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第35話 魔法の効果

 ソリッドエアの魔法と適応力のスキルの合成で完成したライファスキンの魔法。

 それとほぼ同時に創造魔法を完成させたラビットA。


「シュートシュート。これ、テキトーオー!」


 ラビットAは自分に発動させた状態で俺に近づく。

 とはいっても……見た目は何も変わらない。


「んじゃあ、確認するから魔法を入れてくれ」

「きゅい!」


 俺はブランクカードをラビットAに渡して、その中に魔法を入れてもらう。


 ただ……ねぇ。

 鈴風から話を聞いて創造したんだろ?

 それにテキトーオーって名前もさぁ。

 本当にあれみたいな効果のある魔法ならいいんだけど。


「シュート。はいこれ」


 ――――

 テキトーオー【光属性】レア度:☆☆☆☆☆


 光属性上級生命維持魔法。

 対象にどんな環境下でも適度に生活できる光を照射する。

 ――――


「きゅふふ。どーお?」


 ドヤ顔しているラビットAなのだが……どうなんだ?

 ソリッドエアのように、遮断するわけじゃなく、光を浴びたことで同様の効果を得るって感じか?

 だから風属性じゃなく、光属性と。

 ……完全に鈴風の話に引っ張られているよな。


「にしても……適応でも適当でもなく適度になってるぞ」

「きゅれぇ?」


 あれぇ? じゃないぞと。

 まぁ適当に生活できるより、適度に生活できる方が信用できるけど。


「シュートシュート。ニオイがだいじょーぶか確かめに行っていーい?」


 ……ニオイか。

 確かに魔法の効果を試すには丁度いいけど、俺も自分で合成した魔法を確かめたいから、ちょっとだけ待って欲しい。

 そう言って待ってもらおうと思ったが、その前に鈴風が答える。


「では、わたくしがお供しましょう」

「ほんと!?」

「えっ、いやちょっと……」


 俺が止めようとする前にさっさと出ていく二人……とムサシの三人。

 まぁムサシがいたらそこまで無茶はしないだろう。


「あの二人……随分と仲良くなったみたいね」

「……本当にな」


 同じバトルジャンキー同士気が合うんだろうか。


 まぁいいや。

 その間に俺は自分で合成したライファスキンの魔法を確認。


 ――――

 ライファスキン【無属性】レア度:☆☆☆☆☆


 無属性上級魔法。

 対象の表面に生命を維持する膜を張ることで、どんな環境下でも活動することができる。

 ――――


 ええ……これも……どうなんだ?

 さっきのテキトーオーと殆ど同じような説明文。

 だけど……こっちは光を浴びるのではなく、膜を張る?

 無属性だから、空気で包み込むソリッドエアとも違うっぽい。


「……こっちも確かめて見る必要があるな」

「……だね」


 ちゃんと海中でも快適に過ごせるようになっていればいいけど。



 ****


「その結果は分からないと?」

「分からないっていうか……結局、実際に海中で確かめないとって感じかな」


 アズリアに魔法の結果を報告する。

 とは言いつつも、試したのは風呂場で湯船に潜って確かめただけど。


 その結果、テキトーオーもライファスキンも、溺れることもなければ、息苦しくないってことは判明した。

 かといって、呼吸をしているってわけでもない。

 水が体内に入ってくるってこともなかったし……自分の体のことだけど、一体どうなっているのか。


 それから着ていた服に関して。

 これはちょっと面白く……テキトーオーは服が濡れていたが、ライファスキンは服は濡れてなかった。

 おそらくライファスキンの方は服の上から膜が張られていたから、濡れることはなく。

 一方、テキトーオーの方は光を浴びているだけなので、直接水に触れているからなのだろう。


 そして、ニオイに関して。

 ラビットAがテキトーオーを浴びて魚市場に行ったらしいのだが……遮断ではなかったので、ニオイを感じたものの、我慢できなくはないと。

 まさに適度にって感じか。

 ちなみにライファスキンの方は膜で覆われているから、ソリッドエアと同様、ニオイは遮断した。

 けど、歩くのに苦労しないので……きぐるみの中にいるってよりは、鼻栓をしているって状態に近いかも。


「後、調べることは海中で自由に動ける、泳げるか。それと水圧に耐えられるか、海中での視界はどうか。それと、持続時間だな」


 湯船ではそれらは確認できない。

 まぁ持続時間は確認できなくもないけど……湯船に潜ったまま何時間もい続けるのは辛すぎる。

 ってことで、そこまで確かめて実験は終了。

 問題なさそうならこのままだし、無理そうならここから更に改良する。

 これ以上となると……動きや長時間持ちそうな魔法とかスキルを合成に使う感じになるか。


「私の方の報告は……無人島について」


 ちゃんと調べてきてくれたらしい。


「こちらも結論から話しますと、漁業ギルドはいくつかの無人島の存在を把握していますが、どれも手つかずの状態にあるそうです」


 ……あの無人島ひとつだけじゃなかったのか。

 にしても、何もせずに放置しているなんて。


「それは……無人島に価値がないからとか?」

「いえ、危険だからだそうです」


 アズリアの話によると、この港から30~50キロの海域までは大したモンスターがいないらしい。

 出現しても、単体行動をしている魚型のモンスターくらいで、サメのような少し凶暴な魚と同程度の存在らしい。


 だが、50キロを超えた辺りでモンスターの集団や厄介なモンスターが出現するようになる。

 俺が出逢ったシーモンキーの群れや空を飛んでいるフライングレイがここに入るんだろう。

 まぁどちらも星2なので大したモンスターではないが、船上で集団や空を飛んでいるモンスターを相手にするのは、漁師には厳しいものがあるだろう。


 そして70キロを超えた辺りで大型のモンスターの姿が目撃されている。

 クラーケンとかバシロケトゥスとかだな。


「ですので、漁業ギルドでは基本的にモンスターと遭遇しない30キロ以内で漁をするそうです」


 まぁ町の魚を確保するのなら、それで十分だろうしな。


「ちなみに何でモンスターが港に近寄らないかは……?」

「それはよく分かっていないそうです」


 そうなんだ。

 てっきり魔物よけの魔道具とかあるのかと思ったけど。


「無人島が発見されているのは80キロから100キロ以上離れた地点ですので、調査をするにも危険が伴うと」


 そりゃあ途中でクラーケンみたいなモンスターに遭遇するかもとかなら、だれも調査に行かないよな。


「ってか、どうやって無人島の場所を把握しているんだ?」


 行って帰ってきた船があるのか。


「シュートさんと同じく、空から確認したそうです」


 ああ、なるほど。

 俺もグリフォンを持っていない時に、ライラネートからブルームまで利用したことがあるが、人を乗せて飛ぶモンスターを使役しているテイマーは存在している。

 それにファーレン商会も他国との商談では空輸も利用しているらしいし。


 じゃあ空から調査に行けば……って、その場合は上級冒険者が少数精鋭で調査しなくてはならない。

 はたしてそのメリットがあるのかと言われたら……無茶は出来ないよなぁ。


「そういうことで、どなたも無人島の所有権を持っていないので、自由に探索して構わないかと」

「それでは明日は無人島探索に行きますよ」

「きゅい! まーかせて!」


 また俺よりも早く……まぁいいけどね。

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