンジェネラルの特別変異種でも見つかれば、さらなる進化を望めるかもしれない。
「何か特別な進化ができそうな合成相手に心当たりはあるか?」
正直、俺には心当たりはまったくない。
コールやシアのように自分で見つけて貰うしかない。
「特別な進化に心当たりはないゴブが……合成相手には心当たりがあるゴブ」
「……どういう意味だ?」
気になってホブAが相手を選ぶのを待つ。
「ギガース?」
ホブAが選んだのは俺がまだ見たことのないモンスターの魔石。
いや、報告だけは聞いている。
この無人島にいた巨人のモンスターだ。
どうやらこの無人島探索では巨人やら巨大な蜂やら、大きめのモンスターが多く生息していたらしく。
今回のお披露目で最後に確認しようと思ってたが……まさかそれを選ぶとは。
「そうゴブ。強くなるならゴブリンを辞めればいいだけゴブ」
おおう。まさかそんな簡単に自分の種族を捨てる発言をするとは。
「それって、ギガースメインで自分をサブにするって……」
「違うゴブ。サブがギガースゴブ」
あっそれは違うんだ。
でもゴブリンがメインになっても違う種族になると確信しているっぽい。
「え~っと、ギガースの魔石はまだ残ってるよな?」
「10体はいたから、残っているゴブ」
ならいい。
流石にこれでギガース種がなくなるとなったら、ホブAの願いでも二の足を踏むとこだった。
俺はギガースの魔石をモンスターにする。
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ギガース
レア度:☆
固有スキル:怪力
巨人系初級モンスター。
小さい個体でも3メートル、大きな個体では5メートルはある。
力は強いが、動きが鈍くそこまで強くない。
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……要するにデカいだけで弱いと。
まぁ星1だから弱いのは仕方ないが……これと合成するのか?
もう少し進化させてからの方が良くないか?
ただホブAはこれでいいらしく……俺はホブAをカードに戻して、ギガースと合成させた。
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オーガジェネラル
レア度:☆☆☆☆
固有スキル:威圧、馬鹿力、棒術、逆境、再生
個別スキル:剣豪、騎士道
オーガ系上級モンスター。
オーガの将軍。一体で一国を滅ぼすとも言われている。
力が強いオーガの中でも特に強く、更に少々の傷ではすぐに回復してしまう。
下手に追い詰めると真価を発揮し更に強くなるので、倒すときは一気に攻めるしかない。
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……なるほど。
子鬼から大鬼か。
巨人を足した分、デカくなったと……いきなり星4なのはジェネラル繋がりでってことか。
にしても……もしかして、オーガもゴブリンと同じく、派生の種類が多い?
……オーガの集落を見つけでもしない限り、コンプは厳しそうなぁ。
「これ、いいガブ。気に入ったガブ」
……語尾がゴブからガブに変わってやがる。
でもまぁ気に入ったなら、いっか。
「ほぅ。面白い進化を遂げましたね。いいでしょう、相手になってあげます」
「ふっ今度は負けないガブ」
そう言って立ち上がる鈴風と、オーガジェネラルになったばかりでやる気満々のホブA。
「えっいや、ちょっと……えええ」
俺を無視してさっさと森に入る鈴風とホブA。
あれぇ? コレクション鑑賞会は?
くそっ。この鑑賞会も鈴風が言い始めたんだぞ?
「まぁまぁシュートさん。私がいますから」
……そうだな。
アズリアはいるし、こんな中途半端で止めるつもりもない。
ただ後になって見せてくれと言っても、もう鈴風には見せてやらん。
ってことで、次に行こう。
え~っと、ホブAが終わったから、残りのゴブリンを……次はミストだな。
ミストは元々レア種だけど……ミストが選んだのは、星4のゴブリンセージ。
レア種にならなければ、自分がなっていたであろう正当進化の個体を選んだみたいだが……果たしてどうなるのか。
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ゴブリンマザー
レア度:☆☆☆☆☆
固有スキル:威圧、魔の極意、同族創生
個別スキル:器用、聖母
ゴブリンの母。
魔力により生殖行為無くゴブリンを生み出す。
キングのように支配能力や進化能力はないが、キングすら生み出す可能性があるマザーは存在そのものが脅威である。
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……みんなのお母さんとか言ってたら、本当に母になってしまうし。
にしても……魔力でゴブリンを生み出す?
シアのアンブロシアの実を生み出すような気軽さでゴブリンを量産できるのか。
そりゃ驚異以外何者でもないな。
しかも、キングすら生み出せるか書いてるから……生み出すゴブリンはランダムってことだろ。
しかし……生まれたゴブリンって、俺のカードモンスターじゃないよな?
ミストが生んだゴブリンを目の前で殺してカードにする?
……うん。ゴブリンの量産は最終手段だな。




