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第38話 大合成会①

今回からしばらくの間、前回の最後から二日ほど戻りまして、モンスター合成の話となります。

一応、シュートがメインですので、閑話扱いにはしませんが、モンスター紹介と合成をするだけの回が、おそらく5話前後続くことになります。

純粋に本編の続きを読みたい方は申し訳ございませんが、しばらくお待ち下さい。

 海中訓練を始めて早6日。

 魔法の検証も殆ど終わったし、海中での動きにも慣れてきた。


「シュート、話があります」

「……なんだ?」


 そんな順調な中、突然鈴風に呼び止められる。


 俺が海中訓練をしている間、鈴風は無人島探索をやっていた。

 と言っても、わずか3日で無人島を制覇。

 4日目は俺と一緒に海中訓練をし……そして俺の3日間の苦労をあざ笑うかのように、アッサリと海中の動きに慣れ。

 そして昨日は訓練をせずに、無人島で俺のモンスターと決闘をして過ごしていたと聞いていた。


 そんな状態で話がある?

 ……嫌な予感しかしないのだが。


「昨日、貴方のモンスターと決闘しましたが、中々骨のあるモンスターばかりで。わたくしが今までに戦ったモンスターよりも手応えがありました」


 そりゃ野生産と比べると、スキルや練度が桁違いだから……でも、ナビ子の話では、ホブAやビーパラディン、フォレストドラゴンがあっさりと負けたと聞いている。


「シュート。貴方、まだ強いモンスターを隠してますね?」


 今回無人島探索に参加したのは、星3と星4が中心で、星5は昆虫モンスターを束ねるインセクトクイーンだけ。

 ケリュネイアとかアルケニーとか、星5や魔族系のモンスターは参加していなかった。

 今日はその参加していなかったモンスターと戦わせろとかそんなとこだろう。

 ったく、これだからバトルジャンキーは。


「……言っておくが、どのモンスターもラビットAよりは弱いからな」

「別に総合的な強さだけが全てではありません」


 そりゃ総合的な強さが全てではないことは分かるけど。

 例えば暗殺に特化したうちのアサシンビ―なら、鈴風に気づかれずに殺すことだって。


「だから他のモンスターとも戦いたいってか?」

「戦いたいのは事実ですが、今日は別件です」


 ん? 違うのか?


「ええ。わたくしも一応冒険者ですので、戦う以前にモンスターには興味があります。ですので、シュートのモンスターを……いえ、シュートのその自慢のコレクションをわたくしにも見せていただけませんか?」


 ――コレクションに興味がある。

 ――コレクションを見せてくれ。

 数少ないコレクションを自慢できる場面!?


