第39話 大合成会②
鈴風に言われてウサギ種と別の種族との合成をすることになった。
とは言っても、鈴風が言ったように片っ端からってわけにはいかない。
足らない魔石は鈴風が用意してくれる……って言っても、現時点で手元にあるわけじゃないし。
ってなことで、合成した結果、誕生した新たな種族。
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ワ―ラビット
レア度:☆
固有スキル:聴覚、聴覚
個別スキル:脱兎、気配察知
兎人型の下級モンスター。
ゴブリンと同程度の最弱モンスターだが、ゴブリンに比べて聴覚に優れ、察知能力に長けている。
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ホーンラビットとゴブリンの合成で人型を狙って、予想通り人型にはなったけど……まさか星1とは。
合成したからって、必ずしも星が増えるわけじゃないって証拠だな。
それにしても……ラビットAとは違い、魔兎族でもないと。
ここから強くしたらどうなるのか?
ラビットAのように魔兎族になるのか……はたまたジャイアントラビットのようになるのか。
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ラビットモンク
レア度:☆☆☆
固有スキル:跳躍、脚力、地獄耳
個別スキル:直感、敏捷、格闘術
兎人型の中級モンスター。
強靭な脚力を生かして戦う武闘派モンスター。
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そのワーラビットを強化した結果。
ジャイアントラビットでもラビットAでもなく、全く別方向の進化を遂げた。
モンクって僧侶だよな?
完全に脳筋って感じだけど……せめて光の素質とか覚えていればいいのに。
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ファンシーヘア
レア度:☆☆☆
固有スキル:魅惑、闇の素質
個別スキル:洞察力
ウサギ系中級モンスター。
あざとかわいい。
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熊と兎を合成させた結果。
ヒュージラビットみたいになるんじゃないかと予想していたのだが、何故かぬいぐるみみたいな見た目の兎が完成した。
子供番組に出そうな……ゆるキャラとか、アニメのマスコットみたいな。
うん、あざとかわいい。
本人もそれを自覚しているのか、俺に向かって目をウルウルさせながら上目遣い。
多分、スキルの魅惑って……異性とかじゃなく、可愛い物好きを虜にするって意味だと思う。
もしかしたら、ラビットAの一番のライバルになるかもしれない。
ただ、なぜか闇の素質が固有スキルに入っているのが……うん。闇を感じる。
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ラビッホース
レア度:☆☆☆
固有スキル:聴覚、気配察知、空中闊歩、風の覚醒
個別スキル:走力、持久力
馬系中級モンスター。
ウサギのように長い耳が特徴。
空気を蹴ることで、空中を歩くことができる。
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ユニコーンに続く、馬と兎第二弾。
今度はユニコーンにならなかったが……代わりに冗談みたいな名前の馬が。
しかも空中を歩くとか……進化したら翼が生えてペガサスに?
それとも別の進化を……楽しみだな。
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ラビッキャット
レア度:☆☆☆
固有スキル:聴覚、気配察知、跳躍
個別スキル:鋭利、爪強化
猫系中級モンスター。
ウサギのように長い耳が特徴。
普段は木の上で生活し、地上にいる獲物に襲いかかる。
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今度は猫と兎の合成。
馬と同じく冗談みたいな名前だが……えっ? これラビッシリーズがあるのか?
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コーラルヘア
レア度:☆☆☆☆☆
固有スキル:角鉱物化、雷の素質、水の素質、身体能力強化、ハンター、水中移動
個別スキル:デコイ、暗視、適応力
ウサギ系上位モンスター。
ホーンドヘアの特別変異種。
角が珊瑚に変化したことで、水中にも対応できるようになった。
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いやぁ。
ホーンドヘアが海中訓練中に手に入れた珊瑚と合成希望って言ったので何事……と思ったら。
まさかこんなことになるとは。
元々ホーンドヘアは有角ウサギ種の最上位って書かれていたから、これ以上は存在しないかも……って思ったら、その特別変異種で星5になるとは。
これなら海中探索にも活躍してくれそうだ。
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ヴォルペルティンガー
レア度:☆☆☆☆☆
固有スキル:闇の極意、闇同化、霧化、吸血、嗅覚、光属性弱体、火属性弱体
個別スキル:超再生、眷属化、超音波、雷の覚醒、月の光
ウサギ系上級モンスター。
ヴォルパーティンガーが成長した姿。
闇の能力が更に強化され不死に近い肉体を持つ。
弱点以外の攻撃で倒すことは不可能だろう。
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ヴォルパーティンガー同士を合成した結果、ヴォルペルティンガーと表記ゆれっぽい変化を遂げた。
ただその能力は比べ物にならなくて……物理攻撃は霧になることで無効化して、弱点以外の属性は超再生ですぐに回復。
もうね。完全なバンパイアかと。
一応、弱点が光と火でしかも、弱体化スキルで超弱点になっているのと、日光がマジで駄目らしいので、夜にしか行動できないっぽい。
ただ……適応力のスキルとか、ライファスキンを使えばどうなるかな?