「はははっ。いいぞいいぞ。じゃあ早速……」


 俺は図鑑の準備を始める。

 コレクターとして、こんな貴重な機会を逃すわけにはいかない。

 う~ん。レア度順に紹介するか、種族別に紹介するか。


「アズリアからコレクションに興味があると言えば一発だと聞いてましたが……本当にチョロすぎ」

「んー? なにか言ったか?」

「いえ何も」


 コレクションを準備していて聞いてなかったが……気のせいだったか。



 ****


「……それで、今日はお休みなのね」

「ふふっ何だかピクニックみたいです」


 結局、鈴風にコレクションを見せると言ったら、ナビ子とアズリアも参加希望したので、今日は全員で無人島でコレクション鑑賞会。

 別に家でもできるかと思ったが……無人島なら気兼ねなく巨大なモンスターを呼び出せる。


 ってことで、野生のモンスターを完全に排除してから、ビーチにレジャーシートを敷いて。

 お弁当にお酒まで準備して……アズリアの言う通り、完全にピクニック状態。

 ……まぁ別にいいんだけどね。


「じゃあコレクション紹介だが……それだけじゃなく、ついでだから、これを機に仲間の合成も済ませちゃおうかと」


 ここ数日でモンスターの魔石は大量に増えたし……ホブAたちも鈴風に負けっぱなしじゃ悔しいだろうし。

 ここらで一気に戦力アップをしようかと。

 アズリアと鈴風の意見も聞きたいしね。


 ……何も報告してないから、後でサナに怒られるかもだけど。


「ナビ子のダブリンとつぐみんも合成したいならしてもいいぞ」

「本当!? ヤター!!」


 ナビ子が早速ダブリンとつぐみんを呼び出して相談を始める。

 うん。つい先日、この二匹も随分とご無沙汰だと思ったから、ちょうどよかった。


 さて。ナビ子が離脱したんで、新たなパートナー兼モンスターの通訳として、ティータを呼び出す。


「じゃあまずはウサギ種から」


 紹介方法は悩んだけど、結局種族別で。


 まずはリーダーであるラビットAの種族でもあるウサギから。

 星1のホーンラビットや星2のアルミラージ、ツインホーンラビット、ビッグラビット、星3のラビットコーン、ジャッカロープ、ヒュージラビット。

 流石に1種類ずつじっくり紹介していったら、何日かかるか分からないから、幹部クラス以外は簡単な紹介に留める。


 ――――

 ホーンドヘア

 レア度:☆☆☆☆

 固有スキル:角強化、雷の素質、身体能力強化、ハンター

 個別スキル:硬質化、デコイ


 ウサギ系上位モンスター。

 有角ウサギの最上位種のひとつ。

 決してウサギと侮ることなかれ。

 個体によってはドラゴンすら倒しうる力を持つ。

 ――――


 他の個体と違い、二足歩行でも、空を飛ぶわけでもない。

 二本の角はあるが……唯一の正統派ウサギの上位種と言える。

 だけどその実力は折り紙付きで以前、マグマゴーレムとも互角以上の戦いを見せたこともある。

 それにデコイスキルを所持しているので、敵を引きつける役目もこなせる。


「ほぅ。ドラゴンすらも倒せるですか」


 ……そんな目を輝かせながら言っても戦わせないからな。


 ――――

 ヴォルパーティンガー

 レア度:☆☆☆☆

 固有スキル:闇の覚醒、角強化、暗視、吸血、嗅覚

 個別スキル:再生、眷属化、超音波、雷の覚醒、凶暴化


 ウサギ系上級モンスター。

 非常に凶暴な空飛ぶ吸血ウサギ。

 満月の夜の時にしか見つからない。

 若い女性を好んで襲う。

 ――――


 角と牙とコウモリのような翼を持つ黒いウサギ。

 見た目は愛くるしい感じではあるが……そうやって近づいた獲物の血をちゅーちゅーと吸うんだから怖いよなぁ。

 もちろん、カードモンスターの場合は血液を吸う必要はないからむやみに襲わないけど。

 ちなみに満月の夜だけは凶暴化スキルのせいで、サナすら襲いかねないのでカードに封印されている。


「ふむ。これまた愛くるしいウサギで」


 ……お前は一度血を吸われてみてもいいかもな。


 ――――

 ジャイアントラビット

 レア度:☆☆☆☆

 固有スキル:肉体強化、脚力強化、筋力強化

 個別スキル:体術、自己治癒促進


 ウサギ系上級モンスター。

 3メートル以上の巨大なモンスター。

 ヒュージラビットからよりシャープな肉体を得た。

 もし戦うことになったら、絶対に攻撃を受けないこと。

 一撃でもくらえば、防具ごとバラバラにされるだろう。

 ――――


 半年の引きこもり時に合成で作ったジャイアントラビット。

 シロクマのようなヒュージラビットがゴリマッチョに進化した感じ。

 魔法も使えず、特殊な攻撃もできないモンスターだけど……説明文にあるように、完全脳筋モンスターで、攻撃力だけは半端ない。