今度試してみようか。
「ってことで、ウサギは以上かな」
幹部クラスだったホーンドヘアとヴォルパーティンガーも進化できて、更に新たな種類がたくさん増え……個人的には大満足だ。
ちなみにコーラルヘアはコール。
ヴォルペルティンガーはペルと呼ぶことにした。
「もっと昆虫や爬虫類とも合成させればよいではないですか」
「それは駄目」
鈴風の疑問に俺は即答で答える。
何故なら、それは本人たちが望んでないから。
合成に関していちばん大事なことは本人たちの意思。
新しいモンスターが生まれる可能性があったとしても、本人たちがそれを望まないなら、絶対に合成しない。
今回は別種族と合成していいウサギを集めてから、それぞれ希望を出してもらった結果がこれだ。
本当はもっと希望者はいたんだが、何故か猫と熊が多くて……被りはまた今度ってことにした。
じゃないと、ウサギだけで一日が終わってしまいそうだもんな。
ってことで、次はティータたち妖精。
とは言っても妖精の元となる蝶の種類は少ないんだが。
基本は星1の幻惑蝶と夜光蝶。
それの進化でフェアリーバタフライとルナバタフライ。
そして星3がフェアリーとピクシー。
星4がハイフェアリーとハイピクシー。
そして女王の器を持っていたティータとメーブ。
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ティターニア
レア度:☆☆☆☆☆
固有スキル:風の極意、大自然の加護、妖精王召喚、不可視
個別スキル:魅了、カリスマ、お調子者
妖精の国を治めている妖精女王。
意外と浮気性。
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メーブ
レア度:☆☆☆☆☆
固有スキル:闇の極意、月の加護、妖精騎士召喚、催眠術、不可視
個別スキル:吸収、魅了、お調子者
妖精の国を治めている夜の女王。
夜遊びが盛ん。
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「蝶から妖精じゃなくて、蝶の上位種を作ろうと思ったこともあるんだけど、必ずフェアリーかピクシーのどっちかになるんだ」
別の属性とか試してみたんだけど、必ず妖精になって別の蝶にはならなかった。
「わたくしやメーブもそうですが、妖精の国でわたくしどもが使役しているのがこれらの種族のみですから」
要するに幻惑蝶と夜光蝶の時点で特殊合成に入っていると。
……ルナバタフライとフェアリーバタフライになるには別種の蝶からでもなれるのに。
だから妖精でなく、蝶の上位種を手に入れたいなら、別の蝶種を手に入れろってことか。
まぁすぐに手に入るものじゃないから、蝶の別種は諦めよう。
そして妖精の方だが……
「ハイフェアリー同士やハイピクシー同士での合成はどうだったのですか?」
「……ハイフェアリーとハイピクシーになっただけ」
しかも個別スキルが増えたり減ったりするだけで、ほぼ変わらず。
ちなみにハイフェアリーとハイピクシーの組み合わせだとメインの方になるだけ。
こういった事があるから、星4以降の合成は二の足を踏んでしまうんだよなぁ。
むしろさっきのヴォルペルティンガーが特別な例だと思う。
「女王の器を持ってないハイピクシーとハイフェアリーはこれが最上位種なのか」
本物のティータが住んでいる妖精の国も他の種族はいなさそうだし……。
「試すとしたら他種族と合成するか」
ただ妖精族は他の種族と合成したがらないんだよなぁ。
さっきのウサギとも誰も合成したがらなかったし。
「ティータ。一応全員の希望を聞いてくれるか?」
「かしこまりました」
一人ぐらい合成を希望してくれればいいのだが……。
「マスター。この子が……」
ティータが一人のハイフェアリーを紹介する。
おっ一人だけでもいたか。
「アンブロシアと合成したいと」
「あ、アンブロシア?」
コクリと頷くハイフェアリー。
……予想外のところが来たな。
「アンブロシアって実でいいのか?」
フルフルと首を振るハイフェアリー。
「……アンブロシアの結果枝か?」
コクンと頷く。
結果枝か……。
毎日3個の実が採れるから貴重なんだが……せっかく言ってくれてるんだし。
それにまた取りに行けばいいしな。
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アンブロシアの精
レア度:☆☆☆☆
固有スキル:魔力飽和、果実変換、深緑、土の極意、不可視
個別スキル:植物操作、光合成、鞭術
アンブロシアに宿った精霊。
宿ったアンブロシアが枯れる最後の時までアンブロシアも守り続ける。
――――
「え、精霊!?」
妖精じゃなくなったし。
精霊ってあれだろ。
シルフとかウンディーネとかが四大精霊とか言われてるんだよな。
四大精霊以外にもいるのか……って、そういえばアルラウネの説明文に花の精の振りしてとか書いてあったな。
それのアンブロシア版ってことか。
見た目は……元々のハイフェアリーが全長30センチ程度に対して、アンブロシアの精は70センチとティータたちと比べても、かなり大きい。
そして、背中に生えていた羽が……花びらの形をしている。
あれがアンブロシアの花なのかな?
「しかし……この場合、宿ったアンブロシアって何になるんだ?」
元々のアンブロシア? それとも合成でなくなった結果枝?
アンブロシアの精も首を傾げる。
……どうやら本人も分かってないみたいだ。
「――っ!? ――!!」
突然アンブロシアの精が何か話しかけようとして……でも当然声は出せなくて。
と、アンブロシアの精の手をお椀状態にして……そこに突然アンブロシアの実が現れる。
「どうやらこの子は、果実変換のスキルで、自分の魔力をアンブロシアの果実に変換できるようです」
……マジか。
ってことは、アンブロシアの結果枝を取りに行く必要なくなったじゃん。
「アンブロシアの精……よし、シアって呼ぶことにしよう」
これからたくさん活躍してもらわないとな。