 しかも実はかなり俊敏なので逃げることも困難。

 まぁこんなモンスターがウロウロしているわけないけど。

 二足歩行で力持ちなので、うちでは力仕事で重宝している。


「もはやウサギではなくゴリ……」

「それ以上は言わないで下さいますと……」


 ティータが言うには、本人微妙に気にしてるらしい。



「とまぁ現状がこんな感じか」

「きゅいっ! きゅい!」


 ラビットAが自分の紹介は? とか主張するが……いや、今更だろ。

 まぁ別にいいけど。


 ――――

 カグヤ

 レア度:☆☆☆☆☆

 固有スキル:魔を極めし者、月の加護、プリンセス

 個別スキル:創造魔法、千里眼、第六感、不可侵、剣術、杖術、自力成長、眷属召喚、覚醒


 魔兎族の姫。

 あらゆる魔法を使い、あらゆる魔法を無効にする。

 魔法に関して右に出る者がいない。

 月からの使者という説もある。

 ――――


「きゅふふ……どーお?」


 どう? って聞かれても……もちろん鈴風との決闘後から何も変わってない。

 ちなみに今日のラビットAは先日帝都で購入したセーラー服を着ている。

 うん、かわいい。


「……たったこれだけですか?」

「たったって……まぁウサギに限定すればこれだけだけど」


 というか、一番多いのは蜂だけど、ウサギも他の種族に比べて多いほうだぞ。


「……まぁいいです。とりあえず、こちらを渡しましょう」

「これは……魔石!?」


 鈴風がくれたのは3個の魔石。


「えっ!? マジでくれるの!?」

「ええ。約束でしたから」


 うおおお!?

 てっきり約束を反故にするか、もっと無理難題を言うかと思ったが……俺、ちょっと鈴風のこと勘違いしてたよ。


 ってことで、早速貰った3個の魔石をモンスターカードにする。


 ――――

 バルバラロップ

 レア度:☆

 固有スキル:脱兎、聴覚


 ラビット系下級モンスター。

 バルバラート付近で目撃される。

 聴覚に優れ、他生物の気配を感じるとすぐに逃げ出す。

 一般的なホーンラビットよりも美味しく、特に特徴的な耳は珍味として扱われている。

 ――――

 ――――

 フルフラビット

 レア度:☆☆

 固有スキル:擬態、弾力

 個別スキル:火耐性


 ラビット系下級モンスター。

 全身を長い被毛で覆われているのが特徴。

 フルフ兎毛と呼ばれる兎の毛は素材として重宝されている。

 ――――

 ――――

 レオナイト

 レア度:☆☆

 固有スキル:威嚇、脱兎

 個別スキル:虚勢


 ラビット系下級モンスター。

 獅子のようなたてがみで相手を威嚇し、相手が怯んだ隙に逃げ出す。

 ――――


 おおー。

 博物館でみたウサギだ。

 やっぱりどのウサギも帝都付近で活動していたのか。

 能力に関しては……まぁある程度、博物館に書いてあったとおり。


「きゅみぃ……見掛け倒し」


 レオナイトのことを格好いいと言っていたラビットAであったが……見た目とは裏腹の内容に、幻滅したみたい。

 まぁ獅子っぽい見た目で威嚇してその隙きに逃げる……だもんなぁ。

 こちらとしてはラビットAを取られずにホッとしたようでもあり……レオナイトを憐れむ気持ちもあり。

 ……うん。頑張れレオナイト。


 とまぁ新しい仲間が増えたことはありがたいとして。

 本題は合成。


「シュート。少し聞きたいのですが……過去のウサギと他種族との合成はどうなってますか?」

「そうだなぁ……ウサギがメインの合成ならマジックラビットとゴブリンウィッチでマジックバニー。それとジャッカロープとバンパイアバットでヴォルパーティンガー。サブならユニコーンとかケリュネイアとかか」


 基本的に同族が中心だからなぁ。

 あと何があったっけ?


「それだけ? ……少なすぎです。コレクションを増やしたいなら、もっと他種族とも合成しないと」

「とは言っても……哺乳類系のモンスターは数が少なくて」


 最近は哺乳類系のモンスターも増えてきたけど、合成のサブにするくらいの余裕はちょっと。

 下手すれば、サブにした種族のモンスターがいなくなってしまう。


 比較的余裕があるのは昆虫くらいなもの。

 結局、安定の同族合成になってしまうんだよなぁ。


「そんな悠長なことを言っているから、モンスターが増えないのです! 足らなければわたくしが用意しますので、片っ端から合成しなさい!」

「はいっ!」


 鈴風の言葉に思わず返事する。

 けど……鈴風の言うことにも一理ある。

 ホーンラビットに関してはいつでも増やせるし……そうだな。

 幹部連中の戦力補強を中心に考えていたけど、いっちょ本格的に合成してみるか。

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